第二幕(14)
第八回アイリス異世界ファンタジー大賞に参加します。
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スコットと二人、カフェに来た。普通のカフェですわ。
スコットはと言うと、ずっと肩を落として口から魂が半分抜けている。何があったのかしら?
とりあえず、飲み物を注文する為にメニューを眺める。
コーヒーと紅茶。それに果物ジュース類。ハーブティーは置いていないようでラインナップはありきたりの物のようね。
ホットミルクティーを頼むことにした。スコットにもメニューを促す。
「……ああ」
力なくメニューを受け取る。私にもスコットに冷たい風が吹き抜けていくような光景が目に浮かぶ。
「どうかしたの?」
首を傾げて質問してみる。これからの事業に影響をきたしてはいけない。そもそも心を癒す事業なのに、身近な人間が心蝕まれては話にならない。
「……鈍いな~って思って……」
頬杖を突きながら、頬を赤く染めながら呟く。
「鈍い? 何が? 幼馴染の不貞腐れ気味の態度には気がついているわよ?」
ため息を吐かれた。
「幼馴染か……まあ、今はそれでいいや」
いつもの表情に戻り、スコットを吹き抜ける風も消えたようだ。流石私! スコットはメニューを眺めながら口にする。
「……なあ、飲み物ってコップに入ってくるんだよな?」
「ええ、そうよ」
「犬が飛びついたら、飲み物が零れないか?」
「……そうよね……」
なまじ前世の記憶が戻ったせいで、蓋つきの零れないコップのことを失念していたわ! 当たり前のように思っていたけど、この世界にあるわけないわよね。そもそも使い捨てという概念がないし、仮に使い捨てを安い素材で作ったとしてもコストは馬鹿にならない。蓋つきのコップを作る? でも、どうやって? 頭からプスプスと煙を出していると、とどめを刺された。
「そもそも、ガラス製のポットも何かの拍子に割れちゃうんじゃないか?」
ボンっと頭が爆発した。
耳と口から黒い煙を噴きだしている私に言葉をかけてくる。
「飲み物は犬のコーナーに持ち込み禁止で、カウンター席で飲み、犬と戯れる時にはそのまま置いておいてもらえばいいんじゃないか?」
「毒を混入されたり、取り間違えをしたりしないから?」
「そうだよな……予定では貴族がメインになりそうだしな。平民で犬が関係するなんて、猟師くらいだろうしな」
「カウンターに飲み物を入れる小物入れをつけるとか?」
「そうだな。鍵をかけれるようにするとか」
「それで手首に巻いて貰えば大丈夫ね」
「手首? ネックレスにして首からかけるとかじゃなくて?」
またもや前世の記憶の弊害が。確かに手首に巻くにはサイズなどに問題が出そうだ。いや、待てよ? ゴムバンドならいけるか? ネックレスだといちいちフックをかけるのも手間だし、かといって上からすっぽりとかぶる感じだと髪型によって影響が出そうだ。自分の意見を述べてみる。
「……ということで、ゴムバンドにして、鍵をゴムバンドの内側に収納できるポケットを入れた方がいいんじゃないかしら?」
「そっか、それなら犬が鍵にぶつかり怪我をするということもないな。じゃれつくたびにネックレスを切られたりしても困るしね」
「そうそう……って、お針子にいくつか依頼をしないといけないじゃない!」
「簡単な仕組みなら、自分たちで作った方が安上がりじゃないか?」
私は思案する。確かにそうね。
「それで行きましょう!」
冷めてきたミルクティーを一気飲みして、カフェを飛び出した。
読んで頂きありがとうございます。
いつも悩み事が発生する作者。
今回は『ゴムバンド』。
今の世の中だと手芸店に普通に売っていますが、異世界だとどうなんだろうな~?という感じです。
大抵、中世ヨーロッパくらいの文明。ないような気がしないでもない。しかし、作りはシンプル(?)。
あってもいいのではないだろう?
そう思った作者は突っ走りました……。
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