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銀髪碧眼の美少女暗殺者から「拒否したら心中する」と激重求婚されたので、ひとまず結婚を確定で同棲することになりました。  作者: 虎柄トラ


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第03話 彼女は暗殺者

 月明りで鈍く光るナイフをちらつかせながら殺人鬼(勝者)は、失意の表情を浮かべる博希(敗者)に声をかける。


「……鬼ごっこ終り?」


 この殺人鬼に気づかれた時点で詰んでいた。たとえ大通りに出られたとしても無事ではいられない。そんな予感がビシビシと伝わってくる。逃げ切れると思い込んだ俺自身の失態。あんな人外まがいな動きができる相手から、逃げようというのがそもそも無理な話だった。


「終わりなら……」


 殺人鬼はぽつりと呟き手元のナイフを一見する。


 助けを呼んでも逃げても……となると、力ずくで押し通る……は無理だから、残すは交渉か? だが、どうやって? 何を交渉材料にすればいいんだ。まったくなんにも思いつかないがやるしかない。もうそれしか俺には残されていない。これが失敗したら、本当にもう一巻の終わりだ。


(なにか、なにか、なにかないか。考えろ俺、頑張れ俺!)


 ゾーンというフィーバータイムも終了した頭で次の一手を模索する。


 身長差から考えて殺人鬼は百四十センチぐらいか。小柄なのは分かるがオーバーサイズのパーカーに、フードも深くかぶっているため正確な体格や顔までは判別できない。ただあの声からしてやはり少女で間違いないのだろう。だからといって、それが分かったところで何がどうなるということもない。殺人鬼または少女が食いつきそうな話題を何一つ持ち合わせていないのだから。


 それでもこの状況を打開するためには、その話題が必要だ。

 頭を捻りに捻って話題探しに没頭していると、ふとある物が目に留まった。


(……あっこれならワンチャンいけるか?)


 藁をもすがる思いで、博希は煌めくナイフを指差し問いかける。


「あの~、そのナイフいつ血の拭ったんですか? 俺を追いかけながら綺麗にするとか器用ですね……」


 静寂だった――。


 周辺の気温が一気に下がったような錯覚を覚えた。

 殺人鬼は質問の意図が理解できないらしく首を傾げている。


 博希の心中もまた眼前の鬼と同じであった。なぜこれが最適解だと信じて疑わなかったのだろうか。これが最後だったというのに俺はなんて最弱な一手を選んでしまったのか。自問自答し後悔する博希だったが、その愚鈍な質問が予想だにしない結果を生む。


「……暗殺者はナイフ(得物)の手入れを欠かさない」


 ナイフの先端を人差し指でツンツンしながら胸を張りどこか誇らしげにしている。あと彼女は一応、殺人鬼ではなくて暗殺者のようだ。


 不思議なことにその仕草は年相応に可愛く見えた。さっきまで感じていた殺気も感じない。このまま彼女と会話のドッチボールを続けることができたら、逃げしてくれるんじゃないか。その考えは甘かった、世界一甘いお菓子(グラブジャムン)ぐらい甘かった。


「で、もう逃げない?」


 一瞬だけデレてくれたあの可愛い声が元に戻るどころか、ワントーンもツートーンも低い声へと変貌を遂げる。


 女心と秋の空とはよくいったものだ……交渉の余地なし諦めるとしよう。目撃者は消す、暗殺者なら至極当然なことだ。どうあがいたところで運命は変わらない、そう思った途端、なんかどうでも良くなってきた。

 どうせ生き延びたとしても、あの真っ黒な会社でゾンビのように働く日々が続くだけだ。それならいっそ、ここで彼女の手にかかるのも悪くないかもしれない。ただ心残りがあるとすれば、山積みのエナドリを残して世を去ることぐらいか。


(さてと、お手上げしますかな)


 言動と行動そのどちらでも伝わるように両手を上げて降参の意を示す。


「ああもう逃げない。あんま痛みに強くないからさ、できれば一撃で頼む」

「……うん? う~ん、なんで私があなたを殺さないといけないの?」

「えっとそれは、俺がその……見てはいけないのを見てしまったから……」

「あれは本業(シゴト)じゃなくて副業(バイト)だから問題ない。それに私があそこに居たのはあなたに会うため。あっちはついで、ただの時間潰し」


 思い描くバイトとはだいぶ違うけど、暗殺者がそういうのであればそうなのだろう。それよりもだ、彼女は最初から俺を殺す気はなかったらしい。

 何やら俺に会うためとか言っているけど、こちらはそんな予定など組んでいないし、誘うにしてももうちょいマシな場所を選ぶ。こんな夜更けにしかもこんな場所を指定するとかありえない。やはりあの暗殺者は誰かと勘違いしているんじゃないか。


「……あーえーっと、君とは今日が初めましてだと思うんだけど?」

「初めてじゃない。あなたは私の純潔(はじめて)を奪った。その責任取ってもらう」


 再度確認をとってみたが、倉持博希()で間違いないらしい。


 そのついでに暗殺者の口から信じがたい言葉が飛び出した気がするのだが、きっと気のせいだ、そうに違いない。


 ナイフを握る右手が小刻みに震えている。

 噓偽りのない感情がそこから垣間見えた。


「はっ……ははは、ウナバカナ……」

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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