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前世の記憶でセラピスト ~甘い香りで男の人を虜にしちゃう!?~  作者: 藤谷 葵


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第二幕(17)

第八回アイリス異世界ファンタジー大賞に参加します。

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 夕食時。


「お父様、お願いがあるのですが」


 カチャカチャと音を立てていたカトラリーは、ぴたっと奏でるのをやめた。お父様は視線を私に向けて険しい表情を作る。眉をひそめて口を開く。


「なんだね?」

「えっと……言いにくいことなのですが、犬カフェの準備をしていたら必要なものが発生しまして、それを援助して頂きたいのですが……」


 目を潤ませてお願いしてみた。


「最低限の物は一式揃えたはずだが?」


 はい。そんな簡単にはいきませんでした。


「お客様用として、カウンターに小さな小物入れを作って欲しいのです!」

「何の為に? メアリーがやるのはカフェだろ?」

「はい、お客様が犬と戯れる際に席を離れるので、飲み物に毒を入れられないように飲み物をしまって鍵をかけられるものが欲しいのです」


 そこへローレンスお兄様とマークお兄様が口を挟んだ。


「では、私がその資金を出そう。メアリーには助けられているしな。犬カフェとかいうのも元々は、私の病気を治すためのアロマオイルとかいう事業を立ち上げるための資金稼ぎだろう?」

「いや、俺がだすよ。可愛い妹、メアリーの為だ!」


 そのやり取りを聞いたお父様は、深いため息を吐いた。


「はぁ~、そんな話をされたら、グリスト家の長として出資しないわけにはいかないだろうが……わかった。その分の費用は私が出そう。ただし! これが最後だぞ?」


 お兄様方のナイスアシストで、お父様から援助を受けることができた。なんかこの展開、前世のテレビのコメディで見たような気がするが気のせいだろうか?

 ともあれ、これで犬カフェに必要なものは全部揃うわね。


 その後の食事の美味しいこと。お父様に視線を向けると、私とは反して食事の味が落ちがような顔をしながら食べていた。


 数日後、お父様から、犬カフェのカウンターにいくつか小さな小物入れを設置したと報告を受けた。小物入れと言うとそこそこ大きなイメージかもしれないが、コップが一つ入る程度の物である。


「ありがとう! お父様大好き!」


 お父様に感謝のハグをした。

 前世の記憶、二十七歳の女が何をやっているのだろうかと思うが、たまには可愛い娘を演じてあげますわ。ちょっとこそばゆいけど。

 満面の笑みを浮かべて、お父様に手を振る。


「では、犬カフェに行ってきますわ」


 苦笑いのお父様に見送られて、クレアとマロンと共に馬車に乗り込む。スコットを呼ぶためにヘイルズ邸へ向かった。


「おはよう、スコット」

「おはよう」

「さあ、馬車に乗って! 犬カフェに向かうわよ!」

「今日は何の用で?」


 きょとんとしているスコットに、クレアを抱きかかえて見せつける。


「この子たちが鍵で怪我をしないかと、ゴムバンドと小物入れの様子を確認するのよ」

「小物入れ? もうできたの?」

「まあ、小さいからね」


 話しながらスコットは馬車に乗り込む。犬二匹と今日が初めてご対面。

 私はクレアを。スコットはマロンを膝に抱き上げ撫でている。


「それでこの犬たちの名前は?」


 このやりとり、今後もまだ続くのであろうか? 私の膝上にいる名前を紹介するだけで赤面するのだけど……。こんなことなら他の名前にすればよかったわ~。質問が来ないようにギリギリ聞こえるようなボリュームを口から出す。


「……クレアとマロンよ……」

「クレアとマロンか~、よろしくね。ってクレアってどういうこと!?」


 ほらやっぱり、こういう反応来た。私は顔を背けて言い訳を口にする。顔が仄かに火照る。


「な、なんとなく浮かんだ名前を付けただけよ。ほら、マロンは毬栗みたいな色をしているし、クレアも精悍な顔つきじゃない」

「いや、マロンは理解できるけど、クレアの方は理解できないかな。精悍って何? どちらかというと可愛らしい顔をしているのだけど?」

「……私がそう見えたのだからそれでいいじゃない」

「……そっか……」


 スコットは馬車の外を眺めながら、深い溜息を吐いた。


 犬カフェに辿り着くと、早速、犬を犬エリアに入れる。二匹から首輪を外すと、嬉しそうに駆けずり回り始めた。


「さて、私たちも犬と戯れてみましょう」

「ああ」


 二人で持ってきたゴムバンドを手首にはめる。そして、お父様から受け取った小物入れの鍵を内側のポケットに入れる。うん、自分自身も鍵が押されることによる違和感を感じないしいい感じだわ。

 犬が外に飛び出さないように、慎重に犬エリアに入る。ちなみに今日は私はドレスで、スコットはシャツとブリーチズである。庶民の服は問題ないだろうけれども、貴族はトラブルが起きると面倒ですしね。


 スコットはソファに腰を掛ける。私は絨毯に直に座った為、ドレスが花開くように広がる。


「さあ、クレアおいで」


 犬を呼ぶと、スコットが背後から声をかける。


「クレア、僕の所においで」


 クレアを気に入ったのかしら? でも、クレアはとことこと私の所に来た。クレアに来て欲しかったみたいなのになんかごめんなさいね。


 クレアもマロンも膝の上に抱いていると大人しいものだ。野良犬生活で何かあったのかな? そんな心配をしつつクレアをそっと撫でた。気持ちよさそうにしている。杞憂だったみたいね。膝の上が好きなのかしら?

 クレアとマロンを交換して様子を見ようとしたけど、クレアが離れないのにマロンまで来て、二匹を抱きかかえることになる。スコットには悪いけど、きっとこれが人徳ってやつね。スコットが悪い人というわけではないけれども、犬たちは人を見る目があるわ。

 辛抱たまらず二匹のお腹に顔を埋めて吸引した。

読んで頂きありがとうございます。


犬吸いを体験してみたい作者。半面、鼻に犬の毛が入らないかと心配です。子供の頃に犬を飼っていたいので、犬アレルギーはないはず。でも、花粉症などがあるので、犬吸いをする場合には勇気が必要です。


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いつも楽しく拝読させて頂いています。 A「押すな!」「絶対に押すなよ!!」 B「………………………………」 A「押せよー!」 ダチョウ倶楽部のコントを思い出しました。 スコット君、お犬様にもそっぽ…
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