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美波ぃぃぃぃぃぃぃ…

 その週の土曜日、私は久々の休み?じゃなかった、まだ、謹慎中だった。まあ、休みという事にしておこう。今日は午後から渋谷で坂崎さんとショッピング。何でも、会わせたい人がいるそうな。午後一時にハチ公前。


「麗奈ちゃん、やっほー!」

「あ、坂崎さん!」

 やっぱり、坂崎さん、プロポーション、良い。一緒に女性を連れてきたみたい。友人かな?

「彼女、新藤小百合。中学の時からの親友。」

 黒く長い髪が印象的な和風の女性。何だか聡明そう。ちょっとボーイッシュな坂崎さんとは、好対照。

「よろしくお願いいたします。」

「よろしくお願いいたします。あのぉ、宇宙人の宇宙船に乗ったそうで。手術して、宇宙人の身体を使って生きているそうで。凄い科学技術ですけど、何処の星なんでしょうか?どんな文明なんです?どんな暮らしをしているんです?」

「あ、あの、細かいことは、この身体の元の持ち主に聞いてみないと。」

「あの、巨大化したそうですが、どうやってやったんです?原子核の巨大化?細胞の巨大化?それとも生体組織の巨大化?」

 新藤さんが瞳を輝かして迫ってくる。何か、凄い。

「あのー。あれは巨大化ではなくて、私に似たバイオアーマーに乗っているので。」

「バイオアーマー!乗っている!どうやって操縦するんです?モーションキャプチャー?それともエントリープラグに入って、シンクロ?」

「えっと、ベルトで背中を固定して、背中と耳の下に何かを張り付けるんですけど。そうすると、自分の動いた通りに、動いてくれるんです。」

「なるほど。脊髄と顔面神経の信号を拾っているのかしら?視覚は?」

「外の映像がコックピット?から見えます。」

「ふーん、そっか…。で、身体の元の持ち主とは」

「立ち話もなんだし、喫茶店でも入ろ。」

 坂崎さんが新藤さんの言葉を遮った。三人は歩き始めた。坂崎さんは小声で私にこう言ってきた。

「御免、麗奈ちゃん、小百合、こういうことになると熱くなるんだ。麗奈ちゃんの事、話したら、ぜひとも会いたいって言って。」

 私たちはスクランブル交差点を渡ろうとした。人混みの中、向こうから見知った顔がちらちら見えた。美波?その時、突然、地面が揺れた。何?首都直下地震!?どんどん、揺れが酷くなり、私たちは立っていられなくなった。

「おかしい。縦揺れがこんなに長く続くなんて。」

 新藤さんが言った。その時、道路が割れ、下から大きさ一・五メートルほどの植物の蕾の様なものが大きな茎と共に現れた。その途端、揺れは収まった。私の近くにはたまたま無かったが、十メートルおきぐらいに蕾が出てきた。美波の近くにも一つ。すると、全ての蕾が開き、大きな花が咲いた。妹は何だろうと言う感じで花を覗き込んだ。その時、花が閉じ、妹は花の中に閉じ込められた。

「美波!」

 私は叫んで、駆け寄った。そこら中から、悲鳴が聞こえた。閉じた花はすぐに地中に戻って行った。どうやら、そこら中で花は人を攫っていったらしい。

「美波ぃぃぃぃぃぃぃ…。」

 二人が私の所に駆け寄ってきた。

「どうしたの?」

「妹が、妹が…。」

「妹さんが、引き込まれた?」

 私は頷いた。涙が私の目に溜まり始めた。そして、一滴、頬を伝った。

「麗奈ちゃん、帰ろっか。」

 私は考えて、ふと思いついた。

「ちょっと待って。一緒に宇宙船に来て。」

「え!宇宙船!」

 新藤さんの顔が急に明るくなった。私は気が付かないふりをして、ハルに頼んで私を含む三人を宇宙船へ転送してもらった。

「これが宇宙船の中か…。」

 新藤さんが言った。

「ハル、私達が転送前にいた所の地下って、どうなってる?」

 私はハルに聞いた。

「調査します。」

「え!誰が喋ってるの?」

 坂崎さんが聞いた。

「この宇宙船のAI。ハルって言います。」

 私は紹介した。

「へー。」

「…何か、地球で言うところの、巨大な植物の様なものが、繁殖しています。ただし、どうも地球の植物とは異なる細胞で出来ています。我々の宇宙から来た可能性があります。」

 ハルは言った。

「やっぱり…。何人か、人間が引き込まれていったけど、生きてるかどうか、判る?」

 私は聞いた。

「判ります。約三十人の人間が地下に引き込まれて、全員、生きてます。ただ、」

「ただ?」

「その生態組織と遺伝子構造に変化が見られます。どのような変化なのかは、正確には判りませんが。」

「はあ…。」

「恐らく、元に戻す必要性が出てくると思いますが、どうしますか?」

「手はあるの?」

「はい。あなたの能力に、遺伝子内容を変化させるものがあると思います。それをチューニングすれば可能です。」

「え!そんな事、出来るの!?」

 新藤さんが驚いた。

「はい。できます。…じゃあ、チューニングして、お願い。」

 私は言った。

「判りました。では、向こうに寝てください。チューニングに約十分ほどかかります。」

 私はハルが案内する場所に寝た。

「お二方、何か質問があればどうぞ。答えられる範囲で、お答えします。」

「え!質問、できるの?」

 新藤さんが驚いた。

「はい。私、一応、マルチタスク、マルチプロセスなので。」

 新藤さんの質問する声がよく聞こえる。ハルが答えてる。私は目を閉じた。妹を、美波を何とか、助けなきゃ。

「佐々木さん、終わりました。」

 ハルは言った。

「はい。で、ハル、地下にいる人間たちをここに転送って、できる?」

「できますけど、今は植物の様な生命体に接続され、遺伝子構造が書き換えられている真っ最中です。今転送するのは、生命に危険が及ぶ可能性があります。」

「そうか…。」

「この行為が終了した後の方が、安全かと。」

「待つしかないか。」

 私は腕組みをした。

「流石、凄い技術力ね。」

 新藤さんが感心している。

「付き合ってくれてありがとうございます。」

 私は言った。

「いえいえ、こちらこそ。」

 新藤さんは満足したらしい。

「今から、どうしよっか?」

 坂崎さんが聞いた。

「私、やっぱり妹が心配。ちょっとショッピングする気にはなれません。」

「だよね…。やっぱり帰るか。」

「せっかくだから、送ります。」

「ありがとう。あ、二人とも、若葉台駅に送ってくれればいいから。」

 宇宙船は多摩地区の方に移動した。そして、二人を転送した。その後、森岡さんから電話がかかってきた。

「渋谷一帯に出没した植物のようなもの、何か情報はないか?」

「森岡さん。それが…妹がその植物の花のようなものに閉じ込められ、地中に引き込まれまして。」

「え!妹なんかいたの?」

「はい。飛行機事故以前は、一緒に住んでました。」

「そうか…。で、その植物の事だが。」

「どうも、他の惑星から来たもののようです。」

「やはりそうか。で、どうする?」

「私は妹を救い出したいので、植物に動きがあるかどうか、見張るつもりです。」

「わかった。取り敢えず任せる。」

 電話はそれで終わった。私は宇宙船の中に夜まで残り、しばしばハルに地下の人たちの状況を訪ねた。状況は変わらなかった、そのまま朝が来た。私は少しうとうとしていると、ハルに起こされた。

「起きてください。起きてください。」

「あ、おはよう。ハル。」

「地下の人達に動きがありました。」

「え!}

「どうも、地上に出てきたようです。」

「行く!現場に行かなきゃ!」

「転送しますか?」

「して!」

 私は渋谷駅の近くに戻った。あの大きな花の蕾が地上に出てきている。私は妹が花の中に閉じ込められた場所に駆け寄った。蕾はゆっくり開くと、中には妹が横たわっていた。

「美波!」

 私は妹をゆっくり抱きかかえた。

「美波!みなみぃ!!」

「だ、誰?」

 そっか。この身体になって、まだ、きちんと会ってなかった。

「真帆!お姉ちゃん!」

「え!?ああ、顔、変わっちゃったんだっけ。」

「そう。大丈夫?」

「う、うん、多分、大丈夫。」

 私は妹を起こした。妹は立ち上がると周囲を見回した。すると妹はこう呟いた。

「お姉ちゃん、壊さなきゃ。」

「え!?」

 妹は右手で手のひらサイズの正八面体に近いクリスタルの様なものを取り出し、右手を上に伸ばし、クリスタルの様なものを掲げた。すると、妹の身体を包むようにクリスタルの形の幻が浮き上がり、妹の身体の周囲が変化し始めた。一秒ほどすると、妹の姿は、白を基調とし胸のあたりに交差するような線が入ったボディースーツに覆われ、足は赤いラインが入ったブーツのようなものを履き、赤い肩パットを付け、右手に剣のようなものを持ち、頭全体もヘルメットのようなマスクのようなものを付けた姿となった。

「美波?」

 妹はその姿で、突然、渋谷の街を破壊し始めた。信号機を剣の一撃で倒し、植物が地下から出てきた時に半壊していたSHIBUYA TSUTAYAを胸の部分から出すビームらしきもので粉砕した。どうやら、他の花から出てきた人間たちも同様に、姿を変え、街を破壊している。

「美波、止めて!」

 私は妹を止めようとした。しかし、妹はその手を振り払った。

「何するの。お姉ちゃん。私は壊さなきゃいけないの!」

 街を破壊し続ける妹。立ち尽くす私。私は見るに見かねて、妹の両手を掴んだ。しかし、妹はもの凄い力で、それを払って私を押し倒した。

「あいつつつ…。」

”洗脳された可能性があるわね。”

”え!?”

”だとすると厄介だわ。今の能力では洗脳を解くことができないのよ。”

”ええ!?”

”試しに、イントゥ・プベティ、バーニング・ラブ、やってみて”

 私は妹の前に行き、この二つを試してみた。しかし、全く効かなかった。

”やっぱり、駄目だわ。これは一旦、私の母星に行った方が良いかも。”

”母星?”

”そう。宇宙船で行けばすぐよ。”

”わかった!”

 私は宇宙船に転送してもらい、ファジス星に向かった。ハルの話では、ファジス星は”別の宇宙に存在したもう一つの地球”だそうだ。生命の進化過程がファジス星と地球は酷似していて、遺伝子構造もほぼ一緒だそう。

”シャルファーレンスさん、ファジス星に行ってどうするの?”

”ファジス星には七つの秘宝が眠っていると言われているわ。”

”秘宝?”

”そう。その中には、洗脳を解くものもあると聞いてるの。”

”え!それ、欲しい!”

”そうでしょう。秘宝の在処は、神官が知っていると言われてるわ。”

 宇宙船はファジス星の空港らしきところに停泊した。そして、転送ポッドと呼ばれるものを使って、神殿に向かった。

 神殿は幾何学的なオブジェが並ぶ道の先に在った。

「ここを訪れし者よ。汝は何を求めてここに。」

 私が神殿に入って行くと、凛とした女の人の声が響いた。奥の方に女性の影が見える。銀色のワンピースロングドレス姿。長い黒髪、神秘的な顔立ちの女性だ。

「秘宝のある場所を教えていただきたいと思いまして。」

「そうか。では、サファスタイ国とレンブライアス国の争いを解決せよ。さすれば秘宝について教えよう。」

「…え!?」

 そんな…。急いでるのに…。サファスタイ国とレンブライアス国って何?

”シャルファーレンスさん、サファスタイ国とレンブライアス国って、何?”

”どっちも、ファジス星の極東の国よ。二つの国にまたがってラスラル山と言う山があって、鉱物資源が多く採れるの。その山の採掘権を巡って、争ってるわ。”

”その争いを解決すれば、教えるって言ってるけど。”

”やるしかないわね。”

”えー!”

 一体、どういう要求!?秘宝と何の関係があるの?

”多分、あなたの人格を試してるんだと思うわ。”

 私は神殿を出た。まずは、二つの国双方の言い分を聞いてみることから始めるか。

”どうやったら、その二つの国のトップに会える?”

”それは簡単よ。「宇宙連邦警察」の証明を見せれば会えるわ。”

”それ、何処にあるの?”

”あ、宇宙船の中だわ。後、私の携帯通信機も持ってた方が良いわね。”

 私は宇宙船に戻り、シャルファーレンスさんの言う「宇宙連邦警察」の証明と携帯通信機を取った。そして、両国の近くまで宇宙船に乗って行った。その後、私は携帯通信機でサファスタイ国の領事館に連絡した。

「宇宙連邦警察のものですが、大統領のアポを取りたいのですが。」

 私はカメラに証明を見せた。

「はあ。要件は何です?」

 領事館の人は聞いてきた。

「今、ある事件を追っているのですが、その事件に貴国とレンブライアス国の争いが関わっているんです。」

「どのぐらいの時間が必要ですか?」

「取り敢えず、十分ぐらいです。ただ、後になって必要になるかもしれません。」

「…そうですか。大統領のスケジュールを確認します。」

 保留になった。

「午後一時五十分ぐらいなら、空いてます。」

「判りました。よろしくお願いいたします。」

 次にレンブライアス国も同様に連絡した。そっちは午後二時二十分なら良いそうだ。私は少し、時間を潰した。

 問題は本当に山の採掘権だけが争いの元かである。それは実は口実で、実際は別の所に問題があるかもしれない。

”シャルファーレンスさん、相手の真意を読み取るような能力、ない?”

”直接的な能力としては、無いわね。暗示で強引に話させるか、後は、相手の記憶を感じ取れると言う能力があるわね。”

”記憶を感じ取る?”

”ええ。記憶を感じ取りたい相手に触れて読み取る記憶の関連内容に意識を集中すると、感じ取れるわよ。”

”へえー。”

 まずはサファスタイ国の大統領がいる場所に転送してもらった。サファスタイ国の大統領官邸は、白い荘厳とした建物で、三階建てらしい。私は警備部に一報を入れて、中に入れてもらった。

「大統領は今、執務室にいます。今、案内します。」

 私は警備員に案内され、大統領執務室に入った。

「宇宙連邦警察、捜査官のささ…いえ、シャルファーレンスです。」

 証明書と名前、合わせなきゃ。

「サファスタイ国の大統領、レイルアム・シャクレーンズです。」

 私は大統領に握手することを促した。大統領は少し変な顔をしたが、握手をした。私は意識をレンブライアス国に集中した。

 映像が意識に流れ込んできた。テレビのようなものの映像、隣国の領空侵犯、戦争、隣国の脅迫と停戦、大統領の暗殺と再戦、そして終戦。

「で、どのような事件です?」

「ラスラル山の資源を狙っている犯罪組織がいるようです。どうも、貴国とレンブライアス国との争いに乗じて介入することを考えているようです。そこで、我々としては、両国の現在の認識を伺いたいと思い、伺ったわけです。」

「そうですか。ラスラル山の採掘権は我々に有ります。それは歴史的事実に即しています。あの山は昔から我が国のものです。」

「判りました。ご注意ください。」

 私は退室した。次にレンブライアス国の大統領官邸に転送してもらった。やはり、警備部に一報入れて中に入り、大統領執務室に入った。私は挨拶をして、大統領と握手をした。

 やはり、テレビのようなものの映像、隣国の侵攻、戦争、隣国による捕虜の虐殺、停戦、侵攻、そして終戦。

 大統領の意見もサファスタイ国とほぼ同じようなものだった。私は帰って、ハルに両国の戦争の話を聞き、作戦を練った。戦争があったのは三十年前。レンブライアス国の領空侵犯に始まり、開戦、サファスタイ国の捕虜殺害と続くものだった。


 多分、両国ともお互いの国に対する不信感は根深いのではないだろうか。それを消し去るためには、お互い同じような人間であり、それを強烈に意識させるほかないのではないだろうか。そうすれば、対話も始まるだろう。荒療治ではあるが、仕方がない。私には時間がない。妹を早く元に戻さねば。

 私は再び、両国の大統領のアポを取った。今度は時間は四十五分。二人とも同じ時刻になるように設定。奇跡的に同じ時刻今日の午後六時に取れた。そして、二国の国民が状況を見れるよう、動画ライブ配信をハルに手配させた。二国のマスコミには、大統領の出演番組として、そのライブ配信をアナウンスするよう伝えた。後は、両大統領を何処でどうやって会わせるかである。場所は宇宙船が良いか。連れて来るには転送を使うのが良いが、ハルの話だと大統領官邸内は転送が使えないらしい。警備上の理由だそうだ。官邸の外に連れ出すしかないか。

「済みません。ご同行お願いできますか?」

 私は大統領に聞いた。

「何故です。」

 大統領は問い返した。

「会わせたいお方がいるのです。」

「誰です?」

「行ってみればわかります。」

 大統領と私、そして警護の人が二人は官邸の外に出た。

「何処まで行くんだい?」

「ここで良いです。」

 私は警護の人の目を見つめて、こう念じた。”暫く任務を忘れなさい”そして、私と大統領は転送された。私たちは宇宙船の一室に転送された。そこには既にもう一人の大統領がいた。

「お前!何でここにいる!」

「お前こそ、こんな所で何をしている?」

 私は微笑んでこう囁いた。

「イントゥ・プベティ。バーニング・ラブ。」

 二人は私を見ている。さあ、こっからがショーの始まりよ。私は二人の目を見ると、こう念じた。”私が堪らなく欲しくなる・”

「ねえ、私が欲しいの?」

 私は聞いた。二人は頷いた。

「良いわよ、あげても。でも、ひ、と、り、だ、け。」

 二人は睨み合った。そして、取っ組み合いの喧嘩が始まった。この時点でこの二人のライブ配信が始まった。視聴者はどんどん増えている。さて、後は二人が力尽きるのを待つだけ。

 二人は十分ほど殴り合っただろうか、身体の動きは止まって罵り合い始めた。そろそろセカンドステージね。

「こっちを見なさい。」

 私は二人に言った。罵り合いは止まった。私は”バーン・イントゥ・メモリー”と囁いた後、二人の目を見るとこう念じた。”冷静になりなさい。”すると二人の顔から憎しみが消えた。後は問題点を一つづつ潰していくしかないか。まず、二度の戦争での問題点を突きましょうか。

「お二方に聞きます。まず、過去の戦争の発端である領空侵犯について。どちらの国に非があるの?」

「それは勿論、領空侵犯を行ったレンブライアス国です。」

「いえ、聞いた話だと、そんな命令は出されなかったそうです。」

「それはおかしい。命令もなしにパイロットが勝手に領空侵犯したと言うのか?」

「パイロットの話だと、領空侵犯したこと自体、よく覚えていないと言っていた。」

「ますます、おかしい。どういうパイロットだ!」

「まあ、待って。それが本当なら、何かレンブライアス国が嵌められている気がするわ。」

 私は、その話題を止めさして、次の話題に移った。サファスタイ国による捕虜殺害、サファスタイ国の大統領の暗殺、どれも真犯人が別にいるような内容が続いた。その時突然、一人の男が部屋に入ってきた。これ、どゆこと?

「配信を止めてもらおう。」

 長身で美形、金髪の男はそう言うと、クリスタルの様なものを掲げた。これはまさか…。妹の時とほぼ同じように、男の姿は妹の変わった時の姿とよく似ているが、厚さは薄い一本の角のようなものが付いたパワードスーツを着たような姿になった。そして、そいつは胸のあたりの蓋の様な部分を自分の手を使って開いた。

「高エネルギー反応。パージします。」

 ハルの声が響いて、パワードスーツを付けた男は消えた。外に転送されたらしい。その直後、宇宙船が大きく揺れた。警告音が聞こえる。どうする?多分、妹の時と同じで、技は効かない。今、出てって戦っても間違いなく勝ち目はない。これは何とかして、秘宝を手に入れないと…。

「何が起きた!」

 レンブライアス国のトップは言った。

「どうなっている?」

 サファスタイ国のトップは言った。

「一時、亜空間に退避します。」

 ハルは言った。どうやら、もう一撃受けたら危険らしい。

「ハル、さっきの侵入者の画像ってある?」

「あります。これです。」

 宇宙船の壁にある画面にはさっきの男が映った。この男が、二つの国の諍いに関わっていることは、間違いないらしい。問題はどうやってそれを証明するか。多分、何らかの方法で、証拠と記憶を消してる。消された記憶を復活できれば…。

”シャルファーレンスさん、消された記憶を復活させる能力ってないの?”

”それは、無いわね。でも、暗示によって無いことにされた記憶を暗示を解くことで復活させることはできるわよ。”

”それ、教えて!”

”相手の目を見て、ブレイキング・ザ・スペルと囁くの。そうすれば、暗示が解かれるわ。”

”ありがとう。”

 これで後は、戦争の関係者に会うことが出来れば、証拠が掴めるかもしれない。

「レンブライアス国の大統領さん、領空侵犯したパイロットに会えるかしら?」

 私は聞いた。

「国の閣僚たちに聞いてみなければわからない。」

「じゃあ、閣僚に連絡取れる?」

「やってみる。」

 レンブライアス国の大統領は携帯を操作して、連絡を取っているようだ。

「サファスタイ国の大統領さん、捕虜を殺害を命令した責任者に会えるかしら?」

「聞いてみよう。」

 サファスタイ国の大統領も携帯を操作し始めた。

「パイロットに会える。今から支持する所に行ってくれ。」

「判ったわ。」

 私はレンブライアス国の大統領から場所を聞いて、その場所に行くようハルに指示した。宇宙船は三分もするとその場所に着いた。

「レンブライアス国の大統領さん、パイロットをこっちに転送していいかどうか、聞いて。」

「わかった。…良いそうだ。この人を転送してくれ。」

 大統領は携帯に映っている写真を示した。私は転送するよう、ハルに指示した。すると一人の男が部屋に転送されてきた。

「あ、大統領。元空軍パイロットのラウス・クレイアーです。」

「大統領のレイアー・トンプスだ。聞きたいことがあるんだが。」

「はあ、何でしょう。」

「三十年前、君が領空侵犯をした時のことを教えて欲しい。」

「あれは…よく思い出せないんですよ…。」

「ちょっと待ってください。」

 私は会話を一旦止めた。そして、パイロットの目を見て、”ブレイキング・ザ・スペル”と囁いた。するとパイロットの顔つきが変わった。

「あれ?どうしたんだろう。記憶が…、あの時、出撃前に見知らぬ整備員が近づいてきて、私に何かしたんです。そうしたら…私は、レーダーを見て、領空内を飛んでいたと思ったんですが、突然警告音が鳴って、領空侵犯をしているから引き返せと言う連絡を受けました。私は慌てて引き返しました。基地に帰ってから、やっぱりあの見知らぬ整備兵が近づいてきて、何かしていったんです。」

「その見知らぬ整備兵って、こういう人ですか?」

 私はさっき突然現れた男の映像をパイロットに見せた。

「あ、そうそう、こんな感じの人です。」

 何かこれで決まった感じがする。一応、捕虜の殺害の方も、あたってみるけど。ただ、また、あの男は私達を殺しに現れる可能性がある。それを警戒しつつ、行動しなければならない。

 私たちはパイロットを降ろした後、サファスタイ国の大統領が連絡を取った捕虜殺害の責任者に会った。彼の暗示を解いてみると、あの男が明らかに関わっていることがわかった。配信はここまでにして、二人の大統領を帰した。後は、両国の使節団と警察が何とかしてくれるだろう。ただ、あの男だけは警戒しておかないと…。

 私は、宇宙船を神殿の近くに泊めてもらって、神殿に降りた。日はとっくに暮れている。神殿の内部は電気が付いていた。

「済みませーん!神官さん、いますかー!」

 私は大声で叫んだ。暫くして、あの女性神官が出てきた。

「ここを訪れし者よ。汝は何を求めてここに。」

「以前、秘宝のある場所を尋ねた者ですが、サファスタイ国とレンブライアス国の争いを解決しろと言われて、解決してきました。」

「そうか。何が問題だった?」

「両国の間で昔あった戦争が相互の不信感の根幹にあったのですが、その戦争がある男の計略によって、起こされたものらしく、それを明るみにしたら、冷静な話し合いができるようになりました。」

「わかった。では、秘宝について教えよう。秘宝は全部で七つある。どれについて知りたい?」

「洗脳を解く能力があるものを。」

「ならばこれだな。ミラクルブレスレット。付加能力の中に洗脳解除がある。これは、ここから北東方向に十キロほど行ったところにあるザヌーバル山の山頂近くにある祠の中にある。この鍵を使って開けるがよい。」

 神官は鍵をくれた。私はそれを受け取ると神殿から出ようとした。その時である。

「よくも計画を邪魔してくれたな。」

 神殿の出口にあの男が立っていた。まずい、こんな所であれを使われたら、神殿が破壊されてしまう。私は急いで神殿から出ようとした。男がクリスタルの様なものを上に掲げた。そして、パワードスーツを着たような姿になると、胸の部分を開けて、強烈な光線を放った。私はとっさに倒れた。神殿の屋根は半分吹き飛んだ。私は辛うじてその影響を避けた。私はシャルファーレンスさんに頼んで宇宙船に転送してもらった。

「ハル!ザヌーバル山に向かって!」

 その直後、宇宙船が大きく揺れた。奴が撃ってきたらしい。

「推進機能に損傷。不時着します。」

 え!ちょっと待って!やばい!

「修理には、三時間ほどかかります。それまで動けません。」

 どうする?外には奴がいる。確実にいる。今、戦って勝てるとは思えない。逃げられるか?奴が宇宙船に入ってきた後、外に転送してもらうしかない。奴が宇宙船の中を探してる間、時間を稼げるはず。見つかれば、かなりの確率で私は死ぬ。転送先はこの宇宙船からできる限り離れた場所で、サヌーバル山に出来るだけ近い場所。

”バギ!”

「宇宙船の外装が傷つけられました。侵入者が入ってきます。」

「ハル。私を出来るだけ遠くでサヌーバル山に近い場所に転送して!」

「わかりました。サヌーバル山まで一キロの所に転送します。」

 私は、道の上に転送された。少し歩くと、幸運にも標識があった。”サヌーバル山までこの先一キロ”現地の言葉は、シャルファーレンスさんの携帯で文化翻訳した。私は、サヌーバル山山頂を目指した。

 二時間程歩いただろうか。サヌーバル山の山頂手前まで来た。暗闇の中での登山は結構、辛い。形態の光を頼りに慎重に歩いたけど、道を外しそうになった事数回。迷いそうになった事三回。登山路の標識が比較的親切だったから、何とか来れた。山頂に近づいた時、闇の中、人がいる雰囲気を感じた。まさか…。

「待ちくたびれたぞ。」

 奴だ。もう、パワードスーツ姿になっている。奴は胸から強烈な光線を放った。これの威力は凄いが、出る予兆から0・五秒後に発射されるので、何とか避けれるようになった。私は伏せた状態から立ち上がって、祠を探した。祠は…奴の後ろ側だ。何とか奴を祠から引き離さないと。奴は足から、剣を出し、凄いスピードで襲い掛かってきた。まずい!接近戦では勝ち目はない!

 私は奴の二太刀を何とか避けた。そして、急いで後ろに下がった。しかし、奴は凄い速度で私に追いつき、剣を振り下ろしてきた。紙一重の差で後ろに避けたが、私の洋服は切り裂かれた。

「ほう。凄い運動神経だ。」

 奴は更に剣速をあげて、切り付けてきた。私はこんなこと得意なわけないが、火事場の馬鹿速度で避け続けた。しかし、刃先は皮膚に当たって、血が滲み始めた。こんなことを続けていると、そのうち命を落とすことになる。何とか祠に辿り着かなければ。多分、秘宝が唯一の希望。私は神官からもらった鍵を握り締め、五感を研ぎ澄まして奴の剣から逃げるタイミングを伺った。

 私は何とか剣を避けながら奴の背後に回り込むと、祠に向かって猛ダッシュした。しかし、祠まであと二メートルと言う所で、突然、左足が引っ張られて転倒した。左足にワイヤーの様なものが絡みついている。

「残念だったな。」

 ワイヤーはどうやら奴が投げたものらしい。奴はワイヤーを思いっきり引っ張ってきた。私は必死に地面にしがみつこうとしたが、無理だった。地面を引きずられた私は、背後から強い殺意を感じ取って、とっさに身体を曲げた。横を見たら、奴の剣が地面に突き刺さっていた。私はゾーッとした。奴は剣を引き抜くと何度か剣を突き立ててきた。私は仰向けになって必死にそれを避けると、奴の足を思いっきり蹴って奴を倒そうとした。しかし、奴はびくともしなかった。これはマジで、やばい。

「これで終わりだ。」

 奴は両手で剣を持ち、大きく振りかぶるともの凄い速度で剣を振り下ろした。私は何とかそれを避けた。髪の毛が大量に切れた。奴の剣はたまたま私の頭の後ろに有った岩に刺さった。私は急いで這い出して立ち上がり、祠に向かった。何とか祠に着くと、鍵で扉を開けた。その時、奴が剣を引き抜き、こっちに向かってきた。私は祠の中に入り、扉を閉めた。

 祠は私が身体をかがめて、やっと入るぐらいの大きさだった。どこかに秘宝があるはず。私は秘宝を探した。奴は外から剣を祠に打ち付けてきた。どうやら祠はかなり頑丈に出来ているらしく、簡単には切れなかった。秘宝は…有った!私は、慌てて秘宝を身につけた。その時、嫌な音が聞こえた。まずい、奴が撃ってくる。私は慌てて祠から出た。

 奴は胸から光線を出し、祠は消し飛んだ。私は祠があった場所の近くで、横だえた。奴がこっちに来る。

”私はミラクルブレスレットのナビゲーションシステムです。あなたを使用者として登録します。”

 心の中に声が響いてきた。奴は剣を私に向かって振り下ろした。辛うじてそれを避けた私。

”付加能力は何になさいますか?”

”洗脳の解除を”

”わかりました。しばらくお待ちください。”

 早くして、早く!死んじゃう!奴はこの間も、剣を何回かこっちに振り下ろしてきた。だんだん、避けきれなくなってきた。肌が傷つくこと数回。

”設定が終了しました。使うにはブレスレットに手を触れて、使う相手を念じてください。”

 私は奴が剣を振りかぶるのと同時ぐらいに、ブレスレットに触れた。すると、ブレスレットは光を発する幻に変わり、奴の方へ飛んでいき、奴の後頭部に張り付いた。奴は剣を振り下ろして、私の首を切る寸前で動きが止まった。

”相手はブレスレットが後頭部に張り付くと、心の自由が奪われ、あなたを見つめることしかできなくなります。後は、付加能力が起動します。以上です。”

 わかった…。

 はあ、何とか助かった。その時、突然、オールバックの金髪をした黒い背広姿の男性が現れ、パワードスーツ姿の男を連れて、消えた。逃げた!ブレスレットは男が消える直前に戻ってきた。

”シャルファーレンスさん。”

”はい。”

”疲れた。死ぬところだった…。”

”お疲れさん。でも、あの宇宙船に侵入してきた奴、何か、嫌な予感がする。”

”嫌な予感?”

”そう。この星がある宇宙には、宇宙規模の犯罪組織があるのよ。”

”犯罪組織??”

”うん。以前、その構成員を追っ掛けてたことがあるんだけど。組織の構成員、もしくは関係者かも…。”

”そう…。それより、宇宙船、動ける?帰りたいんだけど、疲れちゃって。服もビリビリだし。今から、下山するの、危険な気がする!”

”ハルに聞いてみる。…なんとか、低速なら動けそう。十分ぐらい、待って。”

”わかった。待ってる。”

 星空が見える。地球とは違う星空だけど。でも、山頂だから綺麗…。

 少ししたら、宇宙船に転送された。私は寝た。


 翌日、私は地球に帰った。東京では、妹を含む、三十人ぐらいのパワードスーツを纏った人が、街を破壊していた。私は妹を探した。妹は新宿の繁華街を破壊していた。私は妹の前に行き、ブレスレットに手を当て、妹を念じた。ブレスレットは光となって妹の後頭部に張り付いた。妹の動きは止まり、私は妹にキッスをした。妹の身体は虹色に輝き、妹は元の姿に戻った。

「美波、美波!」

「あ、あれ?おねい…おねいちゃん?だっけ」

「そう。真帆!大丈夫?」

「うん、大丈夫。だけど、疲れた…。寝たい。」

「家まで送る。いこ。」

 電車は動いてなさそうだな…。取り敢えず、転送してもらうか。妹はウトウトしてる。二人を転送してもらって、宇宙船に乗った。その後、宇宙船は千代田区付近に着き、実家の玄関前に転送してもらった。この家、久しぶり。

 私はチャイムを鳴らした。

「はい。どなたでしょう?」

 お母さん…。

「済みません。佐々木麗奈と申しますが、美波さんをお連れしました。」

「あ、済みません。」

 玄関のドアが開いた。

「ありがとうございます。」

 私は美波をあずけた。

「いえいえ。」

「あれ?真帆?」

 数秒の時間が過ぎた。

「御免なさい。死んだ娘に声が余りにも似てたもので。」

 死んで…ないんだけどな…。

 玄関の扉が閉まった。その後、私は町を破壊している人々を元に戻して回った。それが終わった頃、私のスマホが鳴った。森岡さんだ。

「はい。」

「おい。あれっから、繋がらなかったけど、どうした?」

 私は、今まで有ったことを説明した。 

「ばっかやろお!心配させんじゃねぇ!」

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