第二幕(15)
第八回アイリス異世界ファンタジー大賞に参加します。
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犬カフェから離れたところにあるメインストリートに辿り着き歩き出す。郊外に犬カフェの建物を購入したので、遠いのがちょっと難点ね。
「メアリー! 置いて行かないでよ!」
あ、アイデアの閃きの方に気を取られて、スコットのことをすっかり忘れていたわ。ごめん!
歩く速度を落として、後ろから息を切らせて走ってきたスコットと並ぶ。
「気づいたんだけど、材料を揃えるならうちのヘイルズ商会でもいいんじゃない?」
言われて顎に手を添え歩きながら考え込む。確かにヘイルズ商会から融通してもらった方が割安になる。しかし、そんなに頼っていいものだろうか? 後で何かを求められても困る。例えば、アロマオイルの権利を寄こせとか言われてもね。まあ、カイゼル子爵がそのようなことをするとは今までの付き合い上考えられないけれども、一応ね?
「いえ、甘えてばかりでは事業を行うものとしてダメだと思うの。ここは自分たちで頑張りましょう。さあ、裁縫店に行くわよ!」
カイゼル子爵を疑っているという言い方は流石にどうかと思うので、他の理由で丁重にお断りした。まあ、甘えてばかりいてはいけないというのは本当のことですしね。お父様に甘えまくった私には耳が痛い話だわ。
ちなみに商業ギルドは今回出番なし。商業ギルドは特注品とかを扱っているけど、一般に流通している物はわざわざ扱わない。市場を独占しないようになっているらしいわね。
結構歩いたところで裁縫店に辿り着いた。
店内に入るとドアベルがチリンと音を立てる。
「いらっしゃいませ。仕立てですか?」
「いいえ、裁縫の材料を買いたいのですが、売って貰えます?」
「ええ、裁縫の材料も取り揃えておりますよ。どうぞご覧下さい」
店員さんに促されて、店内を物色する。
ありがたいことに前世の世界と同じような少し幅広のゴムを売っている。普通のゴムではなくて手芸に使うようなゴムだよ? これを輪っかに縫い合わせればいいわよね。
ポケットを作るための生地を探していると、ひまわり色の生地が目についた。
私は手に取り広げてみる。
(……こういう元気が出そうな色をローレンスお兄様の部屋のカーテンとかに良さそうね。カラーセラピー的に)
ローレンスお兄様も現状の真っ赤に金の装飾ではなく、他に心休まりそうな色がないかと、参考がてらに見てみた。
おかげさまでなんとなくイメージで来たので、当初の予定である手首に巻くゴムバンドの材料を買って、私のうちで裁縫をすることにした。犬カフェで使うものだけど、お店に裁縫道具は置いてないから仕方ないわね。
鞄に購入した材料を入れて歩いていると、スコットがもじもじと声をかけてくる。
「お、俺が荷物持ってやるよ」
「え? いえ、別にいいわよ」
荷物を持ってくれるというスコットの優しさを無下にしたようで申し訳ない。確かに女性の荷物を持つというのは紳士的である。でもね? 人に持たす方が不安な場合もあるのよ。貴重品とかその他、自分にとって大事なものとか人に見られたら恥ずかしい物とか。誤解のないように言っておくけど、私は別に恥ずかしいようなものは持ってないわよ? 普通に貴重品があるからよ? なけなしのお小遣いがね。
スコットがしょんぼりとしてしまった。その理由がわかるだけに何か声をかけてあげたいが、私も「お小遣いが大事で心配で人に渡せないの!」とは、恥ずかしくて言えない。
断り方がつい素っ気なくなってしまったので、にこやかな笑顔でフォローを入れておく。
「スコット。いつも気遣ってくれてありがとうね」
「あ、ああ……」
スコットが挙動不審になってしまった。目がきょろきょろとあちらこちらに向き、顔が赤面している。お礼を言っただけなのになんで?
うちについてもスコットの考えは分からなかった。
読んで頂きありがとうございます。
作者もメアリーのように『鞄の中身』『財布』『スマホやパソコンの中』などを見られたくないです(笑)。
恥ずかしいものが入っているわけではないのですが、プライバシーを侵害されたくないという理由です。いや、鞄の中は恥ずかしいかも? 散らかっているかもしれない(笑)。
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