第二幕(11)
第八回アイリス異世界ファンタジー大賞に参加します。
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商業ギルドに向かう馬車の中、クラレンス様と二人きり。うん、気まずいですわ。私だけが意識をしているような気がして、独りよがりをしている気分。元の仲良しさんに戻るようになるべく自然に接するように心がけよう。
そう思い、視線を向けるとクラレンス様とばっちり目が合った。クラレンス様はまるで反射的にふいっと外の景色を見る。
(おやおや~? クラレンス様、お耳が真っ赤ですわよ?)
独りよがりではないかもしれない説が浮上したわ。
なんかうずうずしてきた。いつもクールなイケメンの表情を崩したくて。気まずい空気に負けずに話しかけてみることにしますわ。
「クラレンス様は商業ギルドと私のどちらに興味がおありですか?」
なかなかぶっこんだ質問をしてみた。言葉にしてしまってから「失敗した~」と内心で頭を抱えているが、もう手遅れだわ。ひたすら「メアリーと言え、メアリーと言え」と心の中で祈った。
「まあ……どちらかというとメアリー嬢かな……」
頬をほんのり赤く染めながら視線を絡ませてくる。自分で言わせておいて、そんな真っすぐな瞳で見つめられると、わたわたしてしまいますわ。
また沈黙が続いたまま馬車は商業ギルドに到着した。
商業ギルドの受付に向かう。クラレンス様は後ろをついて歩く。横に並んで欲しい気もするけれど、ここの用事は私が主役だから、あまりでしゃばるのもいけないと気遣ってくれたのであろう。
「こんにちは。他の事業の登録にきたのですが」
この前と同じ受付嬢に話しかける。
「これはこれはメアリー様。新しい事業ですか? どんな事業ですか?」
鼻息荒げに質問してくる。きっと前回のセラピストが変わった事業だから、私がまた変わった事業をするのではないかと興味津々なのね。まあ、確かに犬カフェだからこの世界にない事業ですけどね。
受付前の椅子に座る。受付嬢の態度でクラレンス様におかしく思われていないか不安になり、ちらりと横に立っているクラレンス様に視線を向けるが、こちらも受付嬢の反応で私が何を言うか興味津々になっているようだわ。
ほっと一息ついて口を開く。
「セラピストの事業は今、準備中でして、その前に犬カフェを開業したいと思っておりますの」
言葉を少し濁した。ここではっきりと「お金がありません」というと、クラレンス様が出資してくれてしまいそうであったからね。前世の記憶を取り戻す前の甘やかされてばかりいた私は卒業する。
「それで犬カフェとは?」
カウンターに肩ひじをついてずいっと顔を出して瞳を輝かせる。
「名前の通り犬カフェよ。犬と戯れてお客さんを癒す場所よ」
「ほほう? カフェというくらいですから、飲み物も提供するのですか?」
「ええ、ハーブティーなどを扱う予定ですわ」
「ふむふむ、なるほど」
受付嬢はカリカリとメモ帳にメモをしている。
「事業内容はわかりました。では、書類を準備しますので少々お待ち下さい」
そう言葉を残して受付嬢は一旦席を離れた。
横に立っていたクラレンス様が話しかけてくる。
「犬カフェという癒しのお店を開店するのか……開店したら私も顔を出していいかな?」
もじもじしながら問うてくるクラレンス様。会いたい相手は私ですか? それとも犬ですか? ちょっとジェラって不貞腐れる。
受付嬢が席に戻り、つつがなく事業登録は完了した。
商業ギルドを出て、伸びをする。肩の荷が一つ降りた気分だわ。
クラレンス様と別れて、ここからは私は別の用事を行う。徒歩で家まで戻りながら、犬カフェの犬をもう一匹くらいは増やしたい。路地裏をほじくり返すように見て回る。
願いが通じた……わけではないだろうが、街中を走っている馬車の馬がヒヒーンと鳴き声を上げる。普通に走っている分には鳴き声をあげないはず。何かあったのかと視線を向けると、馬車の前を子犬が横切っている。どうやら子犬は無事のようだ。
御者は「あぶねえだろうが!」と怒鳴りつけて馬車を再び進めるが、子犬には通じてないと思いますわよ?
馬車が通り過ぎた後に、私はその犬を拾い上げた。
家に連れ帰り、洗いながら両手で持ち上げる。
「ラフコート・ダックスフントかしら? 足が短くて可愛らしいし、犬カフェにぴったりね」
鼻歌を歌いながら、その子を泡まみれにして綺麗にした。
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アイリス異世界ファンタジー大賞の締め切り(3/21)が近づいております。
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