やっちゃった。
あ、あ!
ばっしゃぁぁぁぁぁん!
「あらぁ。」
「やっちゃった。」
スタッフは嘆いた。カメラマンは駆け寄った。プールにダイブした4Kビデオカメラと三脚を必死で拾い上げた。私が休憩中、プールサイドで三脚に躓いた挙句に三脚の脚蹴飛ばして、倒しちゃったから…。今、新しい私のイメージビデオ、製作中なんだけど…。
「どうすんだ、これ!防水処理なんてしてないんだぞ!」
「す、済みません。」
カメラマンさんはカメラのファインダーを見た。
「駄目だ、こりゃ。使えん!」
彼はカメラを操作してみたが、どうも動きそうもない様子。
「…ごめんなさい…」
「弁償だな、弁償!百万ぐらいしたかな…。」
「え!」
撮影は完全に中断した。結局、代わりのカメラを借りてきて、撮影は続行された。終わった後、私は社長に呼び出された。
「うーん、困ったわね。カメラの修理代、請求が来てるわ。」
社長は言った。
「…はい…。」
私はうなだれた。
「今回は大目に見て会社で立て替えるけど、今後は気を付けなさいね。」
「…はい…。」
翌日、私はまた、プールでイメージ、録る仕事をしていた。今度は注意して三脚の周りを歩いた。ふー、何とか、事故なく終わった!プールサイドを歩いていると、坂崎さんがイメージを録り始めていた。私は嬉しくなって、近寄った。
「坂崎さーん!」
あ!さ、三脚が…。
ばっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!
私はまた、三脚の脚を蹴ってしまった。
………
「昨日の今日よ。」
社長は言った。
「はい。」
「さすがに、これは私でもちょっとかばい切れないわ。」
「はあ。」
「二週間、謹慎してなさい。当然、お給料はその分、下がります。後、修理代、分割で良いから、払いなさい。良いですね。」
「はい。」
私は帰路に着いた。二週間、謹慎…。給料、減る。あーあ。私が、悪いのかな…。うーん、良く判んない。考えるの止めよう。その時、スマホが鳴った。あれ?森岡さんだ。何だろ?
「はい。」
「佐々木さん、今、大丈夫?」
「はい。」
「これから、警視庁へ来れる?」
「はい。」
私は霞が関に向かった。何の用だろ。前に使った小会議室に入った。
「暑い中、ご苦労さん。」
「何です?」
「課長が用、あるそうな。」
「はあ。」
「すぐ来ると思う。あ、宮野と話せたよ。」
「そうですか。良かったです。」
「最初は案の定、”首なんか切られちゃってすみません、私なんか、ほっといてくれれば良かったのに”とか言い出して。」
「はあ。」
「”私なんか、死んじゃった方が良かったんです”って、おいおい、せっかく助けたんだろって言う…。」
「ははは。」
その時、課長が入ってきた。
「あ、課長。」
森岡さんが言った。
「どうも。森岡から宇宙の穴?の話は聞かせてもらいました。何でも宇宙の犯罪者が今後、地球にもやって来るんじゃないかと言う。」
「はい。そう言う話を、この身体の元の持ち主はしていました。」
私は言った。
「課長、まさか、また、何か起こったんですか?」
森岡さんが聞いた。
「ああ。今日、富士五湖の一つ、西湖の湖畔で起きたことなのだが、首なし死体が見つかった。」
「え!」
「しかも、首が見つからないのだ。湖底に沈んだか、それとも…。」
「アクエアイ(水難救助用ソナー)での捜索はしたんですか?」
「いや、まだらしい。」
「うーん、猟奇殺人ですね。地元の警察は何と言っているんですか?」
「山梨県警の話では、聞き込みを行うと変な話を聞いたらしい。」
「変な話とは?」
「巨大な鳥のようなものが人の首を食いちぎったと言う話だ。」
「怪しいですね…。」
「そこでだが、捜査してきて欲しい。」
「え!管轄外ですが。」
「いや、もし本当に宇宙の犯罪者がやってくるのであれば、我々だけで対応するのは難しくなる。どうしても佐々木さんの助けが必要となる。そこでだ。実は、既に警察庁にまで話はいっているのだが、捜査一課に特殊捜査班を設立する。暫くは、森岡、君が佐々木さんと二人でこの班の捜査を行ってくれ。」
「は?!私がですか!?それは…。」
「佐々木さんも、彼女の能力を知る人は少ない方が良いと思う。森岡も宮野が復帰するまで、相棒がいないわけだし。佐々木さんは経験が無いけど特殊能力がある。森岡は経験もあるし、頭も切れる。良いバディになれると思うんだが。」
「はあ。判りました。」
森岡さんは承諾した。
「佐々木さんは、大丈夫ですか?」
課長は聞いてきた。
「あ!え!大丈夫だと思います。」
「多分、謝礼も出せると思います。」
それは有り難い!何しろ収入が激減しそうだ。
「じゃあ、そう言う訳で、よろしく。」
「よろしくお願いします。」
私は頭を下げた。
「今から、西湖行くけど、仕事大丈夫なの?」
森岡さんが聞いた。
「え!ええ。大丈夫です。」
さすがにミスって、謹慎中とか言えない。
二人は車に乗り、西湖に向かった。
”いかのこのこのここしとんとん”
何だ?この曲。森岡さん、運転するのに、こんな曲聞いてるんだ。
「そう言えば、佐々木さんの技、何だっけ、イントゥ・プ、プロ…。」
森岡さんが運転しながら聞いてきた。
「イントゥ・プベティ?」
「それ!何とかならない?変な感情、湧いてくるんだけど。」
「済みません。何か、私の近くにいると敵味方関係なくかかってしまうらしくて。」
「困ったな。あれだと犯人逮捕なんてできない。」
「済みません。」
車は西湖に行く前に、富士吉田警察署に寄った。
「特殊捜査班の森岡と申しますが、西湖の首無し死体に関する件について、お聞きしたいのですが。」
「山梨県警の小西と申します。警視庁の方ですね。お世話になります。死体は湖畔で見つかりました。被害者は男性、服装や背格好から金森敏夫四十二歳と推測。死亡日時は八月二十四日十七時頃。周囲には大量の血痕があり、この場所で殺害されたと考えられます。では、現場に行ってみますか?」
「はい。」
森岡さんが答えた。私たちは車に乗り、西湖に向かった。
「ここが死体が見つかった現場です。血痕はある程度取り除きました。」
”ギャアァァァァァァ”
奇怪な鳴き声のようなものが響いた。
「何ですか?あれ。」
森岡さんが聞いた。
「それが…判らないんですよ。これは、本当かどうか定かではないのですが、大きな鳥のようなものを見たという目撃証言が得られてます。」
小西さんは説明した。
「大きな鳥ですか。」
森岡さんが呟いた。何か怪しい雰囲気が湖畔を包んでいた。
湖畔に一人の男性が佇んでいた。湖をじっと見ている。
「あれは、誰です?」
森岡さんが聞いた。
「ああ、あれは芦沢さんと言う、古生物学者だと思います。この辺では有名らしくて、私もこの捜査中に話を聞きました。」
小西さんは言った。
「古生物学者?」
「はい。何でも、”富士樹海の近くに古代の恐竜の類が眠っている”と言っているらしいです。」
「はあ。ちょっと怪しい証言ですが。ところで、アクエアイによる消失した死体の首の調査って、やったんですか?」
「いえ、まだですが…やった方が良いですか?」
「一応。事件の手掛かりが隠れてる可能性がありますから。」
「判りました。ボートとアクエアイの準備をします。」
小西さんは私達を残して、調査の準備をしに行った。その時、芦沢と言う人が近づいてきた。
「西湖に入るんですか。」
芦沢と言う男が聞いてきた。
「はい。」
森岡さんは答えた。
「止めといた方が良いと思います。」
「何故です?」
「この湖には恐竜がいます。」
芦沢と言う男は、そう言うと去っていった。
「はあ。」
私たちはライフジャケットを着てボートを出した。小西さんがボートを漕いでいる。湖面は穏やかだった。森岡さんはスマホを操作した後、アクエアイと呼ばれるソナーの機械を湖水の中に入れた。そして、スキャンが終わったらしく湖水から出し、見ていた。その後、また機械を湖中に入れた後、暫くすると湖中から出して見た。
「何か、いますね。動いている。でも、魚ではなさそうです。もしかしたら、人間より大きいかも。」
一同、顔をしかめた。まさか、恐竜、いないよね。その時、大きな影が水中から上がってくるのが見えた。ボートの前のあたり。
”バッシャーーン”
大きな音と同時に波が立ち、ボートが揺れた。水中から一・五メートル程の爬虫類の頭のようなものがボートの前に現れた。
「キャーーー!」
私は悲鳴を上げた。小西さんは慌ててボートを引き返し始めた。頭はゆっくりとであるが。ボートを追ってきた。そして、徐々に湖面から上に上がっていた。
「佐々木さん、しっかりしなさい!能力があるんでしょ。こういう時の為のあなたの筈です。」
「でも、でも、でも。」
「ばっきゃろー!何怯えてやがる!しっかりしやがれ!」
森岡さんは私の襟を掴んで、揺さぶった。私は何とか恐怖心を抑え、考えた、やっぱり、ハルに言って、バイオアーマーを出してもらうしかないか。
”シャルファーレンスさん。”
”はい。”
”バイオアーマーを出したいんだけど。”
”宇宙船、そっちに行くまで、五分ぐらいかかるわ。待ってて。”
「森岡さん、大丈夫です。今、宇宙船を呼びました。五分後に来るそうです。」
「そう。」
森岡さんは襟から手を離した。
「手はあるの?」
「はい。私が乗り込む巨大バイオアーマーと言うのがありまして、それを使えば何とかなると思います。」
「わかった。任せる。」
ボートは何とか岸に着いた。爬虫類の大きな頭は、その長い首を湖面から上に見せ始め、五メートル程の高さになった。
”ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ”
頭は大音量で鳴き声を上げた。
”真帆。転送可能な領域まで来たわ。バイオアーマーに乗れるわよ。”
”わかった!転送して。”
私は宇宙船に転送された。そして、バイオアーマーに乗り込んだ。
「バイオアーマー出撃。船底ハッチオープン、船底ハッチオープン。バイオアーマー固定具解除。」
「佐々木麗奈、ボッコちゃん、出る!」
バイオアーマーはサン・レイクと言うホテルを背にして湖畔に降り立った。その時、青木ヶ原樹海の中から、大きな鳥の様な生物が出てきた。
”ギャアァァァァァァ”
全長六メートルぐらいあるだろうか、その生物はバイオアーマーに向かって飛んできて、バイオアーマーの頭に掠った。
痛!もう!早く片付けるか。
「イントゥ・プベティ」
「バーニング・ラブ」
あれ?効いてない気が。まだ、どっちも動いてる。私に見惚れてはいない。恐竜だから効かない?まさか!宇宙人や宇宙生物には効いたはず。どうゆうこと?
湖中から首を出してる奴が、火を吹いた!私、慌てて避けた。大きな鳥みたいな奴は光線をこっちに向かって吐いた。バイオアーマーの手に掠った!痛!
”彼ら、本当に生物かしら?”
シャルファーレンスさんが言った。
”え!?”
”イントゥ・プベティは本能を持っていれば、確実に効くわ。それが効かないとなると、生物じゃないという事になる。”
”じゃあ、どうすれば良いの?”
”待って。考えるわ。”
湖中から首だしてる奴が前、鳥みたいな奴が後ろに回った。まって、これって、挟み撃ち!?
二匹、同時に炎と光線を出した。あ!っという間に私はこけた。
ざっぱーーーん!
湖水につかる私。その結果、双方が双方を攻撃し合った。鳥のような奴は火だるまになった。湖水から頭を出してる奴は、光線を反射して横に弾いた。光線の当たった部分が銀色に光ってる。鳥のような奴は飛びながら炎を消したようだが、全身銀色になった。私は起き上がった。
”これで確定ね。奴ら、ロボットよ。とすれば、コンピュータで動いている可能性が高いわね。”
”どうするの?”
”方法があるわ。ミラクルウィルスと言う技があって、相手のコンピュータを狂わせることが出来るわ。”
”判った。また、囁くの?”
”そう。”
「ミラクルウィルス」
すると私の身体とバイオアーマーが七色に光り輝きだした。
”後は、どちらかにあなたやバイオアーマーの指が触れれば、ウィルスに感染するわ。それで、発症のタイミングは、あなたのウィンクを見ることよ。”
”え!?また…。”
何だろう。この能力の発想と言うか、センスと言うか、何処か、使う時のジェスチャーやスタイルが変な方向に偏ってる。
あー!仕方ない!割り切って、やるしかないわ。私は、首を出している奴に炎を避けながら近づき、指で触れた。そして、二体にウィンクした。すると、二体とも動きが止まり、鳥のような奴は墜落し、湖水から首を出していた奴は、沈んでいった。
その時、樹海の地中から、先端に巨大なドリルの様なものを付けた銀色の戦艦の様な長さ百五十メートルほどのものが出てきた。同時に、富士山が噴火し始めた。戦艦の様なものは、空中に浮かび、こっちに向かってきた。
”あの船、二体のロボットを操ってた可能性があるわね。多分、ウィルスに感染してるわよ。ウィンクしてみなさい。”
戦艦の様なものは、湖の上で静止し、ドリルの様な部分を切り離して、私に向かって発射してきた。私はウィンクしてみた。すると、二つとも西湖に落下して沈んでいった。
”中に入って、調べた方が良いわよ。何処の星から来たのか、目的は何か。”
私はハルに言って、戦艦の様なものの中に転送させてもらった。しかし…。
”何か、警報ブザーの様なものが鳴ってる。”
”え!?まずいわ。転送してもらって!”
私は宇宙船に転送してもらった。その直後、爆音と共に西湖に水柱が上がった。
私は地上に戻った。森岡さんが駆け寄ってきた。
「凄かったな。」
「はい。結局、犯罪者の船、自爆しちゃったみたいで、情報、得られませんでしたけどね。」




