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銀髪碧眼の美少女暗殺者から「拒否したら心中する」と激重求婚されたので、ひとまず結婚を確定で同棲することになりました。  作者: 虎柄トラ


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第27話 鎮静の儀の代償

 昨日同様に博希はベッドの中で目を覚ました。

 デジャブかなと思わせるほど状況が酷似している。

 ただ明らかに違う点も端々に見受けられた。


 カーテン越しからの陽光はなく外には夜の帳が降り、隣で眠っているはずの真白の姿も無い。枕からは温もりも感じず凹んでもいない。彼女がベッドから出てそこそこ時間が経過しているようだ。

 テーブルには水の入った桶にタオル、経口補水液が数本置いてある。誰がどう見ても看病セットそのもの。


 部屋の様子から察するに、どうやら俺は風邪をひいて寝込んでしまっていたらしい。


(……汗びっしょりだった理由はこれか、結婚初日早々に風邪をひくとは……朝シャン(儀式)がたたったか……?)


 掛け布団を跳ね除けてベッドから降りて、汗により排出された水分を経口補水液で補充する。塩味や苦味を強く感じなかった。スポーツドリンクのようにごくごくと飲める程度には、脱水状態だったらしい。

 ただ存分に汗をかいたこともあってか、体は軽くすこぶる体調がいい。熱も下がり悪寒も感じない、一夜ですっかり風邪は完治したようだ。


 献身的に看病してくれた真白に感謝の気持ちを伝えようと部屋を見回すが、肝心の相手がどこにも見当たらない。洗面所の扉をノックして中の様子を窺うが反応はない。一応、中を確認してみたけどやはりいなかった。


「……どこにもいねぇ……うん、この匂いは?」


 空腹を刺激する匂いに惹かれて、キッチンに目を向けると五徳の上に鍋が置かれていた。鍋蓋を掴み中を確認してみると梅干し入りのお粥が煮込まれていた。中腰になりガスコンロに視線を向けるが火は点いていない。

 確認する際に鍋蓋を掴んだけど熱さは感じなかった。てことは、このお粥は完成してまだ間もない。数分どころか、一分以内に違いないはずだ。


 お粥を作ったあとに外に出て行ったのかと思い玄関に目を向ける。予想どおり純白のスニーカーが無くなっていた。その代わり三段済みのダンボールが玄関口を占領するように置かれていた。


「ダンボール……? いやいやいやさっきこんなの無かったぞ? こんなん見落とすほど耄碌(もうろく)してねぇわ。してねぇよな、俺……あれ? お粥って、洗面所に入る前あったっけ?」


 洗面所に向かうには、必ずキッチンを通らなければならない。その時に否が応でも玄関が視界に入ってしまう。最低でもその二か所が普段と違うなら、最初の段階で何かおかしいと気づけるはずだ。


 あの僅かな時間に、置き配されたダンボールを中に入れて、お粥をつくった? 玄関扉が開く音も調理する音も何も聞こえなかった。

 真白なら気配を消して行動するぐらい造作もないのは理解している。ダンボールを運び入れるのはまだ何とか理解はできるが、お粥を十秒足らずで作り上げるのは理解の外すぎる。事前に作っておいて温め直すにしても、時間が足りなすぎる。


「……真白って、もしかして魔法少女なんじゃないか?」

「そんなわけない……」


 ダンボールからツッコミが返ってきた。


「あーえっと、おかえり……」

「ただいま……って、博希もう起きて大丈夫なの?」


 ガチャリと施錠する音が聞こえたのち、ダンボールと壁の僅かな隙間から真白が顔を覗かせて尋ねてきた。


「ああもう大丈夫だ。ありがとうな、世話をかけた……」

「ううん気にしなくていい。私も役得だった♪」


 隙間を通り抜けながら、ほくほく顔で告げてきた。

 何が『役得』だったのかは聞かない方が良さそうだ。

 とにかく真白が喜んでいることだし一旦ヨシとしよう。


 お粥でお腹を満たしながら、帰宅した真白の話に耳を傾ける。

 どうやら昨夜、寝ようとしたところでいきなり俺がぶっ倒れたそうだ。


「で、博希は昨夜のことどこまで覚えてる? 私に言ってくれたあの言葉、忘れてないよ、ね?」

「……もぐもぐ……あの言葉? あの言葉ねぇ……もぐもぐ……」

「嘘でしょ、嘘よね……?」


 子犬のようにつぶらな瞳でこちらを見つめてくる。

 その目頭には薄っすらと涙が溜まっている。


 冗談だとしてもいま言うべきじゃなかった。罪悪感が重くのしかかる。


「あ、あれだろ? 一緒に寝ようってやつだろ。もちろん覚えてるよ、あんなこっぱずかしい言葉、忘れる方がムズイわ」

「危うくパンチが出るとこだった。ふぅ危ない危ない」


 ガチでこういうセンスを磨こう。

 じゃれ合いで死ぬわけにはいかない。


「はははは……拳圧を飛ばしておいてなにをいまさら。ほら見てみろ、レンゲのお粥がヒヤヒヤになったぞ。まあ食べやすくなったら、これはこれでありだけどさ……うっま」

「……なん……だと……失敗した。上手くやったらフゥフゥできたのに」

「おい心の声が駄々洩れだぞ。それはそうとありがとうな、真白がいなかったら今ごろどうなっていたことやら」

「だ~け~ど、油断は禁物なんだからね! ということで、《《明日も部屋でゴロゴロして》》体力回復に努めること、わかった博希?」

「ああわかった、わかった。奥様の仰せのままに」

「お、おおおお奥様……博希、あとで桃、剥いてあげるね♪」


 朗らかな時間が過ぎ去るなかでふと思う。


 真白の出会う前なら、意識朦朧のなかで起床し、風邪薬をエナドリで流し込んで出社していただろうと……出社? いまって何時? ふむ、普通に定時すぎてるな。まあうちの会社は、そこから本領発揮なところがあるけど……俺、今日休むって会社に連絡入れたっけ……そもそも入社してから休んだことなんてあったっけ……。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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