サービスエリアの女戦士④
背後で燃えているサービスエリアの建物。今日は立ち寄らなかったが、その館内に必ずといっていいほど、いや必ず備え付けられているお土産コーナーがある。鴻池がドラゴンに向けて構えているマルガリテスは、土産物として売られている剣のキーホルダーにそっくりだった。一つ違うところといえばサイズだけ。その他の装飾や、謎の紋章が刻まれた鞘など、すべてがキーホルダーそのままだ。
「その剣、お土産のやつじゃん!」
「お土産?何言ってんのかさっぱりっす。私は神に選ばれた戦士で…」
「そっか、女の子は剣のキーホルダーとか興味ないんだもんな。そりゃ売ってても見ないか。鴻池さんの持ってるそれね、男子なら小学生の時に必ず親に買ってもらう定番のお土産なんだよ」
どこの地方に行っても売っており、特に場所によって特色があるわけでもない。全国どこでも似たようなデザインのものが販売されており、全男子小学生の心をわしづかみにしたアイテムだ。
竜馬も家族旅行に行くたび、旅先で毎度のように剣のキーホルダーを買ってくれと親にねだっていた。北海道、沖縄、京都。現地ならではの土産もたくさんあるだろうに。幼き日の竜馬は一目散にキーホルダー売り場へと駆けていたものだ。
「懐かしいなあ」
「さっきからふざけてるんすか?私のマルガリテスは聖剣なんすよ、聖剣!ドラゴンの炎を斬ったの見たっしょ!」
どうしても聖剣ということにしたいらしく、鴻池は竜馬の発言を撤回させようと必死だ。
「もーいいっす、役立たずはそこで黙って見ててください。サクッとあいつ、倒してきますから」
小さな舌打ちとともにそれだけ言うと、鴻池は足の筋肉をばねにして跳躍した。跳んだというか飛んだに近いだろうか。鴻池が地面を離れてからわずか数秒後、彼女の体はドラゴンの頭とほとんど同じ高さにまで上昇していた。
「おらぁ!」
鴻池の一太刀は、見事に炸裂した。牙を剝きだして鴻池に噛みつこうとしていたドラゴンは頭を真っ二つに裂かれ、何が起きたのか分からないといったふうに眼球をさまよわせたあと、ぐしゃりと地面に崩れ落ちた。
「わあ、お見事」
「聖剣っすからね。これくらい余裕」
そもそも聖剣とはなんのことだ。そういうのは岩に突き刺さっていて、選ばれし勇者しか抜けないとかではないのか。
鴻池はマルガリテスを鞘に収めると、奇跡的に炎上を免れていた自販機に小銭を入れ、最近値上げしたばかりの炭酸飲料を購入した。竜馬の分を奢ってくれる気はないらしい。
「あー…その、改めて助けてくれてありがとう、鴻池さん。あれ、俺自己紹介したっけ」
「別に興味ないんで、名前とか聞く気ないっす」
ぷしゅ、という爽やかな音を立ててボトルの蓋を開け、鴻池が中身を一気に3分の1ほど飲みほした。火を噴くドラゴンとの戦闘は喉が渇くのだろう。




