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本物の公爵令嬢  作者: Na20


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12 テオハルト

 

(レイ……)



 私は目の前で、美味しそうに食事をする彼女をそっと見つめる。

 八年ぶりに会った彼女は、昔の面影を残しつつ、それは美しく成長していた。

 しかし明らかに痩せすぎの身体。

 はっきりと残る目の下の隈。

 手入れが行き届いていない髪。


 そのどれもが、彼女がこれまでどのような生活を送ってきたのかを物語っていた。



(くそっ……)



 もっと早くに迎えに来られていれば、彼女にこんな苦労はさせずに済んだ。

 己の不甲斐なさいに腹が立つ。


 しかし今さら過去を悔やんでも仕方がない。

 ようやく手の届くところまで来たのだ。

 もうこれ以上、彼女に辛い思いをさせやしない。


 隠れることしかできなかったあの頃とは違い、今の私には力がある。

 だから今度こそ。今度こそ必ず彼女を守ってみせる。

 私は強くそう誓ったのだ。




 ◇




 私と彼女の出会いは今から十年前。

 私が八歳、彼女が六歳の時。

 あの孤児院で出会った。


 私はランカ帝国の第二皇子として、この世に生を受けた。

 父と母、そして少し歳の離れた兄がいる。

 私は家族や使用人達に大切に育てられた。

 ただいくら皇族であろうと悪いことをした時は当然叱られ、罰を受けたことだってある。

 それに皇族だからと権力をひけらかして傲慢にならぬようにと、時にはお忍びで市井に出向き国民の生活を学んだりもした。


 そんな何不自由ない生活を送っていた私だったが、八歳の時に事件が起きる。

 叔父が謀反を起こしたのだ。自分こそが正当な皇位継承者であると。

 父と叔父は異母兄弟だ。

 我が国では、皇后の産む子にのみ皇位継承権が与えられる。

 だから側妃の子である叔父には、最初から継承権なんて存在しない。


 けれど叔父は野心の強い人間だった。

 それに父と折り合いが悪かったせいもあるだろう。


 叔父は愚かにも私たち家族を亡き者にさえすれば、己が皇帝という、この国で一番高い地位に立つことができると本気で思っていたのだ。


 けれど実際は謀反が起きる前に、父はすでに情報を手にしていた。

 きっと以前から監視をつけていたのだろう。

 そうして最善を選択した結果、父は兄と私に命令を下した。


『安全が確保されるまで身を隠すように』


 我が国は強大な国だ。

 だからこそ、もしものことなどあってはならない。

 もしものことがあれば、きっと世界は荒れると。


 父の命令に従い、兄と私は少数の信頼できる人間だけを連れ、別々の地へと旅立った。


 そうして辿り着いたのが、帝国から遠く離れたメノス王国にあるあの孤児院だったのだ。


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