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英雄のなれの果て  作者: 餅をこねる猫
旅の始まり

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8/12

襲撃

黒煙の上がる方へ向かって三人は駆けた。


街道を外れ、森の中へ入る。


金属がぶつかる音が徐々に大きくなる。


そして。


視界が開けた。


「馬車だ!」


荷馬車が一台。


横転こそしていないが、車輪は壊れ、荷物が辺りに散乱している。


商人らしき男が数人。


必死に抵抗していた。


相手は――


「盗賊か」


十人ほど。


剣や斧を持った男たちが馬車を囲んでいる。


「金目の物を置いていけ!」


いかにも盗賊らしい怒鳴り声が響く。


「助けますか?」


エルドが落ち着いた声で尋ねる。


「聞くまでもねぇ」


グレンは剣を抜いた。


「行くぞ!」


三人は飛び出した。


「なっ!? 誰だ!」


盗賊の一人が振り返る。


返事の代わりに。


グレンの剣が振り下ろされた。


「ぐあっ!」


盗賊が吹き飛ぶ。


「な、なんだこいつ!?」


「三人しかいねぇぞ!」


「囲め!」


盗賊たちが一斉に襲い掛かる。


「シリア!」


「分かってる」


シリアは短く杖を掲げる。


「火炎《フレア》」


盗賊たちは慌てて飛び退く。


「うわっ!」


「熱っ!」


その隙に。


「エルド殿!」


「お任せを」


エルドの魔法陣が足元に展開される。


「重力拘束《グラ・ヴィタス》」


盗賊たちの動きが一斉に鈍る。


「な、なんだ!?」


「身体が重い!」


「今だ!」


グレンが駆ける。


一人。


二人。


三人。


無駄がない。


かつて魔王軍を相手に戦った男の剣。


盗賊程度では相手にならなかった。


数分後。


「降参だ!」


盗賊の頭目が剣を投げ捨てた。


「もう戦わねぇ!」


グレンは剣を下ろす。


「最初からそうしろ」


盗賊たちは縄で縛られた。


商人は何度も頭を下げる。


「本当に助かりました……!」


「命の恩人です。」


「ありがとうございます。」


グレンは照れくさそうに頭を掻く。


「気にすんな。」


「困ってる奴を助けるのは当然だ。」


商人は少し迷うような表情を浮かべる。


「実は……一つお願いがあります。」


「お願い?」


「皆さんの強さを見込んで、この先の町まで護衛をお願いできないでしょうか。」


「もちろん依頼料はお支払いします!」


グレンはエルドを見る。


「行き先は?」


「エルミナです。」


「同じですな。」


エルドが地図を確認しながら頷く。


「ですが……」


「本来、この街道は護衛が必要になるほど危険な道ではないはずでは。」


商人の表情が曇る。


「ええ……。」


「実は最近、この辺りで盗賊が急に増えまして……。」


「増えた?」


シリアが聞き返す。


「はい。」


「以前から盗賊はいました。」


「ですが最近の盗賊は様子がおかしいんです。」


「様子?」


「商会では各地の情報を共有しているのですが……」


「ここ数か月、この街道だけでなく周辺一帯で盗賊被害が急に増えているようで。」


「急に?」


「はい。」


「それだけならまだよかったのですが……」


商人は苦い表情を浮かべる。


「襲われた商人たちの話を聞くと、どうも盗賊らしくないんです。」


「盗賊らしくない?」


「荷物を全部奪うわけでもない。」


「金目の物だけを狙うわけでもない。」


「護衛だけを執拗に襲ったり。」


「そんな話ばかりで……。」


商人は少し言葉を探す。


「まるで……誰かに指示されているみたいなんです。」


「……確かに。」


グレンが腕を組む。


「さっきの連中、盗賊にしては変だった。」


「変?」


シリアが視線を向ける。


「覇気がなかった。」


「ああ。」


「襲いかかってきたくせに、押し返されたらすぐ降参した。」


「命懸けって感じじゃなかったんだよな。」


エルドも頷く。


「言われてみれば、妙ですな。」


「盗賊というより……」


シリアが小さく呟く。


「仕事をやらされてる人たちみたいだった。」


その一言に。


三人は少しだけ黙った。


「……まあいい。」


グレンは肩に剣を担ぐ。


「依頼、受けよう。」


商人の表情が一気に明るくなる。


「ありがとうございます!」


「それじゃあ行きますかな。」


こうして三人は。


護衛依頼を受け。


共にエルミナへ向かうことを決めた。

読んでいただきありがとうございます!

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