02
「あれ。?先輩、なんでここに?」
「それはこっちのセリフよ」
「え、よく見たらここどこ?」
黒髪のショートカットを掻きながら
急に辺りをキョロキョロと見回して焦り出す。
「あら、懐かしい。先輩の部屋全く変わりませんね」
「で、私はなんで先輩のベッドで寝ていたのでしょうか?」
愛嬌のある笑顔で誤魔化す。
突然にクイズを出さないでもらえるかしら」
「たっはー、これは失礼。でも私はしっかりと覚えているのです。
会社の歓迎会でしこたま飲んだ私は泥酔してなじみの深いこの三杉荘に戻ってきてしまったのです。センパ
イ、鍵は変えないと不用心ですよ」
「そうはいっても合鍵持っているのはあなたと三杉先輩だけじゃない。問題無いわよ」
「信用してくれてありがとございまっす」
「それで、なんであたしのベッドに?」
「それがですね、元自分の部屋に入ったらすっかり様変わりしているうえに、ベッドにはすでにどなたかいらっしゃったので、先輩の部屋で待たせてもらおうかと思ったのですが、酔いが回ってふらふらとベッドに潜り込んでしまいまして。先輩もソファで寝てらしたし、まあいっか。と、そんな感じでした」
「うん。まあ良いけどね。」
「状況は把握したけど、就職で地元に帰ったんじゃないの?」
先日移転になりまして、またこの街に帰ってまいりました。ああ、お構いなく。住むところはしっかりと社宅を用意してもらっていますから。
ここに戻ってこようなんて思ってませんから」
「戻っても良いのよ」
「でもでも、すでにルームメイトの方がいらっしゃるではないですか」
「いいの、いいのよ。野良猫だから。ネコに人用の一人部屋はは贅沢だわ」
「猫。。。ですか?」
「ミィは野良猫でないのだが」
「ややこしくなるからあんたは寝てなさい」
きゅうに割って入ってきたミィを雑に追い払う。
「ほーい」
ミィはこれ見よがしにシュルリンと猫の姿になって部屋に帰ってゆく。
「え、いま人が猫になった?」
由羽が驚きで目を丸くする。
「ほら、ややこしくなった」
「とりあえず今日はゆっくり休みなさい。酔ってるんでしょ?あたしはソファで寝るから気にしないで。そうだ、お水を持ってきましょうか」
「あざまっす」
美月は改めてベッドを後輩の大橋由羽に譲ってコップ一杯の水を持ってくる。
「由羽も変わらないわね。普段はシッカリしてるのに時折信じられないようなポカをやらかすのよね。懐かしいわ。」
「面目ないっす」
頭をかきながら愛嬌のある笑みを浮かべる。
彼女は、大橋由羽 22歳。
美月の短大時代の後輩。高校時代は陸上をやっていた。小柄で黒髪のショート。三杉の友人の妹。三杉が自分の後釜として「美月のお目付け役」に任命したが、あまりにも面倒見が良くしっかりしていたため、由羽の庇護下で美月のだらけ具合は最高潮に達したという。美月曰く「毎朝起こしてくれるし、ご飯も作ってくれるし、おやつも作ってくれるし、良い子だったなぁ」三杉の「由羽ならしっかり美月を導いてくれる」という目論見は半分当たって半分外れた格好になる。
優羽由羽が卒業するまでの2年間、美月の保護者役を務め、卒業後は彼女の地元の企業に就職の為部屋を去る。その際にも、それこそ我が子をひとり立ちさせる親の心境で、部屋に残る美月を心底心配していた。
1年余りが経ち、東京にある関連企業へ転属のために戻ってきて早々のポカだったようだ。
居間に入って自室の部屋の扉を閉めて一息つく。まさかこんなかたちで再会するとは思っていなかった。




