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異世界AIは的外れ ~育てたら最強になりました~  作者: モグ
第4章:最強 ~俺とAIの答え~
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第34話:俺とAIの答え(前)

 封印が成功してから、数時間が経った。


 戦場には、まだ煙が立ち上っている。崩れた城壁、壊れた建物、傷ついた大地。でも、ベイモスの姿はもうない。あの巨大な魔物は、大地の下に封じ込められた。


 俺は瓦礫に座り込んで、空を見上げていた。


 曇っていた空に、青空が覗き始めている。まるで戦いの終わりを祝福するかのように、太陽の光が差し込んでくる。


「マナブ」


 アランが隣に座った。鎧はボロボロで、顔には傷だらけだ。でも、その目は輝いている。


「お前のおかげで勝てた」


「そんなことない。みんなの力だ」


「謙遜するなって」


 アランが肩を叩いた。痛い。まだ回復しきっていない。


「あの4秒カウント、お前にしかできなかった。俺たちはお前を信じて動いただけだ」


 エイダが歩いてきた。髪が乱れ、ローブが汚れている。でも、顔には笑みが浮かんでいる。


「ねえ、マナブ。覚えてる? 最初に図書館で会った時のこと」


「ああ。俺が一人で本を読み漁ってた頃だな」


「あの時、私、変な人だと思ってた」


 エイダは少し笑った。


「冒険者なのに剣も魔法も使わないで、ずっと本を読んでるだけ。何がしたいのかって」


「失礼だな」


「でも今なら分かる。あの時、あなたは準備してたのね。情報を集めて、AIを育てて、いつか来る大きな戦いのために」


 俺は首を横に振った。


「そんな先のことは考えてなかったよ。ただ、できることをやってただけだ」


「それが正解だったのよ」


 ジェフリーも近づいてきた。回復魔法を使いすぎて、顔色が悪い。でも、穏やかな笑みを浮かべている。


「マナブ殿。おぬしと出会えて良かった」


「ジェフリー……」


「最初、おぬしのスキルが何の役に立つのか分からなかった。でも、ゴブリン討伐の時、おぬしは『検証』という武器を見せてくれた。あの時、初めて理解した。おぬしのスキルは、戦場で輝くんじゃと」


「あの時は、まだ手探りだった……」


「でも、諦めなかった。図書館で地道に情報を集め、AIを育て続けた。そしてベイモスとの戦いでスキルが覚醒した。あれがあったから、今日の勝利がある」


 俺は仲間たちの顔を見渡した。


 一年前、俺は一人だった。「ハズレスキル」を持った、何もできない召喚者。


 今は違う。仲間がいる。信頼し合える仲間が。


      ◇ ◇ ◇


 復興作業が始まった。


 冒険者たちが瓦礫を運び、兵士たちが負傷者を救護所へ運ぶ。市民たちも手を貸し、老若男女が一丸となって働いている。


 俺たちも手伝っていた。力仕事は苦手だが、できることはある。


「あ、あの人たちよ!」


 若い女性が俺たちを指さした。


「ベイモスを封印した人たち!」


 周囲から視線が集まった。最初は戸惑いの目。やがて、それが感謝と尊敬の目に変わる。


「ありがとう! 街を救ってくれて!」


「英雄だ! あなたたちは英雄よ!」


 人々が近づいてきて、俺たちを取り囲んだ。握手を求める者、泣きながら礼を言う者、頭を下げる者。


「照れくさいな……」


 アランが頬を掻いた。


「英雄なんて呼ばれたことねえよ」


「慣れてくださいね」


 通りかかった兵士が言った。笑顔だ。


「あなたたちは、本当に王国を救ったんです。これからは、どこに行っても英雄扱いですよ」


 俺は少し複雑な気持ちになった。


 確かに、ベイモスを倒したのは俺たちだ。でも、俺一人の力じゃない。仲間がいて、他のパーティがいて、魔術師たちがいて——全員の力を合わせた結果だ。


「お前の作戦のおかげだ」


 声をかけられて振り向くと、銀髪の剣士——オプティマのリーダーが立っていた。


「最初は正直、若造に指示されるのが気に入らなかった。でも、あの同時攻撃、見事だった」


「ありがとう」


「次に大きな依頼があったら、声をかけてくれ。また一緒に戦いたい」


 そう言って、銀髪の剣士は去っていった。


 金髪の女冒険者——グラディエントのリーダーも歩み寄ってきた。


「いい戦いだったわ。あんたたち、名前は?」


「インファレンス」


「インファレンス……覚えておくわ。また会いましょう」


 彼女も笑顔で去っていった。


      ◇ ◇ ◇


 夕暮れ時、俺たちは酒場にいた。


 いつもの席、いつものエール。でも、今日は何か違う。店主が「今日は俺の奢りだ」と言って、最高級のエールを出してくれた。


「英雄様たちには、これくらいしないとな」


「いや、金は払うって」


「いいから受け取ってくれ。あんたたちのおかげで、この街がまだ残ってるんだ」


 俺たちはジョッキを掲げた。


「インファレンスに、乾杯」


 カチン、とジョッキがぶつかり合う。冷たいエールが喉を通っていく。いつもより美味い気がした。


「なあ、マナブ」


 アランが聞いた。


「お前、最初の頃のこと覚えてるか?」


「最初の頃?」


「ああ。俺たちがパーティを組んだばかりの頃。お前、自分のことを『戦えない』って言ってたろ」


 覚えている。あの頃は、自分に何ができるのか分からなかった。


「剣も魔法も使えない。でも、今は違う」


 アランはエールを一口飲んで、続けた。


「お前は戦ってた。誰よりも戦ってた。情報を集めて、分析して、作戦を立てて。それが戦いじゃなくて何なんだ」


「……そうかもな」


「結局さ、派手な剣技や魔法だけが強さじゃねえんだよな」


 アランは肩をすくめた。


「情報を集めて、分析して、最適な行動を選ぶ。それも立派な戦い方だ」


「インファレンスのやり方じゃのう」


 ジェフリーが付け加えた。


「推論する者たち。まさにその名の通りの戦いぶりじゃった」


 エイダが俺の肩に手を置いた。


「ねえ、マナブ。あなたはずっと、自分の戦い方を探してたんでしょ?」


「……ああ」


「見つかった?」


 俺は窓の外を見た。夕陽が街を赤く染めている。復興途上の街。壊れた建物、修繕中の城壁。でも、人々は生きている。笑っている。


「見つかった、と思う」


 AIと一緒に戦う。情報を集め、分析し、最適な判断を下す。仲間と協力し、困難を乗り越える。


 それが、俺の戦い方だ。


「よかったわね」


 エイダが微笑んだ。


「私、最初から分かってたわよ。あなたには、あなたにしかできないことがあるって」


 俺は少し照れくさくなった。


「……ありがとう」


      ◇ ◇ ◇


 深夜、宿の部屋で一人、窓の外を見ていた。


 満天の星空が広がっている。異世界の星空。最初に見た時は、寂しさを感じた。でも今は、違う感情がある。


 達成感。安堵感。そして——何か、胸の奥にくすぶるもの。


 周りからは「英雄」と呼ばれるようになった。仲間からも、街の人々からも、他のパーティからも。外から見れば、俺は成功者なのかもしれない。


 でも——俺自身は、どう思っているんだ?


 一年前を思い出す。神殿で「ハズレスキル」と言われた日。何もできない自分が、情けなかった。


 今は違う。AIと一緒に成長してきた。失敗して、学んで、積み上げてきた。


 でも——その答えは、まだ言葉にできていない。


「なあ」


 心の中でAIに話しかけた。


「俺たちは、結局どうだったんだろうな」


 AIは、いつものように淡々と答えた。


『質問の意図を明確にしてください。何について評価を求めていますか?』


「……分かんねえよ。俺も」


 俺は笑った。


 答えは、まだ見つかっていない。でも——明日、ゆっくり考えよう。


 今日は、勝利の余韻に浸っていい。


第34話「俺とAIの答え(前)」 完


次回:第35話「俺とAIの答え(後)」


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