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「……ふぅ」
流し読み程度だが、なんとか最後まで目を通すことができた。
顔を上げ時間を確認する。よかった。
結構時間がかかってしまったのでギリギリかと思ったが、まだ少し時間がある。
そうほっとしていると、目の前から声が聞こえてきた。
「どうだった?」
「あ……」
そうだった。テオハルト様と一緒だったんだ。
急いで読まなくてはと本に集中してしまっていた。
テオハルト様の手には、先ほどまでなかった本が。
席を立って本を持ってきたのだろう。それすら気づかないとは。
「も、申し訳ございません」
テオハルト様は気遣ってくれたというのに、私は自分のことだけ。
「あっ、これのこと?」
「テオハルト様の貴重な時間を」
「気にしないで。私はミレイア嬢とこうして一緒に過ごせて嬉しいんだから」
「え?」
私と一緒で嬉しい?
何の気遣いもできない役立たずなのに?
どうしてテオハルト様はいつも優しい言葉をかけてくれるのだろう。
「それでどうだった?知りたいことは分かった?」
「あ……それは」
手にある本に視線を落とす。
一通り目を通したが、あのページ以外『祝福の一族』について記されていなかった。
残念に思ったがこればかりは仕方がない。
もしかしたら別の本に求める情報があるかもしれない。
ただ今日はもう時間がない。だから今度またここに来よう。
「残念ながら知りたいことは、この本に少ししか記されていませんでした」
「少し?」
「はい」
「えっと、ミレイア嬢は何を知りたいんだい?てっきり帝国の歴史や文化を知りたいのかと思っていたんだけど」
「……」
これは帝国の歴史書。
テオハルト様がそう思うもの当然だ。
けれど私が知りたかったのは歴史でも文化でもなく、『祝福の一族』と呼ばれる一族について。
本当はテオハルト様に聞いてみたかった。
『祝福の一族』を知っていますかと。
でも私がそんなことを聞いたら、変に思われると思い口に出せずにいた。
ただあと少しで、私たちは卒業を迎える。
テオハルト様はランカ帝国の第二皇子だ。卒業すれば帝国に帰ってしまう。
それに求める情報がここにあるかも分からない。
私に残された時間はあまりないだろう。
ここ最近は公爵も王太子殿下も静かだ。私に対して何も言ってこない。
けれどあの二人がこのまま黙っているはずがない。それにリリアンも。
これは嵐の前の静けさ。必ず嵐はやってくる。
そうなれば最後。
二度と帝国について調べることは叶わないだろう。
それなら……
「テオハルト様」
「……どうした?」
私は緊張しながらも手にした本の中から、あのページを開いた。
「テオハルト様は『祝福の一族』をご存じですか?」
「!」
一瞬、テオハルト様の表情が変わった。
何か知っている。そんな表情に見えた。




