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残響の果てに  作者: 塩鯛


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2/16

第二話 十五年後の空

戦場は静まり返っていた。つい数秒前まで空を埋め尽くしていた閃光も爆発も消え失せ、高空を吹き抜ける風だけが薄く伸びた雲をゆっくりと西へ押し流している。黒煙を引きながら三機のヴォイドが地上へ墜ちていく。その光景を見下ろすように、一機のグレイヴァが夕焼け空へ静かに浮かんでいた。深緑の装甲には幾度もの戦場を潜り抜けた傷跡が刻まれ、その肩には今や伝説の中でしか語られない識別コードが残されている。Type-K。その姿は帰還した英雄というより、十五年前の戦争そのものが亡霊となって空へ現れたようだった。

「……何だ、今の」

ノアは無意識に呟いていた。誰かへ問いかけたわけではない。ただ、自分の見たものを自分自身が信じられなかっただけだ。三機のヴォイドは決して弱い敵ではない。通常なら複数機で包囲し、確実に追い込んで撃破する相手だった。それがわずか数秒で空から消えた。ノアは戦闘記録を呼び出す。映像を巻き戻し、もう一度再生する。さらにもう一度。だが結果は変わらなかった。敵が撃つ前に避けている。敵が動く前に回り込んでいる。敵が斬りかかる前に、その首を落としている。戦闘記録を見ているはずなのに、まるで種の分からない手品を何度も見せられているような気分だった。

「見えたか?」

ノアの問いに、イザベラは小さく首を振った。

「見えていたら苦労しないわ」

その声には珍しく戸惑いが滲んでいた。戦闘ログに異常はない。センサーも正常。計測装置も正常に動作している。異常なのは記録された結果の方だった。現代のグレイヴァもType-Kと同じく重力炉によって駆動する。重力と反重力の均衡を制御し、力場干渉によって空間を滑る技術は十五年前に生まれたものだ。しかし今モニターに映るType-Kの動きは、その理論を知る者ほど理解できなかった。機体が空を飛んでいるようには見えない。空間そのものがType-Kの進路を譲り、道を開いているように見えるのだ。

レオンは何も言わなかった。通信モニターに映る深緑の機体を見つめながら、遠い記憶を思い出していた。士官学校を卒業し、初めて実戦へ投入された日のことだ。敵に囲まれ、退路を失い、死を覚悟した。教本に載っていた戦術は何一つ役に立たず、自分はただ撃墜される順番を待つだけの存在になっていた。そんな戦場へ飛び込んできたのがType-Kだった。重力弾が敵を呑み込み、レーザーブレードが空を切り裂く。誰も前へ出られなくなった場所で、ただ一機だけが前へ進み続けた。兵士達はその背中を見て戦い続けた。だから生き残れた。カイ・マクレガーという男は、強かったから英雄になったのではない。彼が前にいると、人が恐怖を忘れたから英雄になったのだ。

通信回線が開く。

『こちらカイ・マクレガー。状況を説明してくれ』

静かな声だった。威圧感はない。声量も大きくない。それなのに自然と耳がその声を追ってしまう。不思議な響きだった。レオンは無意識に背筋を伸ばしていた。

「了解です、少佐。敵反応は残存九機。市街地へ侵攻中。到達予測は七分を切っています」

『了解した』

返答は短い。しかし、その一言だけで不思議と空気が落ち着く。焦りが薄れる。ノアもイザベラも同じだった。十五年間眠っていた男のはずなのに、誰よりも自然に戦場の中心へ立っている。それがどこか可笑しくて、同時に頼もしかった。

一方でカイ自身は奇妙な感覚を抱いていた。十五年という数字に現実味がない。昨日まで戦っていた気がする。事故も、警報も、白い光も、全て数時間前の出来事にしか思えなかった。だが目の前の世界は違う。軍の通信規格も違う。機体の細部も違う。街並みも違う。自分だけが時間という巨大な川から取り残され、流れ着いた漂流物になったような感覚があった。それでも戦場だけは変わらない。焼けた金属の匂い。張り詰めた空気。死が近い場所にだけ存在する静けさ。その全てが十五年前と同じだった。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

突然ノアが通信へ割り込んだ。レオンが眉をひそめる。

「何だ」

「いや、その……少佐、本当に十五年間寝てたんですよね?」

一瞬の沈黙が流れる。

『そうだが』

「全然そう見えないんですけど!?」

『俺もそう思う』

ノアは思わず吹き出した。イザベラも肩を震わせる。軍の教本や記録映像の中で見た英雄像とはあまりにも違う。もっと厳格で近寄り難い人物を想像していた。だが実際のカイは違う。肩肘を張らず、冗談を言い、それでいて誰よりも頼りになる。

「冗談を言う余裕はあるんですね」

イザベラが言う。

『そうらしいな。俺も安心した』

「何にです?」

『目覚めたら性格まで変わってたら困るだろ』

今度はレオンまで笑ってしまった。十五年という時間の重さを考えれば、本来もっと張り詰めていてもおかしくない。それなのにカイはどこまでも自然だった。その姿に、レオンは昔と変わらないものを見た気がした。

四機のグレイヴァが夕焼け空を並んで進む。Type-L、Type-N、Type-I、そしてType-K。重力炉が生み出す反重力によって機体は空中へ静止し、夕日に照らされた装甲が赤く染まっていた。その光景を見ながら、レオンはぽつりと呟く。

「本来、グレイヴァ隊は四機編成です」

『一機足りないな』

その一言で空気が少しだけ重くなった。ノアが視線を落とす。

「半年前です。ヴォイドとの戦いで」

イザベラが続けた。

「戦死しました」

夕焼けの赤が装甲を染める。その色はどこか血の色に似ていた。カイはしばらく何も言わなかった。名前を聞くこともできた。どんな人間だったのか尋ねることもできた。だが今は違うと思った。戦場で失われた命には、軽々しく触れてはいけない重さがある。

『そうか』

短い言葉だった。しかし、その沈黙の長さが何よりの哀悼だった。

『なら俺が入ろう』

レオンが小さく笑った。

「それが一番自然ですね」

失われた最後の一枚が埋まる。十五年という空白を抱えたまま、それでもグレイヴァ隊は再び四機編成となった。その瞬間、基地全域へ警報が鳴り響く。《敵接近》《ヴォイド九機》。赤い警告表示がモニターを染め上げる。前方の雲海の向こうから九つの黒い影が現れた。黒い装甲。赤紫の発光ライン。人型でありながら生物にも機械にも見えない異形。その姿は夕焼け空へ刻まれた傷跡のようだった。敵もまたグレイヴァ隊を認識したのだろう。九つのヴォイドライフルがゆっくりと持ち上がり、砲口へ紫色の光が集束していく。夕焼けの赤が少しずつ侵食されていくようだった。

「迎撃開始!」

レオンの号令が響く。四機のグレイヴァが重力場を変化させた瞬間、空がわずかに波打った。推進炎も爆音もない。ただ景色だけが揺らぎ、四つの機影が夕暮れの空を滑り始める。十五年前に途切れた時間が再び動き出す。その先に何が待っているのか、まだ誰も知らなかった。

挿絵(By みてみん)


九機のヴォイドは乱れなかった。仲間を三機失ったにもかかわらず、その編隊はまるで最初から欠けていたかのように再構築される。黒い機影が夕焼け空を滑り、互いの死角を埋めるように位置を変えていく様子は鳥の群れというより深海魚の群体を思わせた。一匹を殺しても全体は揺るがない。そんな不気味さがあった。

最初の一撃はヴォイド側から放たれた。九つのヴォイドライフルが持ち上がり、砲口へ集束した紫色の光が夕陽の赤を侵食していく。次の瞬間、空を裂いたのは光ではなく、宇宙の法則そのものだった。圧縮崩壊ビームが通過した空間は不自然に歪み、巻き込まれた雲が紙細工のように折り畳まれながら消滅していく。爆発はない。轟音もない。ただ存在が削り取られるだけだ。その静かな破壊は火薬よりも遥かに不気味だった。

グレイヴァ隊は四方へ散った。いや、散ったように見えただけだった。重力場の均衡が書き換わり、機体が空間の上を滑る。右へ、左へ、上へ、下へ。慣性に縛られた人間の感覚では理解できない動きだった。ノアのType-Nのすぐ横を紫色の光が通り過ぎる。警告音が鳴り響き、モニターへ損傷表示が浮かんだ。

「うおっ!?」

反射的に声が漏れる。その瞬間だった。

『右』

カイの声が飛ぶ。

考える前に身体が動く。Type-Nが横へ滑り、直後に二射目のビームが先ほどまでいた空間を貫いた。ノアは背筋を流れる冷たい汗を感じながら息を吐く。

「少佐、何で分かるんですか!?」

『勘だ』

「絶対違うでしょ!?」

『生きてるんだから正解だ』

通信回線に笑いが漏れる。戦場には似つかわしくないやり取りだった。だが、その軽口のおかげで恐怖が少し遠ざかる。レオンは苦笑しながら思う。昔もそうだった。敵に囲まれようが、絶望的な戦況だろうが、カイはこうやって部下を笑わせていた。

その頃にはType-Kが敵編隊の中心へ入り込んでいた。深緑の機体がわずかに傾いたかと思うと、次の瞬間には別の場所にいる。加速したようには見えない。移動したというより、空間そのものがType-Kの位置を書き換えたように見えた。イザベラは無意識に息を呑む。理論上は可能だ。だが現代のグレイヴァでは到底再現できない。十五年前の機体が最新鋭機を置き去りにしている。その光景は、過去が未来を追い越していくような奇妙な不安を感じさせた。

Type-Kの右腕が持ち上がる。グラビトンレールガン。砲身を囲む重力リングが青白く輝いた瞬間、景色が波打った。発射された重力弾は音もなく飛ぶ。ヴォイドは回避する。しかし避けきれない。脚部を掠めた瞬間、その部分が内側へ沈み込んだ。装甲が折れ、フレームが潰れ、黒い機体は見えない穴へ落ちていくように収縮する。爆発すら起きない。夕焼け空に残ったのは圧縮された空気が生む白い霧だけだった。

残る八機が即座に隊形を変える。四機が前へ出る。四機が後ろへ下がる。指揮官の存在を疑うほど洗練された動きだった。

「学習してるな」

レオンが低く呟く。

十五年前の記録に残るヴォイドより明らかに賢い。後衛から放たれた無数のビームが空を埋める。回避する場所そのものを消し去るための攻撃だった。獲物を追い込む狼の群れ。その冷徹さがあった。

「左から二機!」

イザベラの声と同時にType-Iからグラビドンミサイルが放たれる。青白い軌跡を描いたミサイルは敵機の背後で炸裂した。空間が沈む。重力場が形成される。捕らえられたヴォイドは脱出を試みるが遅かった。レオンの重力弾が胸部を貫き、黒い機体は夕焼け空の中で静かに潰れていく。

だが敵も止まらない。

前衛の二機がType-Kへ襲い掛かる。エクリプスブレードが展開され、紫色の光が夕空へ軌跡を描く。それに応えるように、Type-Kの右手にも緑色の光が灯った。

レーザーブレード。

二つの光が衝突した瞬間だけ、空に新しい太陽が生まれたようだった。

ヴォイドは速い。人類が十五年間積み重ねてきた戦術を学び、磨き上げた動きだった。しかしカイはさらに先にいた。敵の軌道を知っている。踏み込みを知っている。回避先を知っている。未来を見ているわけではない。だがそうとしか思えなかった。レーザーブレードが閃く。ヴォイドの首が飛ぶ。続く一機が背後へ回る。ヴォイドライフル。至近距離。死の一撃。

しかしType-Kの左腕が先に動く。

展開されたシールド前面で重力場が唸る。放たれたビームは命中寸前で軌道を捻じ曲げられ、夕焼け空の彼方へ逸れていった。

ノアは絶句する。

「そんなの反則だろ……」

『便利だろ?』

カイの声はどこか楽しそうだった。

次の瞬間、シールド前面の重力場が変化する。ヴォイドの機体が引き寄せられる。見えない巨人の手に掴まれたようだった。抵抗する。だが逃げられない。シールド下部から突き出したパイルバンカーが胸部を貫き、装甲も内部構造もまとめて粉砕した。

夕焼け空に黒い破片が散る。

戦闘は続く。しかし流れは完全に変わっていた。レオンの狙撃が敵を追い込み、イザベラの重力場が逃げ道を塞ぎ、ノアが食らいつく。その中心には常にType-Kがいた。誰かが命令したわけではない。それでも自然と全員がカイの動きに合わせている。十五年という空白があるはずなのに、不思議なほど噛み合っていた。

やがて最後の一機が残る。

そのヴォイドは初めて明確な意思を見せた。反転し、離脱を試みたのだ。

「逃がすか!」

ノアが追おうとする。しかし、その必要はなかった。

深緑の機体が前へ出る。

空間が揺らぐ。

次の瞬間には敵の眼前だった。

レーザーブレードが振り抜かれる。

緑色の閃光が夕暮れを横切る。

それだけだった。

ヴォイドの身体へ一本の線が刻まれる。やがて上下に分かれ、爆発と共に消えた。

静寂が戻る。

戦術モニターから最後の赤い光点が消えた。九機のヴォイドは全て撃墜された。だが、その勝利に安堵した者は誰もいなかった。夕焼け空は穏やかだった。あまりにも穏やかだった。その静けさは戦いの終わりではなく、嵐の前の海を思わせた。何かが来る。誰も口にはしない。だが全員が同じ予感を抱いていた。


挿絵(By みてみん)

九機のヴォイドが消えた空には、不自然な静けさだけが残っていた。戦闘が終われば安堵が訪れるはずだった。誰かが息を吐き、誰かが冗談を言い、張り詰めていた神経が少しだけ緩む。だが今は違う。夕焼けは変わらず美しく、西の空には茜色の光が広がっているというのに、その景色はどこか作り物めいて見えた。嵐の前の海がそうであるように、穏やかさは時として荒れ狂う暴風より不気味な顔を見せる。レオンは戦術モニターから目を離せなかった。敵反応は消えている。計器もそう告げている。それでも胸の奥に残る違和感だけは消えない。長く戦場にいると分かることがある。人間の勘は案外馬鹿にできない。そして嫌な予感ほど、よく当たる。

「待ってください」

通信回線に流れたイザベラの声は、その違和感へ輪郭を与えた。普段の彼女なら感情を表へ出さない。解析結果を淡々と告げるだけだ。しかし今の声には僅かな震えが混じっていた。

「新たな反応を検知」

レオンは即座に前方モニターを開いた。

「数は」

「三です」

少ない。だがイザベラの表情は少しも安心していなかった。むしろ逆だった。彼女は何度も表示を確認している。認めたくない結果を前にした時の癖だった。

「識別できません」

「何だと」

「データベースに一致する機体が存在しません」

その言葉を聞いた瞬間、勝利の余韻は跡形もなく吹き飛んだ。十五年間、人類はヴォイドと戦い続けてきた。出現した敵の情報は膨大な量が蓄積されている。未知の武装や戦術はあっても、存在そのものが不明という事態はほとんどない。だが今、モニターへ映し出されている三つの反応は空白だった。名前もない。分類もない。ただそこに存在しているという事実だけが表示されている。雲海の向こうに三つの影が現れる。それを見た瞬間、誰も言葉を失った。黒い。ただ黒いのではない。夕陽を浴びているはずなのに光を返さない。まるで夜そのものを削り出して形にしたような黒だった。全身を走る青白い発光ラインは血管のように脈打ち、その周囲では景色が揺らいでいる。熱による陽炎ではない。もっと根本的な何かだった。空間そのものが歪んでいた。

「何だよ……あれ……」

ノアの声は掠れていた。敵が強そうだからではない。本能が拒絶していた。人は火を恐れる。高所を恐れる。闇を恐れる。それらは理屈ではなく、生き残るために刻み込まれた感覚だ。今ノアが感じているものもそれに近かった。目の前の存在を理解できない。それなのに近付いてはいけないことだけは分かる。三機の新型ヴォイドは動かなかった。攻撃もしない。武器も構えない。ただ夕暮れの空に浮かんでいる。それだけなのに誰一人として視線を逸らせなかった。猛獣と向き合った時の恐怖ではない。崖の縁へ立った時とも違う。もっと根源的な何かだった。この宇宙に存在してはいけないものを見ている。そんな感覚が全員の胸を締め付けていた。

「重力異常反応を確認」

イザベラの声がさらに低くなる。

「周辺空間の重力値が変動しています」

レオンの眉が寄った。

「どれくらいだ」

返答はすぐには返ってこなかった。イザベラ自身が数値を信じられなかったからだ。

「理論限界を超えています」

誰も言葉を発しない。通常の重力炉では到達不可能な領域だった。現代のグレイヴァでも不可能。だが三機の周囲では現実に空間が波打ち、景色が揺らいでいる。海面へ石を投げ込んだ時のように、見えない波紋が空へ広がっていた。

その時だった。

カイの頭に激痛が走る。

夕焼け空が消える。

代わりに現れたのは炎だった。燃えている。都市が。空が。大地が。黒煙に覆われた世界の中で無数の機体が墜ちていく。砕けたグレイヴァ。沈黙した通信。積み上がる残骸。そして、その中心にいる三つの影。同じだった。青白い発光ライン。歪む空間。絶望そのものを形にしたような存在感。夢で見た。何度も。十五年間。終わることなく。

『逃げろ』

誰かの声が聞こえる。知らない声だった。それなのに胸が締め付けられる。

『勝てない』

通信が途切れる。赤い警報灯が世界を染める。白い光が視界を埋め尽くす。

「っ……!」

カイは思わず頭を押さえた。

「少佐!?」

レオンの声が飛ぶ。しかしカイは答えられなかった。もし夢が夢ではなかったとしたら。もしあの終わりのない戦場が未来の断片だったとしたら。目の前の敵は、人類がこれまで戦ってきたヴォイドではないことになる。三機の新型ヴォイドは依然として動かない。ただこちらを見ている。観察している。試している。値踏みしている。そんな錯覚を覚えるほど静かだった。やがて赤い発光ラインが脈打つ。その瞬間、空が揺れた。雲が裂ける。夕焼けの輪郭が歪む。警報が一斉に鳴り響き、コックピットを赤い光が染め上げる。

「重力異常反応急上昇!」

イザベラの叫びが響く。だが三機は動かない。ただ存在しているだけだ。それなのに戦場の主導権は既に奪われていた。レオンは拳を握り締める。ノアは言葉を失う。イザベラは計器から目を離せない。そしてカイだけが、その姿を見つめ続けていた。夢の中で何度も見た。人類を滅ぼした災厄。終わりの始まり。夕陽は地平線の向こうへ沈み、赤かった空は群青へ変わり始めている。昼と夜の境界。光と闇の境界。その曖昧な空の下で、三機の新型ヴォイドは静かに浮かんでいた。まるで人類という種そのものへ、最初の問いを投げかけるかのように。

――そして、その問いに答える時間は、もう残されていなかった。

挿絵(By みてみん)

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