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本物の公爵令嬢  作者: Na20


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13/41

13 テオハルト

 

「大丈夫?」



 これまで国民の暮らしを学んではきたが、さすがに孤児院の暮らしまでは学んだことがない。

 初めの内は、なかなか馴染むことができず苦労した。

 しかしそんな私に手を差し伸べてくれたのが、彼女だった。



「私ミレイアって言うの。何か分からないことある?」



 控え目ながらも、困った人を助けたいという強い意思の籠った新緑の瞳に、私の心臓が跳ねた。


 この子だ。


 彼女を一目見た瞬間に分かった。

 なんという運命のいたずらなのだろう。

 父がたまたま避難先として選んだこの場所。

 まさかそこに、本来私の婚約者になるはずだった女の子がいるなんて。


 彼女は帝国で祝福の一族と呼ばれる、マリアント公爵家の人間だ。


 彼女は産まれてまもない頃、金に目が眩んだメイドによって誘拐されてしまう。

 メイドは男に金を貢ぎ、そのせいで金に困っていた。

 だから彼女を誘拐し、身代金を要求しようとしたのだ。


 夜はどうしても人の目が少なくなる。

 その日の夜はそのメイドが世話係だった。

 おそらくこの時間ならすぐには気づかれないだろうと思ったのだろう。

 実際そのとおりで、朝世話係が交換になるまで気づくことができなかった。

 その結果、メイドに逃げる時間を十分に与えてしまい、すぐに足取りを追うことができなくなってしまったのだ。


 それからマリアント公爵は懸命に捜索を続けたが、彼女を見つけることができなかった。


 これはあとから分かったことだが、彼女を拐ったメイドはメノス王国で死体で見つかった。

 きっと国内にいては危険だと思い、逃げて逃げてメノス王国まで来たのだろう。

 ここまで来れば一安心。そう油断したところで、野盗に襲われて死んでしまったのだ。


 帝国でそのメイドは、公爵令嬢を誘拐した凶悪犯。

 けれどそんなこと他国の、それも野盗が知るはずがない。

 野盗にはそのメイドが、子どもを抱えた一人のか弱い女性にしか見えなかった。

 だから金目の物を狙って襲われ、そして殺されてしまったのだ。

 ただメイドの死体のそばに、赤子の死体はなかった。


 だからきっとまだ生きている。

 そう信じて公爵家は秘密裏に捜索を続けてきたのだ。


 本当は私の婚約者になるはずだった令嬢。

 当然彼女の姿は見たことはない。

 けれどどうしてだか、会ったこともない彼女の無事を願わずにはいられなかった。


 そんな中で、突如訪れた出会い。

 これを運命と言わずなんというのか。

 帝国から遠く離れた地で、こうして出会えるなんて。


 出会った時の彼女は、一族の特徴が色濃く出ていた。

 星のように煌めく銀の髪と、新たな命の芽吹きを予感させる新緑の瞳。


 幸いだったのは、ここの人が祝福の一族を知らなかったということ。

 もし知っている人がいたのなら、こうして彼女に会うことはできなかったかもしれない。


 ただそれもいつまで続くかは分からない。

 どこかで一族のことを知り、誰かが彼女を連れていってしまう可能性だってある。


 できることなら一刻も早く国に連れて帰りたい。

 だけど今はまだ身を隠していなければならない。

 実は謀反自体はすぐに収まった。

 けれど父はこれを機に国の不穏因子を一掃することにしたようで、それが落ち着くまでには多少時間がかかると言われていたのだ。

 そして実際にそれは二年もかかった。


 その後帰還命令が出され、私は帝国に戻ることになる。

 しかし残念なことに、彼女を連れて帰ることはできなかった。

 極少数で秘密裏に行動していたため、人手が足りなかったのだ。

 こちらからの連絡は禁止されていたため、彼女のことを父にはまだ伝えられていない。

 無事に帝国にたどり着けるか分からない。

 そう従者から諭されてしまえば、私は現実を受け入れるしかなかった。

 私についてきてくれた者たちを無事に帝国へと連れ帰ること。

 それが私に課された使命でもある。これ以上彼らを危険に晒すわけにはいかない。


 だから必ず迎えに行く。

 そう約束して彼女と別れたのだ。


 別れ際に身に付けていたペンダントを彼女に渡した。

 このペンダントは髪と瞳の色を変えることができる。だから肌身離さず持っていてほしいと伝えた。

 本来は私の身を守るための物。けれど私よりも彼女に必要だと判断した。


 ペンダントを外した私の髪と瞳は、その効果を失い徐々に元の色に戻りつつあったが、夕日に照らされて彼女は気付かなかったはず。

 だから彼女はランカ帝国の第二皇子である私と、あの孤児院にいた"ハル"が同一人物だということに気付いていない。


 それとさらに念には念を入れて、孤児院長に金を握らせ彼女を孤児院から出さないように頼んでおいた。


 やれることはやった。

 あとはすぐに迎えに行くだけ。

 そう思い彼女と別れたのだが、その時私はまだ十歳の子ども。

 この考えが甘かったことを、すぐに思い知ることになる。

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