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銀髪碧眼の美少女暗殺者から「拒否したら心中する」と激重求婚されたので、ひとまず結婚を確定で同棲することになりました。  作者: 虎柄トラ


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第31話 後輩襲来

 金曜日の夕方過ぎのいま現在、博希は急な来訪者の登場に困惑していた。


 普通に考えたら当たり前の話で、一日すらも休んだことがない社員が、いきなり五連休を取得した上に、それを上司が理由も聞かず気前よく許可を下す。あり得ないことの連発で、そこで働く誰もが不自然と即時理解するはずだ。しかもその業務を、部下に回さずに上司自ら全て引き受けるとなると尚更だろう。


 その天変地異な状況を探るための斥候として、彼女が選ばれたということか。確かに会社の中でも彼女は特別かもしれん。なぜなら初めて教育係を任じられた相手が彼女だからだ。

 辰爾が辞めてから数か月後に中途採用で入社してきた。前職は誰もが知る超大手の会社。要領もよく理解度も早い、教えれば教えただけ吸う、まるでスポンジのような人物。辰爾が居なくなった穴を埋めるのには、十分すぎる人材だった。今では頼りになる同僚の一人でもある。

 特にあんな魔境にいても常に精神は安定しているし、俺を遥かにしのぐバイタリティも持ち合わせている。つまるところ完全上位互換といっても過言ではない。


 なんでこんな引く手あまたな人材が、うちの会社を選んだのか今でも不思議でならない。これ倉神町の七不思議に認定されてもいいんじゃなかろうか。


 テーブル越しに対面に座る後輩に分かりきった質問を投げかける。


「で、伊咲……何のようだ?」

「言わずとも、倉持先輩なら理解していますよね」

「いやまあ大体の予想はつくけど……つうか、それ以前に俺、お前に住所教えたっけ?」

「総務にいったら普通に教えてくれました。あの会社ザルですよね……社員だからって個人情報あんな簡単に教えちゃダメでしょってね。ほんと笑えますよね、先輩」

「あーいやーそうかもしれねぇけど、それを愚直にやる、おまえも大概だと思うぞ」

「そうでしょうか、これも先輩を見習ってやっただけですよ」


 表情一つ変えることなく伊咲は平然と答えてきた。


 育て方を間違えてしまったのかと、彼女に行った教育方針を思い起こしてみる。

 どう転んだとしても彼女ならこういう進化を辿るだろうと結論づいて終わった。


 綺麗な正座姿を魅せる彼女の名は伊咲璃奈(いさきりな)。端正な顔立ちに薄化粧と髪型は常にポニーテール一択。清潔感のあるネイビーのレディーススーツに白のブラウスが映える。

 会社随一の仕事ができる(しごでき)女子。前述に述べたように、本当にどこに出しても恥ずかしくない自慢の後輩だ。


(同じスーツ姿なのに実弥さんとこうも印象が違うとはな。メンズとレディースだし、当たり前っちゃ当たり前なのか? 特に胸部がなんというか……後輩をそんな目で見ちゃいけません、博希君!)


 伊咲が着用しているスーツは、俺と同じく【メンズスーツショップ詮無い】で揃えている。ただ違う点があるとすれば、あちらが注文生産(オーダーメイド)なのに対して、こちらは既製品(レディメイド)。値段的にも五倍以上の開きがある。


 きっと俺みたいにエナドリ貯金とかアホなことをせずに、ちゃんと貯金しているんだろうな。そう考えると、やはり彼女は俺の完全上位互換で相違ない。


「――訊いてますか、先輩、倉持先輩」

「えっごめん……ぼーっとしてたわ。で、何の話だっけ?」

「その呆けた顔といい、自分の話を聞き逃すのといい、先の五連休といい。倉持先輩が豹変したのは……そろそろ自己紹介も兼ねて教えてもらってもよろしいでしょうか?」


 伊咲は瞬きの一つもせず首だけを真白の方に向けて問いかけてきた。


 一人暮らしの同僚の家に行ったら見知らぬ人がいる。ぶかぶかのパーカーを羽織りフードを深くかぶって顔を隠している。そんな不審者がいれば否が応でも目に留まるというもの。しかも、その状態で「粗茶です」といってお茶請け諸々配膳し始めたら、余計に気になって仕方がないはずだ。いまのいままで、伊咲がこの話題を出さなかったのが不思議なくらいだ。俺だったら、間違いなく開口一番に尋ねている。


 真白はというと淑女ムーブを続行している。必要最低限の会話のみで済ませて、二人の会話に入ろうとはしない。一歩引いて夫を立てる。最近、昭和のドラマでも見たのかとツッコミを入れたいぐらい完璧に再現している。本人は真剣だから茶化すわけにもいかないし、そんな冗談を言っていい雰囲気でもない。だが普段の真白を知っている身としては、この独特な空気感も相まって自制するのが大変だ。


「ああそうだな、まずは自己紹介からか……えっと、彼女は真白といって、親戚の子だ。ちょっとわけあって、俺が預かることになってな。ほら真白、彼女に挨拶。あーフードも脱げよ」


 何か言いたげな視線をフード越しに感じて真横に視線も移す。が、真白は正面を向いて微動だにしていない。


(気のせいか……)


 真白はフードを脱ぐと頭を左右に振った。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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