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銀髪碧眼の美少女暗殺者から「拒否したら心中する」と激重求婚されたので、ひとまず結婚を確定で同棲することになりました。  作者: 虎柄トラ


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第26話 誕生日が終わるまで後少し

 食後から数時間が経過した。


 信楽焼のタヌキばりに膨らんでいたお腹も元どおりになったので風呂に入ることにした。今朝はシャワーだったが、今回は疲労回復も兼ねて湯船につかる。


「くぅはっあぁぁ……」


 自然と口から歓喜のため息が零れる。


 じんわりと体が芯から温まる、この感覚はシャワーでは決して味わえない。真白を待たせているし、あまり長湯をするつもりはないのだが、底なし沼のようにつかればつかるほど、浴槽から抜け出せそうにない。疲労回復という大義名分を掲げたことだし、もう少しだけこの時を謳歌するとしよう。


「一番風呂最高……なんで真白あんなに嫌がったんだろう、わからん」


 前回と同じように先に風呂に入るように勧めてみたが、今回の真白は首を横に振り続けて一度たりとも頷くことはなかった。

 良かれと思って言ったのだけど、あまりにも真に迫る拒否っぷりに悪いことでもしているのかと錯覚を覚えるほどであった。


「俺のためを思ってあえて嫌がる素振りをして一番風呂を譲ってくれたとか? もしそうなら、あの嫌がり方はマジすぎないか? やっぱわからん」


 他愛もない疑問を天井に向かって投げかける。

 当然答えなど返ってくるわけもない、別段意味の無い自問自答。


 そんなこと分かり切っている。

 それでいい、いやそれがいい。


 呆然としながら温かな湯につかることで、疲れを癒し心身をリフレッシュさせる。古来より日本人が幾度となく行ってきた明日への活力蘇生術だ。




 魂の洗濯を終える頃には一時間半の時が流れていた。

 気を失っていたのかと思えるほど、その間の記憶がいい感じに抜け落ちている。


 居間に戻り興味無さそうにテレビを眺める真白に、長湯したことを詫びると彼女はただ「ふふふ……」と不敵な笑みを返し洗面所に消えていった。


 謀略の一つでも考えていそうな顔に少なからず嫌な予感はしたが、元より真白が実行する気があったのなら、先の入浴時に何かと理由をつけて吶喊(とっかん)してきたはずだ。

 そうしなかったということは……いや待てよ。十六歳の誕生日に心中前提で求婚してくるような覚悟が極まった人間が、このまま何事もなく、この日を終わらせるわけがない。たかだが一日程度の付き合いではあるけど、それでも彼女の性格については把握できたと自負している。


 明くる日まで二時間近く残されている。必ず何か仕掛けてくるはずだ。

 考えろ、考えるんだ倉持博希、なにか見落としてはいないか……。


 水道水で乾いた喉を潤わせながら、真白が考えそうな企てを思案する。

 また並行して記念すべき日に失念していることはないか思考する。


(誕生日ケーキも祝福の言葉を送ったし、誕生日プレゼントも手渡した。落ち度らしいものはないはず……となると、今度はそのお返しと称して……? だとしても、いったい何をしでかす気だ……)


 あれこれと考えてはみたが、結局のところ『これだっ!』という劇的な回答にたどり着くことはなかった。


 そうこうしていると、洗面所の扉越しにドライヤーの音が聞こえてきた。

 どうやらもうすでに入浴を終えたらしく、髪を乾かしている最中のようだ。

 あの長い髪を完全に乾かすとなると、最低でも十分前後はかかりそうだ。


 その間にこちらも何か対策……は無理そうだし、耐性付与も兼ねて精神統一でもしておくか。


「久しぶりにあれやるか……」


 世話になっていた施設で行った古い記憶を呼び起こす。


 左右の足をそれぞれ反対のももに乗せて胡坐を組む。座禅の基本となる結跏趺坐(けっかふざ)。次に左右の手が輪っかを作り親指をくっ付けて、半目にして視線を下げる。最後に背筋を伸ばして腹式呼吸で完成だ。


「…………」


 頭を空っぽに、何も考えないようにすればするほど思惟が巡る。


 そもそも後方からドライヤーの音が貫通している時点で、環境的にも難易度が高い。その上、十数年ぶりの挑戦ともなれば、こうなるのは目に見えていた。が、試しに行った座禅により、とある記憶を掘り起こすことに成功した。


 その記憶とは、辰爾が別れ際に真白に何か耳打ちをしていたことだ。真白はこのあと辰爾が考えた作戦を実行に移すに違いない。


 面と向かって語った記憶はあまりないが、それでもあいつなら俺の癖を熟知している。真白という逸材に辰爾の慧眼による合わせ技。あまりにも弱点特攻すぎる。これは気をしっかり持っていないとやられる。


「日は落ち部屋で二人っきり、頃合いの時間帯。環境や雰囲気、想像力もあわさり最強ってか……」


 実際に目の当たりにしたら、自分自身に誓った矜持を破り捨てるかもしれん。ストリートマーセナリー6の時とは、比較にならない緊張感が押し寄せる。だが、それと同時に期待で胸が膨らむのもまた事実。


 いつしかあの音が消えていた。

 博希の聴覚を支配していた髪を乾かす音。

 気づかぬほど深く考え込んでいたらしい。

 当惑して何も思いつかなかったといった方が正しいか。


 タイムリミットを告げるかのように背後の扉が開いた。




 最良で最悪な時間が訪れる――。

最後まで読んでくれてありがとうございます。


面白いな続きが気になるなと思っていただけましたら、是非ともブックマーク、評価、いいねの方よろしくお願いします。作者の励みになります。

特に★★★★★とかついた日には作者のやる気が天元突破します。


他にも色々と書いておりますので、もしよろしければそちらも一読していただけますと幸いです。

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