サービスエリアの女戦士③
「えっと、一応助けてくれたってことでいいのかな。ちょっと乱暴なやり方だった気はするけど」
「命を救った相手にクレームっすか。あのままタバコと一緒に灰になればよかったのに」
「いやごめんなさい、ほんと助かったよ。お姉さん、お名前は?」
「鴻池っす」
「下の名前も教えてもらえると…」
「初対面の女相手に普通そこまで聞きます?」
鴻池は顔こそ垢ぬけきっていない女子大生のような風貌だが、口から放たれる言葉は容赦がない。昨日飲み過ぎたというのは本当らしく、顔に若干のむくみが見られる。
だがそれよりも竜馬の目を引いたのは、彼女が持っている武器だった。
「鴻池さん、そのピカピカ光る剣は一体」
「マルガリテス。私の愛剣っす」
名前を聞いているわけではないのだが、誇らしげに剣を掲げられては何も言えない。鴻池は日本人女性の平均と同じか、少し低いくらい身長であり、マルガリテスの全長は彼女のつま先から脇腹あたりまである。つまりは持ち主に対して剣がでかすぎるのだ。
そして何より竜馬が気になったのは、そのデザインだ。柄と刀身の間には、竜の翼があしらわれたような装飾がついており、中心には美しいエメラルドがはめ込まれている。
「どっかで見たことあるんだよな。なんだっけ、絶対知ってる。初めて見た気がしないもん」
「ナンパにしては古典的な手段すぎっすよ」
「違う。見たことあるっていうのは鴻池さんじゃなくて、その剣のほう」
「マルガリテスを?まったく失礼な。この子を市販品扱いっすか」
「だって絶対どっかで売ってるの見たもん」
「売ってないって!」
「待って、今思い出すから」
鴻池は待ってくれるが、ドラゴンには言葉は通じない。窮地に立たされていることを忘れて気の抜けた会話をしていると、ドラゴンの炎が再びこちらへ向けて放たれた。
「いいっすよ、見ててください。市販の剣にこんな事ができますか!?」
鴻池がマルガリテスを振り上げ、襲い来る炎に向かって斬りつけた。
「はあああっ!」
酒ヤケが原因だというハスキーボイスで叫ぶ鴻池。まるで彼女が敵の攻撃を切り裂いたみたいに、2人の周りだけ炎が避けていく。
「どうっすか、マルガリテスの力は。舐めた口きいたこと、今なら謝らせてあげてもいいっすけど」
ニタリと笑って振り向いた鴻池は、皮膚が焦げそうな高温にも関わらず汗一つかいていない。
「い、今なにを…」
「ご覧の通り、炎を切り裂いただけっすけど」
「俺あんまり化学とか物理とか詳しくないんだけどさ。火って刃物で斬れるんだっけ」
「なにを当たり前のことを。できるに決まってるでしょ。聖剣マルガリテスならね」
鴻池が剣を掲げ、ドラゴンと対峙したその時だった。
「あ、思い出した!」




