貧乏英雄たち
王都を出て二日。
「金がない」
グレンが言った。
「金がありませんな」
エルドも言った。
「ないね」
シリアも言った。
深刻だった。
「なんでだよ!?」
グレンが叫ぶ。
「俺達世界を救った英雄だぞ!?」
「だからでは?」
エルドが答える。
「魔王討伐後の褒賞金は復興資金へ回されましたので」
「あ」
思い出した。
王都の復興。
孤児院の建設。
戦災地域への支援。
あの頃は全員、
金より世界の方が大事だった。
「そんなことしたな……」
グレンは頭を抱えた。
「俺の金返せ・・・・」
「寄付したのはグレン殿です」
「返せぇぇぇぇぇ!!!!」
「無理ですな」
「くそぉ……」
グレンは空を仰いだ。
「シリアは?」
「故郷の復興」
「全部?」
「全部」
「エルドは?」
「研究費にあてました」
「全部?」
「全部ですな」
「ティナは?」
「肉」
シリアが即答した。
「まだいねぇよ!」
グレンが叫ぶ。
沈黙。
三人は少し考える。
「…………」
「…………」
「…………」
「いや」
グレンが真顔で言った。
「でも絶対そうだな」
「そう」
シリアは頷いた。
「そうですな」
エルドも頷いた。
ティナの顔が三人の脳裏に浮かぶ。
『美味しそうなお肉があったので買っちゃいました!』
ありえる。
非常にありえる。
「なんか腹立ってきた」
「まだ使ってないと思いますよ」
「使うだろ」
「使う」
「使いますな」
全員の意見が一致した。
問題は。
そのティナすら今ここにはいないことだった。
「で」
グレンが現実へ戻る。
「残金は?」
エルドが財布を確認する。
「銀貨十五枚」
シリアも確認する。
「私は七枚」
「俺は五枚」
沈黙。
「少なくない?」
「少ないですな」
「少ないな」
誰も否定できなかった。
グレンは地図を広げる。
「目的の村までどれくらいだ?」
「徒歩で二日ほどですな」
「宿は?」
「高いでしょうな」
「飯は?」
「硬いパンくらいなら買えるでしょうな」
「世知辛ぇなこの世界!」
思わず叫ぶ。
世界は救えた。
だが。
財布は救えなかった。
「どうしますかな」
エルドが言う。
「次の町で仕事探すしかないだろ」
「冒険者ギルド?」
「護衛依頼でも何でもいい」
グレンは立ち上がった。
「とりあえず稼ぐぞ」
「賛成」
「異論ありませんな」
三人は再び街道を歩き始める。
しばらく進んだその時だった。
「……ん?」
グレンが足を止める。
遠く。
街道の先。
黒い煙が上がっていた。
「火事?」
シリアが目を細める。
エルドは表情を引き締めた。
「違いますな」
耳を澄ませる。
風に乗って。
金属のぶつかる音。
そして。
誰かの悲鳴。
グレンが剣の柄を握る。
「行くぞ!」
三人は駆け出した。
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