第二幕(12)
第八回アイリス異世界ファンタジー大賞に参加します。
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サロンにて。
「まあっ! 可愛い子犬がもう一匹増えたのね」
お母様は喜んでいるが、お父様は溜息を吐いている。うん、前もって言うのを忘れていたわ。だが、雷が落ちることはなさそうね。
「お父様、それで『犬カフェ』の店舗に送って欲しい家具などがこれですわ」
必要なものをメモした紙を手渡す。「却下!」とか言われたりしないかとドキドキしたが、すんなりと受け入れてくれたようで懐にしまった。
「それでは私は準備に取り掛かるので失礼するよ」
お父様はそう言うとサロンから退室した。
ラフコート・ダックスフントを両手で掲げ、お腹を吸っているお母様。私も足元を歩いているクレアを抱き上げお腹を吸う。
「お母様……その子に名前を付けようと思うのですが……」
「そうなの……何て名前にするの?」
という感じで会話をしているが、お互いに犬のお腹を吸っているので、絵面的にはシュールである。
「そうですわね……パッと頭に浮かんだのは『マロン』ですわね……なんか毬栗と色が似ているせいかしら?」
「あら、可愛くていいんじゃない?」
「では、マロンということで」
なんてことを言いましたが、実際に最初に浮かんだ名前はスコットでした。幼馴染だし一緒に犬カフェを経営するということから頭に浮かんだのよね。でも、『クレアの前例』があるから同じミスをするわけにはいかないわ。「スコット」とか呼んで人間の方のスコットに反応されてもねえ。犬の方も紛らわしさを感じるかもしれないわ。
犬を吸っているせいか閃いた。クレアたちをまだローレンスお兄様にお披露目していない。路上生活が怖かったのか、大声で鳴くとかもしない大人しい子たち。存在を知らないでしょうね。ローレンスお兄様にアニマルセラピーを試してみましょう。では、クレアを部屋に連れて行ってみますか。クレアたちが犬カフェに住むようになったら、顔合わせの機会を逃してしまいそうだしね。
早速、クレアを抱き上げ、行動を起こした。
部屋のドアをノックする。
「ローレンスお兄様、失礼します」
「……やあ、メアリー」
部屋に入るとベッドで天井を見つめていたローレンスお兄様。私に気づくと顔だけをこちらに向けた。
「その犬は?」
「一時的に飼っていますわ。犬カフェの準備が整うまでの間ですが」
「飼っているのは理解したけど、犬カフェとは?」
ローレンスお兄様は戸惑っている。うんまあ、この世界にはないでしょうしね。説明しようとするとクレアがベッドに飛び込み、一緒に寝転んだ。ローレンスお兄様は少し戸惑いながらもクレアを優しく撫でた。もふもふが気持ちいいでしょ?
「そんな感じで犬を愛でるカフェです。私がお父様にお願いして事業を始めることになりまして」
この説明で通じて下さいませ。色々な人に説明をしてきたから、説明が面倒になってきましたわ。
「そっか……犬カフェか……私も病気が治ったら犬カフェに行って、メアリーの働いている姿を見たいな」
心の病気を完治するのは難しいだろう。むしろ、この世界は身体欠損とかも回復魔法で治るのでそちらの方が完治は楽であろう。でも、軽減はできるはず。
なんてことを考えていたら、クレアがぺろぺろとローレンスお兄様の顔を舐めている。まるで仲良しさんだわ。名前のせいかしら?
「あはっ、くすぐったいよ。それでこの子の名前は?」
犬の名前を問われてドキリとする。やましいことはしていない。それなのに、私は首をギギギと逸らし、視線は彷徨い、脂汗が出てきた。
「……クレアです」
「え?」
小声で呟いたせいで当然聞こえない。顔に血流が集まり、なんか顔が火照ってきた。私は開き直ってムキになり大きな声を出す。
「クレアですわ!」
ぽかんとしているローレンスお兄様。私の声で驚かせてしまったのだろうか? それともクレアの名前の由来?
「そっか……クレアか……いい名前だね」
そう言うと目を細めてニコリと微笑む。とても穏やかな笑顔。アニマルセラピーとして癒されているのか? 分からないが名前に対して追及がないことにほっとした。……と思ったのもつかの間。
「クレアになら、メアリーを任せられそうだね」
「ローレンスお兄様!? それってどういう意味ですの?」
私があたふたしている中、ローレンスお兄様は柔らかな笑みを浮かべて笑っていた。
読んで頂きありがとうございます。
いよいよ、アイリス異世界ファンタジー大賞の締め切り(3/21)が明日となりました。
締切までの投稿はこれが最後で、後は締め切られてからの投稿となります。
ここまでの投稿で、審査員さんや編集さんがこの作品をどのように感じるかと、心臓がバクバクしそうです。
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