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アンデットーン

 翌日、私は漫画雑誌の表紙とグラビアの撮影を午前中に終えて、事務所に戻ってきた。

「おはよう。」

 事務所のフロアに坂崎さんがいた。

「おはようございます。」

「あー!敬語!」

「あ、済みません。」

 何故だろう。この人には、昔から敬語で話していた。そんな気がしてしょうがない。

「だからぁ。ま、いいや。お昼は?」

「これからです。」

「じゃあ、行こ!」

「はい!」

 私たちはエレベータに乗った。

「ポールで良い?」

「はい。」

「あそこ、フランスパン美味しいのよね。美味しいからついつい食べ過ぎちゃう。」

 エレベータの扉が開いた。外はまだ暑い。

「あつー!早く行って、店入ろ。」

 私たちは早足になった。でも、余計暑くなってきた。しかし、地下鉄六本木一丁目駅に向かう右カーブを曲がるあたりで、突然、坂崎さんが姿を消した。

「あ、あれ?坂崎さん?」

 私は周囲を見回した。彼女の姿は全く見えない。まさか、転送??私は、そう思い付いて、シャルファーレンスさんに聞いてみた。

”ハルに聞いてみるわ。もし、転送が行われたなら、次元の扉の開閉の痕跡があるはず。”

 私は日差しが照り付ける中、暫くシャルファーレンスさんの返答を待った。

”転送よ。間違いないわ。私たちと同じ方法で転送を行った痕跡があるわ。転送先もわかったわよ。行ってみる?危険かもしれないけど。”

”行きます。坂崎さんの為だもの。”


 私、坂崎由愛。何?何が起こったの?ここは誰?私は何処?何か薄暗いところにいる。何か見えない壁のようなものに囲まれていて出れない。

「ありえなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」

 私の絶叫は空しく消えていった。どうも、ここにいるのは私だけじゃないみたい。見えない壁の向こうに、何人か人影が見える。

 向こうから、不気味な人影が歩いてくる。頭のてっぺんは尖っていて、何か触覚のようなものが付いている。身体全体は灰色で、肩から胸元のあたりに茶色っぽい毛のようなものが生えている。どう見ても、これは怪人。

 怪人が近づいてきた!よく見ると、顔には鼻も口も眉もなく、十時に黄土色の線があって、その線の上を三つのでかい目玉が動いている。気持ち悪!その怪人が、二人、私に近づいて、何やら注射のようなものをしてきた。

「あり、あり、ありえなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」

 私は再び、絶叫した。その時、怪人が歩いてきた方向に、見覚えのある人影が現れた。

「麗奈ちゃん…。助けて!!」


 私、佐々木麗奈。ここは…。

”どうも、宇宙船の中らしいわね。”

 坂崎さんが捕まってる。他にも人がいるみたい。助けなきゃ。坂崎さんの近くにいる不気味な人影がこっちを見た。と言うか、一つの目玉だけがこっちの方向を見てる。気持ち悪。

”あの生物、見覚えがあるわ。”

 え!?どゆこと!?

「イントゥ・プベティ」

 私は囁いた。不気味な奴らの動きが止まった。

「バーニング・ラブ」

 薄暗かった場所が一瞬、光で満ちた。その後、奴らは私を見ている。これでもう、悪さはできないでしょ。私は奴らの目玉を見ながらこう念じた。”捕まえた人間たちを解放しなさい。”

 坂崎さんや捕まっていた人間たちは、私と一緒に宇宙船の外に出た。宇宙船は目に見えなかった。私は奴らの目玉を見て、こう念じた。”宇宙船の偽装と解きなさい。”

 宇宙船は揺らめいて、その姿を現した。私は”バーン・イントゥ・メモリー”と囁いて元の姿に戻った。

「円盤…。」

 私は呟いた。

「麗奈ちゃん、凄いのね。光の園の妖精とか、一緒にいるの?」

 坂崎さんが聞いてきた。

「いえ、そういうわけでは…。」

 その時、低い気持ち悪い声が響いた。

「アンデットーン」

 何?これ?

 その時、宇宙船の中央部に黒い風船のようなものが膨らみ始めた。直径三十メートルほどになった時、それは破裂し中から、身長三十メートル程の人型はしているが、頭には黒光りするメタリックなシカのような角、昆虫のような顔中央には縦に走るオレンジ色に光る縦に大きく開いた口のようなもの、全体的に黒っぽい身体にオレンジ色の筋が何本か入っている。

”ねえ、シャルファーレンスさん、何か巨大な生物が出てきちゃったけど、どうするの?”

”大丈夫よ。身長二十五メートルのバイオアーマーがあるわ。それを使えば、戦えるわよ。”

”え!?”

”取り合えず、あなたを宇宙船に転送するわね。”

 私は宇宙船に転送された。

”宇宙船の下の階にバイオアーマーがあるわ。ハルに案内させるから。”

「この部屋の奥にあるターボリフトにお乗りください。」

 ハルが言った。

「ターボリフト?」

「エレベータの一種です。」

 私は部屋の奥に進んでいった。するとエレベータのような小部屋の扉が開いた。私が中に入ると扉が閉まり、自動で動き出した。そして、扉が開くと物凄く広い部屋に出た。天井も高く三メートル以上ある。何か、巨大なものが横たわっている。

「バイオアーマーです。あなたが操縦することができます。」

「操縦って…私、自転車すら運転できないけど。」

”大丈夫よ。神経を接続するから、自分の身体を動かすように、操作できるわ。”

”ふーん、良く判んないけど、何かわかった。”

”バイオアーマーはあなたの身体の細胞を基礎としているので、シンクロさせる必要もないし、皮膚細胞は強化されているので、安心よ。”

”どうやって、搭乗するの?”

”頭の部分に乗り込むの。髪の毛がついてる部分を外すことができるわ。そこから乗り込むの。内部は慣性制御ができるため、格闘時の衝撃はある程度、吸収されるわ。”

”わかった。”

”ハル、彼女を乗せてやって。”

「わかりました。今、搭乗ハッチを開きます。」

 巨大なバイオアーマー?の頭が開かれた。よく見ると、このバイオアーマー、巨大だけど私の姿に似てる。服装も。

「搭乗ください。神経接続及び体位を固定します。」

 私は頭の中に入って行った。するとマジックアームのようなハルの手?が伸びてきて、私の背中をベルトを使って固定し、首から背中と両耳のあたりに何かを張り付けた。私の手足は自由に動く状態。

「メインモニーターオン。バイオアーマー起動。」

 ハルの声が響いた。私の前面にある画面が点き、周囲の映像が見えた。まだ、宇宙船の中だ。

”このバイオアーマー、名前あるの?”

”いいえ。”

”じゃあ、名前付けていい?”

”良いわよ。”

「バイオアーマー出撃。船底ハッチオープン、船底ハッチオープン。」

 今まで、横になっていたバイオアーマーが、床になっていた部分が開き戸型の扉となって下に開いたことで、足を下にして立つ状態になった。

「バイオアーマー固定具解除。」

「佐々木麗奈、ボッコちゃん、行きまーす!」

 バイオアーマーは地上に降り立った。どうも、浜離宮庭園の端にいるらしい。巨大生物が見える。自衛隊の攻撃機らしいものも二機、飛んできた。巨大生物の角がオレンジ色に一秒ほど光った。そして、それが消えると口らしき部分からもの凄い速度の火球を吐き出した。火球はこっちに飛んできた。

”危ない!避けて。”

 シャルファーレンスさんは言ってきた、私はそれを何とか避けた。火球はビルに当たり、大爆発を起こした。

”安全だって言ったじゃない!”

”今のは無理。当たってたら、身体が炎上してたわ。”

”どうやって戦ったらいいの?必殺技とかあるの?”

”能力は今のあなたとほぼ一緒よ。”

”え!?あー…。”

”あなたがここで囁けば、効果が出るわ。”

 何か、凄い話。じゃあ、あの巨大生物にキッスするわけ…。えーい、もう自棄だわ。お腹も空いたし早く片付けよ!

 自衛隊の攻撃機は巨大生物を攻撃した。しかし、巨大生物に当たる直前でまるで透明な壁に当たったように、爆発した。巨大生物はまた火球を吐き、直撃は避けたようだが自衛隊機を撃ち落とした。操縦士はパラシュートで脱出したようだった。

「イントゥ・プベティ」

 私は囁いた。

「バーニング・ラブ」

 一瞬、光が周囲を満たした。巨大生物の動きが止まった。私を見てる。フィニッシュね。私は巨大生物に近づきキッスをした。巨大生物は七色に輝き、大量の薔薇の花に変わった。ふー、終わった。あ、何か地面が動いてる。そうか、今奴らの宇宙船の上にいるんだ。逃げるつもりかしら?そうはさせない!

”シャルファーレンスさん。奴らの船の操縦室、判る?”

”うーん、恐らくだけど、判るわ。”

”じゃあ、そこにハルに頼んで私を転送させて。”

”わかった。バイオアーマーは機能を止めて回収してもらうわね。”

 私は背中と両耳についていたものを外し、ベルトを外した。暫くすると私は奴らがいっぱいいるところに転送された。奴らは私を見つけるとその動きを止めた。

”イントゥ・プペティは、彼らにも効いているはずよ。”

 そうか。私、今、下着姿なんだ。もう良いわ。なんでもありよ。私は奴らの一人の目玉を見てこう念じた。”宇宙船を太陽に衝突させなさい。”

”あ!!まあ良いけど”

”シャルファーレンスさん?”

”うーん、本当は彼らの母星とか突き止める必要があるんだけど…まあ、私、心当たりあったしね…。”

”ええ!?”

”うん、私の母星、ファジス星の一種族で早くから遺伝子操作を始めて、人工的に進化していった連中。”

”ふーん。”

”だから、ファジス星の仲間に連絡しておくわ。でも、今度からは気を付けてね。”

”はい。”

 その後、私はハルに地上に転送させて貰った。円盤は飛んで行った。私は”バーン・イントゥ・メモリー”と囁いて元の姿に戻った。遠くから、坂崎さんが駆け寄ってきた。

「麗奈ちゃん、あれ麗奈ちゃんでしょ。本当に光の園の妖精とか、一緒にいたりしない?」

「うーん、それはこういう事情なの。」

 私は歩きながら飛行機事故の事を話した。坂崎さんも歩きながら聞いていた。

「そう…。それは大変だったね。じゃあ、その後、家族とも会ってないんだ。」

「はい。妹とは連絡を取ったんですけど。」

「この事、社長や篠原さんは知ってるの?」

「いえ、言っても信じてくれなそうだから…。」

「そうか…、あ!今、何時だろ?えーと、午後一時!まずい、昼休み、終わっちゃう。もう、食べには行けないな。どうしよっか。コンビニで済ます?」

「はい。」


 二人がコンビニに入って行った後、見えない宇宙船が一隻、日本にやって来た。

 中から出てきた生物は、まるで鬼のような姿をしていた。

「*&#%@¥$=」

 何か聞き取れない言葉を話したかと思うと、その生物は闇の中に消えていった。


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