03
よくじつ、美月は美味しそうな朝食の香りで目を覚ます。
スッキリと目覚めたので、洗面所で早速顔を洗って居間に顔を出す。
すると美羽がニコニコと元気に迎えてくれた。
「先輩、おはようございます。冷蔵庫の中身勝手に使わせてもらいました」そう言ってまず出てきたのが、ベーコンとキャベツが入ったコンソメ風スープだった。
「うん、沁みるーー。」
そしてさば缶を使ったホットサンド。
これが意外にいけるのだ。
久し振りの美羽ママご飯に舌鼓を打つ。
「また一緒に住みたいなー」
いかん、うっかり心の声が漏れた。
「私には社宅がありますから!」
そしてきっぱり断られた。
「その代わり、たまにごはん作りに来てもいいですか?ひとりは寂しいのでいっしょにごはん食べましょう?」
「いいの?やったー!」
横からミィの歓声が上がる。ミィの胃袋もガッチリとつかんだようだ。
それで、どこに転属になったの?
「太田製作所ってところっす」
ふーん、なんか聞き覚えが⋯」
「最近少しCMもやってますから。歯ブラシから宇宙戦艦まで、あなたの生活に寄り添う太田製作所です。ってやつです」
聞いたことないわ。それに、宇宙戦艦が寄り添うことなんてないんじゃないかな」
「まあ、そうですよね」
「でも宇宙船の操縦をアシストするシステムで特許を取ってそれなりに売れてるんですよ。乗用車を操縦する感覚で宇宙船が操縦できちゃったりするんです。ほかにも飛行機とかいろいろな乗り物も実装しているので、一つは自分にあった物があるって好評なんですよ」
「どこかで聞いた様なシステムね」
「例えば自転車とかな。にしし」
ミィがほくそ笑みながら補足する。
「自転車は流石に無理ですよ。そんなので大気圏再突入できたらノーベル賞物です。会社から報奨金が出るレベルです」
「美月やったじゃん」
「。。。おだてたってもう二度とやらないから!」
「何を言っているんです?」
由羽が訝しむ。
「ミィ、これ以上はシーッよ。勝手に乗り回してスクラップにしてるんだから。報奨金がでたってマイナスは確実よ」
ミィを確実に黙らせる。
「先輩もしかして自転車のシステム持ってるんですか。」
「あたしは持ってないわ。自衛隊が回収して警察に押収されているはずよ」
「そうですか、せめてフライトレコーダだけでも回収できれば帳消しで不問にできるんですが。」
「え?何その好条件。あとで聞いてみるわ」
「はい、お願いします。て事はあの報道に映っていたのはやっぱり先輩だったんですね」
あの報道とは自衛の救助艇に助けられて帰国した際にとある局のカメラが張っていて機体から降りるさまがカメラに押さえられていたのだ。フーリヤ大使が狙いだったようだが、SPとして出てきたのが可憐な女性(もちろんあたしのことよ!)だったので少し話題になったのだ。
「もしかして有名人になってます?」
「全然よ。多少マニアックなファンはついたかもだけど。今度ささやかな撮影会やんのよ」
時刻は8時を回った。
「そろそろ東條さんは出社してる頃ね。」
「そだね東條ちゃんは真面目だからにゃー」
ほんじゃ連絡してみるか。
そういってスマホを取り出す。
「はーい東城さん、元気?」
「なんだ氷守。小遣いをせびるギャルみたいな声を出して」
へー、東條さんってこうやって巻き上げられてるんです?」
「巻き上げられてなどおらん」
「冗談よ。」
「で、どうした?」
「昨日さ、銀行行ったのよ。小切手の換金に」
「なんだ、まだ行ってなかったのか」
「ずっと額に入れて飾ってたのよ」
「そーゆーもんじゃねーだろう」
「でも記念だったのよ」
「安かっただろう?」
「そうなのよ、どうなってるの」
「レートが変わったんだよ」
「アランたちが頑張ってなあ。フーリアじゃ日本の民芸品とお土産品が大ブームなんだと」
「そんなこんなで円の価値が上がって円高景気に沸いてるって知らないのか?」
「知らないわよ!アイツら余計なことを!」
「氷守だって悪いんだぞ。本来は1週間以内に現金化するものなんだ。」
「そんな事言われたって知らないもの。さいしょはいくらだったのよ」
「知らない方が良いこともあるぞ」
「良いから!!」
「わかったわかった気をしっかり保てよ。この一ヶ月でフーリアクレジットの価値は百分の一ってところだな。」
「な、、、、な、、、昨日10万円だったから最初は1千まんだったの?」
美月は真っ白に燃え尽きた。
「東條ちゃん、美月が燃え尽きた」
燃え尽きた美月からミィがスマホを奪い取って報告する。
「まあ、ショックだろうな
さらにショックなのは、このブームが長く続かずにこれから多少フーリアクレジットが持ち直して安定するだろうと見られているってことだな。」
ショックにショックが重なって美月が息を吹き返した。
「え、昨日現金化していなければってこと?そういえば銀行員さんがしきりに本当によろしいのですかって聞いてきたわ」
「おう、ご愁傷さまだな」
「それで、あたしたちが水没させたたシャトルなんだけど、フライトレコーダーってもらえない?」
「そんなもん何に使うんだ?」
「太田製作所の人がね、欲しいって」
「ほーん」
「渡せば壊したのチャラにしてくれるんだって」
「なんだその好条件は」
「だよね」
「持ち主に返すんだ。問題ないだろう。警察には伝えておく」
「ありがとう」
「それはそうと太田製作所とはどんな関係だ?」
「あたしの後輩が転属されたんだって」
「ほーぅ。話は通じるか?」
「物分かりはいい子よ」
「それじゃあ聞いてみてくれ」
「何を?」
「何をって、話してあっただろう産業スパイの件。」
「あーそうだった!」
「どこかで聞いた名前だと思ったんだ」
「しっかりしてくれよ」
東條は呆れて「頼んだぞ」とだけ伝えて電話を切った。




