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いま、宇宙にある日常  作者: 水無月 林檎
ep1。いま、宇宙(ここ)にある日常
39/41

本当にあったギャラクシーな話10 ギャラクシーショップダイレクトと死の商人

時間稼ぎで始めた短編も10本目になりました。記念に評価を入れてくれてもいいのよ?

ギャラクシーショップダイレクトと死の商人



ある日、日本からある惑星に向けて、武器の密輸が行われているという報告が入る。その報告主は該当惑星の外交官で、美月とミィは詳しい話を聞くべく、その外交官に接触をはかることとなる。場所は宇宙港の大衆食堂。

中に入ると壁には並んで貼られた手書きのメニュー札、揚げ物油でうっすらとコーティングされた天井と、角の棚には14型くらいの小さなテレビ。創業50年の貫禄を感じさせる完璧な佇まいだった。開店して1ヶ月も経っていないはずなのだが。

店内をぐるりと見渡すと奥まったテーブル席に彼らはいた。

白いフードマントで全身を覆った2人組が、今回の依頼者だろう。体格が人とは違うことはフード越しでもわかる。

「えっと、はじめまして。日本のJA3Sから来ました氷守美月です。で、こっちが」

「ミィ」

ミィもボソリと挨拶を済ませる。

これはこれは、ようこそ。こんな遠くまでお呼び立てして申し訳ない」

折角ですからどうぞどうぞ。お好きなものを注文なさってください」

「え、いいの?ラッキー」

「それじゃあ、ミィはトンカツ定食大盛りで」

「みぃ、少しは遠慮なさい。あたしはアジフライ定食でお願いします」

おばちゃん、トンカツ定食大盛りとアジフライ定食で

「あいよ。カツ定大1、アジ定1ね。了解だよ」

店のおばちゃんがテーブルを拭きつつオーダーを受ける。

こんな暑苦しい形で申し訳ないね。」

フードマントの1人が丁寧な口調で語り出す。

我々アースロポッド人は地球人とはすこしばかり生態が違っていてね、驚かせてしまうと悪いのでフードで隠させてもらっているんだ」

「そんな、お構いなく」

本人が言うように、妖しげななりではあるが礼儀正しく好感が持てる。

それにしても、この油の回った室内。落ち着きますねー」

はあ?

外交官がしみじみという。感覚が違うのだろうか?美月としてはギトギト油は綺麗に落としておいて欲しいのだが。

「お待ち。カツ定大とアジ定ね」

おばちゃんが料理をテーブルに並べていく。

「わホーう、早速いただきま~す」

ミィがお行儀悪く割り箸でカツを刺して頬張る。ザクザクと衣のよい音が鳴る。

うまーい!老舗の味だー。新規店舗だけど。」

「老舗を誘致したかもじゃない」

誘致という最後の希望に望みを託す。

「ウチは新規だよ。旦那が去年に脱サラしてねぇ」

おばちゃんが自ら最後の希望を打ち砕いてくる。

「だってさー」

「ふーん、どれどれ」

もはや店の歴史に興味を失った美月が、大きなアジフライを一口大に切って口に入れる。

ジュワリと新鮮なアジの脂が口いっぱいに広がる。ソースの塩味と酸味が調和して

「本当に美味しい」

「喜んでいただけたようで良かったです」

外交官の2人も表情は見えないがほほ笑ましそうだ。

「そうだ、我々の国での一般的なペットをお持ちしたんだ。よかったらどうかと思ってね。気に入ってくれるとよいのだが」

そう言って布のかけられた小さなケージを取り出してテーブルに置く。

絶対というやつだろうか、どんな愛らしい小動物が入っているのだろう?

美月はドキドキしながら、差し出された布のかかった籠を覗き込む。

「!!」

だがケージの中身を覗き見た瞬間に顔が青ざめて硬直する。

「ナニナニ?どーしたの美月」

ミィも美月を押しのけて籠を覗き込む。

「こ…これは。黒くて触角があってカサカサ動くこれは!!」「Gよ!どー見てもこれは戦慄のGよ!!」

鳥肌を立てた美月がワナワナと震える。

「おや、この星にも似たペットがいるのですか?」

外交官が問いかけてくる。

「い、いや。決してペットではありませんが。寧ろ、憎むべき、敵!」

「はい?」

外交官が理解できないという風に聞き返す。

「美月、落ち着いて」

ミィがコッソリと美月に耳打ちする。

「そ、そうね。いえ、何でもないデス」

「で、密輸兵器の事なのですが」

外交官の一人が本題を切り出してくる。

「えぇ、どのような経緯で持ち込まれているか、わかる範囲で結構ですのでお話いただけますか」

今じゃないと内心では思いつつも美月も話を進める。

「それがですね、白昼堂々と貿易品として入ってくるのです」

「はぁ」

あまりにも間の抜けた話に美月の気が抜ける

「もちろん、品名は偽装してありますが。『家庭用洗剤』と」「はぃ?ちょっと待て。ミィ!」

「おーけぃ、ボス」

こんな時ばかり呼吸ぴったりで、美月の合図でミィが素速い身のこなしで外交官のフードを引っぺがす。

「!!!」

そこに居たのは、二足歩行の虫だった。虫、としか形容しがたい人型の節足動物。

「き、きゃーーーーっ!!」

ある程度予測はしていたが、予想以上にGな外見に美月が悲鳴をあげる。

「あー、洗剤でG退治できるもんねぇ。おっちゃん、ソレはホントに家庭用洗剤だよ」

ミィがやる気の失せた声で忠告する

「あんな凶悪な洗剤があるわけ無いでしょう。浴びたら体の油分が分解されて死にますよ。確実に」

外交官官の動揺がひしひしと伝わってくる。

「浴びんなヨ。なぁ、美月。どーする?」

「どーするって。滅んじゃえば、そんな星。ふふ、ふふふふ」「え?美月が壊れた?」

『本日御紹介するのは、NASAと銀河連盟の共同開発で完成したまったく新しいタイプの洗剤です。どんな油汚れも瞬時に分解洗浄。宇宙人の最新技術でこの効果!ギャラクシーショップ ダイレクト!!』

謀ったかのようなタイミングで、店内のテレビでは洗剤の通販番組が始まった。

「ふふ。ミィ、電話をおよこし。タンカー1隻分注文しなくっちゃ」

「大量破壊兵器だ!なんて恐ろしい星なんだ!」

外交官が半狂乱で騒ぎ立てる。

「…。カオスだ。ミィはまだ何もしていないのに、カオスだ」

「しつこい油汚れにはこれ、ギャラクシークリーンX!」

その後、フードを外した姿が店員に見つかって、外交官は店を叩き出されたという。

「そりゃ、飲食店に巨大なGはアウトだゎ」

「これは外交問題になりますぞー」

さっきまで店前で騒いでおばちゃんにスリッパでしこたま叩かれていた外交官がズタボロの姿で呪詛のように負け惜しみを言っている。



昆虫は外宇宙から来たのでは?という説があるそうで、節足動物星の節足動物人です。評価をお願いします!良い夢見させてください!

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