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銀髪碧眼の美少女暗殺者から「拒否したら心中する」と激重求婚されたので、ひとまず結婚を確定で同棲することになりました。  作者: 虎柄トラ


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第63話 実食

 先攻は未来。


 彼女が作ったのは天ぷら定食だった。


 エビやキスなどの海産物に、扇状の切ったナスやカボチャ、シシトウが薄い衣でカリっと揚がっている。ミョウガがのった冷や奴とキュウリの胡麻和え、なめこの味噌汁にカブの浅漬け、そして粒だった銀シャリ。


 理想的な和食だった。


 香りや見た目からもう食べずとも美味しいのが分かる。


「題して、ギャップにやられるやろ定食や!」

「……あ、なるほど? いえまあ未来が料理できるのは、知ってるしな?」

「せやった……何度か作ってやったことあったな……題して、思い出の味定食や!」

「タイトル変わるのか……では、いただきます」


 未来の料理はどれも、ほっと安らぐような優しい味をしている。孤児院での食事だけだと足りないだろと、彼女の家にお呼ばれされた時に食べた味そのもの。まさしく思い出の味だ。ただあの時よりも遥かに洗練されている。出汁ひとつとっても雑味もなく旨味だけを抽出している。箸休めとして用意されている小鉢も絶品で、新たな気持ちでまた食事が楽しめる。


 この定食が三千円だといわれても、納得して支払えるようなクオリティをしていた。


 味噌汁をすすりながらふと思う。実際に陽ギャルからこんな料理を振舞われたら、そのギャップで世の男は一発でやられるかもしれない。小学校からの付き合いじゃなくて、高校もしくは社会人の時に出会っていたら、俺もそういう風に思ったのだろうか、と。


「ごちそうさまでした……」

「お粗末さんでした。完食かいな、いや、うちは嬉しいけどな……?」


 食器を下げつつ未来がそんな言葉を口にした。


 最初はその意味が理解できなかったが、真白と目が合った瞬間に即座に理解した。

 まだ後攻の料理が残っていることをすっかり忘れてガチ食いしてしまった。


 後攻の真白が作ったのは、予想どおりお子様ランチ。ただ量は通常の二倍な大人版である。ケチャップで炒めたチキンライスの上には、ふわとろの玉子がのっかっている。その隣には手ごねハンバーグが鎮座し、ケチャップとウスターソースを混ぜたお手軽ソースがかかっている。エビフライにナポリタン、ポテトサラダが脇を固めている。それらがワンプレートにまとまっていた。残念ながら旗はぶっ刺さってはいなかった。


 定食をがっつり食べたあとだというのに、視界に入った途端、何も食べてないかのように腹が鳴った。


「……いただきます」


 スプーンを手に取りオムライスの横っ腹に風穴を開ける。玉子の香りと焦げたケチャップの香ばしい匂いがふわりと鼻腔をくすぐる。

 口に運んでひと噛みすると、あの時のオムライスの味が蘇る。真白がはじめて振舞ってくれた思い出の味。材料や設備により格段に味わい深くはなっているけど、基礎の部分は変わっていない。咀嚼するためたびに自然と笑みがこぼれる。


 子供舌だっていいじゃないか、旨いものは旨いんだから。


 一度スイッチオンとなると、もう止まらない。スプーンとフォークを切り替えて、ワンプレート皿にのった洋食を次々と胃に落とし込む。あっという間にワンプレート皿は空になった。


「ごちそうさまでした……」

「食べてくれたのは嬉しいけど、お腹大丈夫?」

「うん……? 全然まだイケる」


 定食とワンプレートを完食してもまだまだ余裕で入る。日頃から真白の料理をたらふく食べているからか、胃のキャパが大きくなったのかもしれない。


「で、博希……どっちか決めたか?」


 実弥さんがマイクを顔に向けて尋ねてきた。

 未来か真白か選ぶ時がきたが、どちらも甲乙つけがたい。


 学生時代の懐かしい味をとるか、それとも胃袋を掴まれた味をとるか。

 料理としてはどちらも満点、ただファッションでいえば真白の圧勝だ。


 水着エプロンってなんだよ、悪友のそんなとこを見てどう反応しろってんだ。なんか気まずいを通り越して火傷しないかとか心配になったわ。でも優劣をつけるとなると、そこしかないのもまた事実なわけで……はてさて、どうしたものやら。


 悩めば悩むほど坩堝にハマる。


 もう無理に決める必要なんかないんじゃないか、料理を作ってくれること自体に感謝こそすれど、お金を払っているわけじゃないんだし、その味がとかでどうこう言うのは筋違いじゃないか。てことで、この料理対決は無効試合としよう。きっとみんな分かってくれるさ。


「……それなんだけど、悪い決められそうにない。せっかくみんなが作ってくれた御飯に優劣をつけること自体が俺には無理そうだ……マジでごめん……」


 深々と頭を下げて謝罪を行う。


 賑やかだった部屋がシーンと静まり返る。

 音量をミュートにしたぐらい実に静かだ。


 皆で協力して作り上げた物を壊したような後ろめたさを覚える。

 実際のところまさに、そのとおりでしかない。俺が全部台無しにした。

 穴があったら入りたい、透明人間のように今すぐにでも消え去りたい。

 ありとあらゆる負の感情が頭の中に浮かび駆け巡っては消えていく。


 料理対決の勝敗を有耶無耶にしたから怒号の一つでも飛んでくるかと思っていたが、予想外の出来事が生じる。


 静寂を吹き飛ばす喚声が上がったのだ。


「っしゃー、あたしの勝ちだな!!」


 辰爾がガッツポーズをあげて大喜びしている。

 残りの五人は呻き声を上げて打ちひしがれていた。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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