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銀髪碧眼の美少女暗殺者から「拒否したら心中する」と激重求婚されたので、ひとまず結婚を確定で同棲することになりました。  作者: 虎柄トラ


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第34話 後輩の機嫌直し

「悪い伊咲、今日は予定が入っているんだ。せっかく誘ってくれたのに、すまん」

「そ、そうなんですね。いえ急に誘った自分も悪いんで、気にしないでください」

「タクシーとか呼ぼうか? ここからだと歩いて帰るの遠いだろ?」

「いえ大丈夫です。これぐらいの距離問題ないです。歩いて帰ります……」


 凄まじいほどにしょんぼりとしている。今にも体が透き通り闇夜に溶け込んでしまいそうだ。そんなに楽しみにしていたのか。

 意を決した後輩の思いを無下にした手前、このまま去らばというわけにもいくまい。せめて帰りぐらいは出してあげるべきだ。それが先輩として今できる唯一の償い。


「ふむ、じゃ俺が払うから、伊咲はタクシーに乗って帰れ」

「……お心遣いありがとうございます。ですが、本当に大丈夫なんで……」

「大丈夫じゃない、俺が気になるの」

「お気になさらず、帰ってもらっていいですよ。自分ちょっと夜風に当たりたいので……」


 埒が明かない、伊咲には悪いが嫌でもタクシーに乗って帰ってもらう。

 伊咲がよそ見をしている隙を見計らって、アプリを起動しタクシーを呼び出す。

 しばらくすると公園前にタクシーが到着した通知が入った。


「呼んでおいたタクシーが着いた。さあ帰るぞ、伊咲!」

「先輩が乗って帰ればいいじゃないですか……真白さんが待ってるでしょ、自分なんかほったらかして、さっさと帰ればいいじゃん! 先輩のバーカーバーカ!!」


 非常にめずらしいものが見れた。

 あの伊咲が醜態をさらしている。


 部屋に訪れた時の伊咲も子供っぽい瞬間はあったけど、これは完全に別物。というか、なぜにそこで真白の名が出てくる。確かに推察どおりではあるけど、それで幼児化する(すねる)意味が分からん。


「そういうわけにはいかねぇの……ほら帰るぞ」

「嫌です、ひとりで帰れるんでほっといてください」

「おまえがそうくるなら、こっちも強硬手段をとるぞ」


 駄々をこねる伊咲の腕を掴みベンチから引き剥がし連行する。

 腕を振り解こうと反抗の意志をみせていたが、すぐに大人しくなりついてきた。


「……ひき……せん……す……」


 終始何やら言っているが、あまりにも小声すぎて聞き取れない。そのラジオというか呪詛にも似た囁きは、タクシーに乗るまで続いた。


「…………」


 黙りこくる伊咲にタクシー代として一万円を握らせる。


「こんなの受け取れません……」

「いいからとっとけ、これは先輩命令だ」

「……はい、わかりました。領収書とセットで明日、お釣りをお返しします」

「変な気を回すな、お詫びだ。伊咲の面白い一面が見れたしな、そのお礼だと思って釣りは受け取っとけ」

「……倉持先輩って結構いい性格してますよね。じゃこの一万円はありがたく頂戴します」


 よく分からないが伊咲の機嫌が元に戻った。

 あの喋り方といい俺のよく知っている、いつもの伊咲だ。


 真白もそうだけど、女性ってのは感情を自由に切り替えられるスイッチでも備わってるのか。こういう状況に遭遇するたびに、ふとそんな思いがよぎる。

 だが、いまはどうでもいいことだ。これでやっと伊咲を家に帰すことができる。


「そうか? いやそうかもしれんな。ちゃんと家に帰れよ、あと領収書、忘れんじゃねぇぞ」

「自分で言い出しておいて、忘れるとかバカじゃないですか。では先輩、おやすみなさい」

「ああ……? おやすみ」


 伊咲を乗せたタクシーが発進するのを見送ったのち、博希はグラッセ大御門へと駆け足で向かう。


 閉店時間ギリギリにケーキショップにたどり着いた。ショーケースが空っぽで落胆しかけたが、予約名を店員に告げると、バックヤードから持って来てくれた。


 ケーキが傾かないように意識しながら夜道を進む。その道中で、何度かタクシーが横切っていった。


 あの時、タクシーを二台呼んでおけば全力疾走せずに済んだんじゃないか。何なら今この時だって、タクシーに乗って帰っていれば今ごろ居間でくつろげてたんじゃないかと。そんな他愛もないたられば(・・・・)が脳内を駆け巡る。


 右手を揺らさないように気を配りながら歩いたはずなのに、帰宅時間は以前よりも短縮されていた。生活環境ががらりと変わったことで、博希の基礎体力は見間違えるほど向上していた。徹底した栄養管理に規則正しい生活、嫌でも健康体にならざるをえない。

 たとえるのなら、蓄積され続けていた経験値が、レベル上限解放によって適用されてレベルアップ、そんなところだろうか。


 片手が塞がっていることもあり、鞄から鍵を取り出すのに手間取っているとガチャリと内側から解錠する音が聞こえた。


 緩やかに玄関扉が開く。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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