旅の同行者
盗賊たちを縛り終えると、辺りはようやく静けさを取り戻した。
エルドは杖を手に、商人親子へ歩み寄る。
「怪我を診せていただけますかな。」
「は、はい……。」
父親らしき男が腕を差し出す。
浅い切り傷だった。
エルドは静かに杖を掲げる。
「治癒」
柔らかな光が傷を包む。
みるみるうちに傷口は塞がり、痛みも消えていく。
「痛みが……。ありがとうございます!」
エルドは穏やかに微笑む。
「かすり傷程度です。お気になさらず。」
隣では、レオルも肩にできた擦り傷を治してもらい、感嘆の声を漏らした。
「すごい……。」
「ありがとうございます!」
「礼には及びません。」
エルドは軽く会釈をした。
その様子を見ていたグレンは、盗賊たちへ視線を向ける。
「さて……。」
「こいつらどうするかなぁ。」
盗賊頭目は縛られたままヘラヘラと鼻で笑う。
「何も盗っちゃいねぇんだから解放してくれよ。」
「な?別に誰も死んじゃいねぇだろ?」
グレンはため息をつく。
「俺達がいたからだ。」
エルドが荷馬車へ目を向けた。
「エルミナの衛兵へ引き渡しましょう。」
「積荷も空です。」
「ちょうど全員乗せられますな。」
シリアが盗賊たちの前へ歩く。
頭目がニヤリと笑った。
「おっ。」
「嬢ちゃんが運んでくれるのか?」
「ドキドキするぜぇ。優しくしてくr」
「殴打」
ドゴォッ!!
「ぶべっ!?」
頭目は白目を剥いて倒れた。
静寂。
グレンは数秒固まる。
「……スリープって……。」
「眠った。」
シリアは短く答える。
エルドは倒れた頭目を見つめた。
「……効率は良さそうですな。」
その一言に、グレンは小さく肩をすくめるしかなかった。
三人は盗賊たちを荷台へ積み込む。
御者の男は馬の様子を確認し、手綱を握った。
「問題ありません。」
「すぐに出発できます。」
グレンは頷く。
「行こう。」
馬車がゆっくりと街道を進み始めた。
しばらくして、商人が口を開いた。
「申し遅れました。」
「私はウォルトと申します。」
「商人をしております。」
「こちらは息子のレオルです。」
レオルは慌てて頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
続いて御者も軽く一礼する。
「私はハンスと申します。」
「ウォルト様の執事を務めております。」
グレンも軽く手を挙げた。
「俺はグレン。」
「エルドと申します。」
「シリア。」
その名前を聞いたレオルの動きが止まる。
「え……。」
父ウォルトも目を見開いた。
「まさか……。」
「勇者様御一行……ですか?」
グレンは少し照れくさそうに笑った。
「そんな大したもんじゃないよ。」
「今はただの冒険者一行さ。」
エルドが静かに続ける。
「勇者エリオス殿も、おりませんからな。」
その名が出た瞬間。
馬車の空気が少しだけ静かになった。
ウォルトは小さく頭を下げる。
「……失礼いたしました。」
グレンは首を横に振る。
「気にしなくていい。」
「俺たちは、やることは昔と変わらない。」
「困ってる人を助ける。」
「それだけだ。」
レオルはその言葉を聞き、目を輝かせた。
「やっぱり英雄なんですね……。」
グレンは苦笑いする。
「英雄なんて柄じゃないさ。」
馬車は心地よい音を立てながら街道を進んでいく。
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