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雷の英雄 ~手榴弾一万発から始まる異世界統一記~  作者: レモンティー


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第十三話 布告

「全住民に告ぐ! 今日より、尿の一滴、フンの一粒たりとも無駄にしてはならん! すべて国に納めるのだ!」王都の広場に、お触れ役の叫び声が響き渡った。

ガルバディス王国の全権を掌握したハルトが最初に放った命令――それは、敵国への宣戦布告ではなく、「排泄物の強制徴収」という前代未聞の奇法だった。

「……ハルト様、本当にこれで『天の雷』が増えるのですか?」内政を任された文官の青年、ルカが、鼻を実につまみながら哀れな目でハルトを見ていた。

彼の視線の先には、王都の美しい一等地に建てられた、数十棟もの巨大な木造小屋がある。

中には、大量の藁、落ち葉、そして王都中から荷車でかき集められた凄まじい量の人糞と馬尿が、幾重にも積み上げられていた。

ハルトが命じた「硝石丘法しょうせききゅうほう」による、手榴弾の核心たる『硝石』のバイオ大量生産工場である。

「ルカ、臭いを気にするな。

これが一年後には、大陸を震撼させる最強の爆薬に化けるんだ。

ほら、そこ、空気の入りが甘いぞ! もっとスコップで底からかき混ぜろ!」ハルトは現代のジャージを腕まくりし、中世の作業員たちに熱血指導を飛ばしていた。

作業員たちは、最初は「悪魔の儀式を手伝わされている」と怯えていたが、ハルトが提唱した『堆肥の定期撹拌かくはん』と『適度な水分補給(主に尿)』により、土の温度が目に見えて上がり、発酵が始まると、次第に目を輝かせ始めた。

「おい、本当に土が熱を持ってきたぞ!」「ハルト様はやっぱり本物の錬金術師だ!」しかし、量産への課題は臭いだけではなかった。

「報告します! 王都の陶器職人たちが『あんな頑丈で均一な形の泥壺、一日に十個も作れるか!』とボイコットを起こしました!」次に飛び込んできたのは、手榴弾の『容器』に関するトラブルだった。

当時の中世のろくろ技術では、ハルトが求める「一定の厚みで、爆風で綺麗に割れる陶器の球体」を大量生産することができなかったのだ。

ハルトはすぐさま職人街へ乗り込んだ。

頑固一徹な老職人が「魔法使いか知らねえが、職人のプライドを舐めるな」と腕を組んで睨みつけてくる。

ハルトはニヤリと笑い、現代の知識を取り出した。

「親方、ろくろで一つずつ作るから遅いんだ。

これからは『型枠かたわく』を使う」「型枠だと?」「そうだ。

石膏や木で作った割型の内側に、均一に練った粘土を押し付けるだけで、子供でも同じ形の球体が三分で作れる。

これを乾燥させて一度に百個焼き上げるんだ。

これを『ライン生産方式』と呼ぶ」ハルトが地面に描いた設計図を見た老職人は、ガタガタと震え出した。

「こ、これなら……熟練の技なんていらねえ。

見習いのガキどもだけで、一日千個は作れるぞ……。

あんた、職人の仕事を奪う気か!」「奪うステップじゃない、君たちには全体の指揮官になってもらうんだ。

出来高に応じて、これまでの三倍の給金を王室から支払おう」金と効率の話を聞いた職人たちは、手のひらを返して「ハルト様万歳!」と作業に取り掛かった。

さら三にドタバタは続く。

「ハルト様! 今度は子供たちが、王都中の錆びた釘やクズ鉄を拾い集めてきて、報酬のパンが足りません!」「王室の備蓄倉庫を開放しろ! 釘は手榴弾の周りにタールで貼り付ける重要部品だ、いくらあってもいい!」「ハルト様! 導火線用の綿糸をよる女性たちが、燃焼速度のテストで前髪を焦がしました!」「『一センチ一秒』の規則を徹底しろと言っただろう! 焦るな、安全第一だ!」王都は今や、一つの巨大な「手榴弾製造工場」へと変貌していた。

貴族たちは「排泄物を集める最高権力者」を陰で笑おうとしたが、毎日夕方になると、ハルトの元に数千個単位で届けられる、鉄釘がびっしりと巻かれた「中世版手榴弾」の山を見て、恐怖で完全に口をつぐんだ。

「よし……これで三千発は確保したな」数ヶ月後、工場の真ん中で、ハルトは完成した黒い球体を愛おしそうに撫でた。

発酵小屋からは、いよいよ純白の硝石の結晶が浮き出始めていた。

ドタバタの内政劇を経て、ハルトの「雷撃軍」は、名実ともに大陸最強の火力を手に入れつつあった。


ハルトは全国民に対し、

「尿の一滴、フンの一粒たりとも無駄にするな」

という前代未聞の布告を出す。

目的は火薬の原料となる硝石の大量生産だった。

王都では、

* 糞尿回収

* 硝石丘法による精製

* 手榴弾容器の量産

* 導火線製造

が国家事業となる。

当初は奇行として笑われるが、やがて大量の手榴弾が完成。

王都そのものが巨大な軍需工場へと変貌する。


だが、この王都の奇妙な大増産と悪臭の異様な噂は、ついに国境を越え、隣国の耳へと届いてしまう。

「ガルバディス王国が、糞尿を集めて怪しげな呪いの武器を作っているらしい。

今のうちに踏み潰せ」大陸最強を誇る、十万の無敵騎兵軍団を擁する『レグルス帝国』が、ついに重い腰を上げたのだった。

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