↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄のなれの果て  作者: 餅をこねる猫
旅の始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/12

エルミナ

翌朝。


朝露に濡れた草が朝日に照らされ、街道は静かな空気に包まれていた。


「よし。」


グレンは大きく背伸びをする。


「車輪も問題なさそうだな。」


ハンスは修理した車輪を軽く叩き、満足そうに頷いた。


「ええ。応急処置ではありますが、エルミナまでは十分保つでしょう。」


「じゃあ出発だ。」


馬車は再びゆっくりと走り始めた。


街道には穏やかな風が吹く。


昨日の騒ぎが嘘だったかのような静けさだった。


しばらく歩いていたシリアが、不意に足を止める。


「……?」


地面へ視線を落とす。


何もない。


草木が揺れているだけだ。


「シリア?」


前を歩いていたグレンが振り返る。


「どうした?」


「……。」


シリアは少しだけ辺りを見渡した。


そして首を横に振る。


「なんでもない。」


再び歩き出す。


誰にも聞こえないほど小さく呟いた。


「……魔力溜まり?」


その声は風に溶け、誰の耳にも届かなかった。


◇


道中、小さな魔物が何度か姿を現した。


角の生えた狼。


大きな牙を持つ猪。


どれも旅人を襲うには十分危険な魔物だった。


だが。


「遅い。」


シリアの放った魔法が狼を吹き飛ばす。


「次!」


グレンが駆け出し、大剣を振るう。


一閃。


猪はそのまま地面へ倒れた。


「周囲に反応はありません。」


エルドが静かに告げる。


戦いはほんの数分で終わった。


レオルは目を丸くしていた。


「すごい……。」


「これが元勇者一行……。」


グレンは照れくさそうに笑う。


「この程度なら準備運動にもならないさ。」


その後は何事もなく街道を進み。


昼過ぎ。


ようやく目的地が見えてきた。


街道の先に、町が見えてきた。


煙突から立ち上る白い煙。


外壁の向こうからは、人々の賑やかな声が風に乗って聞こえてくる。


門の前では、商人や旅人たちが順番に入町の手続きを受けていた。


「見えました。」


ハンスが前方を指差す。


「エルミナです。」


「やっと着いたか。」


グレンはほっと息を吐いた。


◇


門で簡単な確認を済ませ、一行は町へ入る。


石畳の道。


露店から漂う焼きたてのパンの香り。


威勢のいい客引きの声。


五年前と変わらない活気がそこにはあった。


「賑やかですね。」


レオルが辺りを見回す。


ウォルトは笑みを浮かべた。


「エルミナは交易の町ですから。」


「冒険者も商人も多く集まります。」


馬車は町の中心を抜け、一軒の商会の前で止まった。


看板には『グランベル商会』と書かれている。


「ここが私どもの商会です。」


ウォルトは三人へ向き直る。


「本当にありがとうございました。」


「皆さんのおかげで無事に帰ることができました。」


ハンスが建物の中へ入り、ほどなくして革袋を持って戻ってくる。


「依頼料です。」


「お納めください。」


グレンが袋を受け取る。


中を覗くと、銀貨がいくつも入っていた。


「確かに。」


「ありがとな。」


ウォルトは軽く頭を下げる。


「宿をお探しでしたら、この通りを少し進んだ先に『銀枝亭』という宿があります。」


「冒険者にも評判の良い宿ですよ。」


「冒険者ギルドは中央広場のすぐ隣です。」


「酒場もその向かいにありますので、迷うことはないかと。」


「一度来たことがあるから大丈夫さ。」


グレンは笑顔で答えた。


「また縁があればよろしく頼む。」


「こちらこそ。」


ウォルト親子とハンスは深く一礼した。


三人もそれに応える。


こうして護衛依頼は無事に終わった。


◇


「さて。」


グレンは報酬袋を軽く持ち上げる。


「まずは宿だな。」


「荷物も置きたいですな。」


エルドが頷く。


シリアが一言だけ呟く。


「お風呂。」


グレンは思わず笑った。


「それも大事だ。」


三人はウォルトに教えられた宿へ向かって歩き出す。


宿を取ったら、次に向かう場所は冒険者ギルド。


まずは、この町で情報を集めるために。

読んでいただきありがとうございます!

面白い!続きを読みたいと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。