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本物の公爵令嬢  作者: Na20


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(そうだったわ……)



 皇帝とハルの言葉で、今の状況を思い出す。

 鮮烈な皇帝の登場で忘れていたが、私はこの場で断罪されていたのだった。

 他の人たちも同様の反応をしている。



「国王陛下に王太子殿、そしてノスタルク公爵に公爵令嬢。もう分かっただろう?この者は祝福の一族であるマリアント公爵家の当主ニール殿だ。その彼が彼女を本物のマリアント公爵令嬢であると認めた。これでもまだ彼女が偽物であると貴様らは侮辱するのか?」



 ハルの言葉に四人は狼狽えた。



「そ、それは……」


「嘘だ……」


「本物、だと?」


「ありえない、ありえない」



 あれだけ偽物だ罪人だと騒ぎ立てたにもかかわらず、そのすべてが嘘だと明らかになったのだ。

 さらにハルは彼らに追い討ちをかけるように言った。



「それと彼女が着ているドレス。これは私とマリアント公爵家からの贈り物だ。彼女を想い、彼女のためだけに作られたドレスは間違いなく彼女の物。それなのに彼女の言葉を聞かず罪人だと決めつけるなんてな」


「ぐっ……」


「それは……」



 王太子殿下とリリアンが気まずげに視線を逸らす。



「またこの偽りの断罪。これを行ったのが王家と貴族の頂点たる公爵家だなんて信じられない。……だが今日は学園卒業のめでたい日。この祝いの場ではこれ以上追求しないでやる。けれどお前たちは帝国を敵に回した。相応の覚悟をしておくんだな」


「そ、そんな!」


「ひっ!」



 帝国を敵に回す。

 その言葉に国王も公爵も、みるみるうちに顔色が悪くなっていく。

 参加者の中には王国の未来を想像し、絶望で倒れるものもいた。

 しかし誰も何も言えない。国王ですらそうだ。

 なぜなら彼らの纏う空気が、あまりに重く鋭いものだったから。

 その空気に触れたが最後、きっと跡形もなく消されてしまうだろう。



「さぁ、行こうか」



 ハルが私に手を差し出す。

 先ほどまでの空気が嘘のように、穏やかに微笑んでいる。



「どこに行くの……?」



 私に行く場所も帰る場所もない。

 それなのにどこに行くというのか。



「もちろん本当の家族が待つ帝国さ」


「帝国……」



 いつか行きたいと夢見た場所。

 そこに私が?

 それにそこには本当の家族もいるという。



「嫌かい?」


「……ううん、嫌じゃないわ。ただたくさんのことがありすぎて、まだ頭と心が追いついてないというか……」



 突然身に覚えのない罪で断罪されたかと思えば、皇帝と父が現れ、自分は本物の公爵令嬢であるという。

 一つ一つの言葉は理解できる。

 けれどあまりにも多くの出来事が重なりすぎて、頭がこんがらがっているのだ。



「……そりゃあそうだよな。すまない、そこまで考えが足りていなかった」


「えっ、ハルは悪くないわ」


「いや、心の整理がつくまではしばらくこの国に留まっても……」



 ハルだって本当は早く帝国へ帰りたいはず。

 それなのにハルはいつでも私のこと優先してくれて。

 たしかに整理はまだできていない。

 けれどもう状況が変わってしまったのは分かる。

 それならば整理はできていないからと、うじうじしている場合ではない。

 それにこの国に留まったとして、はたしてそれに何か意味があるのか。

 いや、ない。私がここにいる必要は、もうない。



「ううん。私がここにいる理由はもう何もないわ。だからね、ハル。私を帝国に連れていって」



 私は自らこの国から去ることを決めた。

 もう二度とここに戻ることはないだろう。

 ハルにエスコートされ、会場をあとにする。



「ま、待て!」



 会場を出る際、何やら後ろが騒がしくなった。

 一瞬振り返りそうになったが、ハルはその必要はないと言った。

 たしかにそのとおりだ。

 もうあの人たちは関係のない人たち。だから私は振り返らなかった。


 偽物はいらないと、私を捨てようとたしたこの国に未練など微塵もない。

 公爵家の養子、王太子殿下の婚約者という枷は無くなった。

 私はようやく自由になれたのだ。



 そうして乗り込んだ馬車で、私たちはこれまでの時間を埋めるかのようにたくさん話をした。

 帝国までの道のりは長い。

 その時間の中で、父とも話をした。

 私が生まれた時のこと、家族のこと。

 そして家族がどれだけ私を愛しているかを。

 正直まだ家族とはどんな存在なのかはよく分からない。

 けれど父はゆっくりでいいと言ってくれた。

 だから気持ちが整理できたその時は、目の前で涙ぐむこの人を『父』と呼びたい。そう思った。


 そうして長い長い馬車の旅は終わりを告げ、私はようやく帝国の地に降り立ったのである。


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