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薬師一家の落ちこぼれ  作者: 香田紗季


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5 深まる信頼

読みに来てくださってありがとうございます。

短くてごめんなさい。熱が少し下がり始めましたが、まだ下がり切らないうえ、咳もひどくて頭痛も取れず……寝たまま、書ける時だけ書いています。ポメラ買っておいてよかった(泣)

よろしくお願いいたします。

 オパールが城に通うようになって一ヶ月が過ぎた。


 辺境伯夫人のマナー教室は厳しかったが、「美しい所作はどのような相手に対しても敬意を持っていることを伝える手段にもなるのよ」と教えられてから、オパールはより一層身を入れて学ぶようになった。


 魔術師カンババの授業も同じだ。最近になってようやく自分だけで自分の魔力を外に出せるようになり、何ができるのか調べられる段階にまできた。


「そういえば、ジャスパー様の魔力って青いんですよね? 青い魔力って、どんなものんんですか?」

「うーん、極めて抽象的な質問だねえ」


 カンババに質問のレベルが低いと暗に指摘され、オパールはもう一度考え直して言った。「青い魔力は、どのような用途に適性があるのでしょうか?」


「用途ね。うん、答える方も今のような質問の方が答えやすいよね」


 満足げにうなずいてから、カンババはジャスパーに説明してごらんと言った。


「オパールは、青いものっていうと何を連想する?」

「青いもの……空とか、水とか?」

「うん。青い魔力は、水との親和性が高いと言われているんだ。だから水を使った魔法に適性がある」

「水を使った魔法ですか?」

「そう。大気中から水分を集めてまとまった水を作り出したり、川や海や湖の水を自在に動かしたり変形させたりすることができるよ。魔力が多く且つコントロールがうまくできるようになれば、特定の地域に雨を降らせることだって可能だ」

「じゃあ、あの青い蝶は?」

「あれは魔法を使って水から作ったものなんだ。オパールを探す時、犬に追わせようって言う案もあったんだ。でも、所長がオパールは大型犬が苦手だって言うからどうしようかって話になってね。そこで、魔力で作った蝶にオパールの持ち物の匂いを覚えさせて、オパールの後を追わせたんだ」

「魔力で作った物に、匂いを覚えさせることなんてできるんですね」

「それはね、おいらが教えたからだよ」


 自慢げにカンババが口を挟んできた。


「すでに存在する物に、魔法を入れ込むこともできる。付与って言うんだ。付与された者さえあれば、魔力がなくてもその魔法を使うことができる。魔法を持ち運んで使えるってことさ。

 隣国では実際に武器に応用され始めていてね。矢羽根に風の魔法を付与して威力やスピードを増したのは実用化されていたな」

「武器に魔法を?」

「うん。それが嫌で、僕はこっちに逃げてきたんだよ」

「先生は、何色の魔力なんですか?」

「おいらはねぇ……」


 カンババは掌を上に向けると、小さな炎を出現させた。


「火、ですか」

「うん。火って便利だし、なければ困るものなんだけどさ。これを魔法兵器にしろって命令されたんだよね。こんなものを兵器にしたら、一度で何百人もの人が死ぬような代物ができてしまう。僕が作らなくても他の火魔法の魔術師が作るかもしれないけれど、僕は人殺しの片棒を担ぎたくなかったんだ」


 小さな炎が不安定に揺れている。カンババの精神状態が影響しているのだろう。


「足止めに使って味方を逃がすためとかさ、人助けになる使い方をしたいんだよね」

「だから、僕が生活の役に立つ魔法や後方支援に使える魔法を使えるようになりたいって言った時、すぐに了承してくれたんですね」

「そゆこと!」


 きっとオパールたちには想像もつかないような深い悲しみが、カンババの過去にはあるのだろう。


「それにさ、スヴァルトルの辺境伯閣下は、人を見る時に『敵に回したくない人か否か』を基準にしているでしょ? おいらを雇ってくれたってことはさ、おいらを敵に回したくない、味方にしておきたいって判断してくれたってことじゃん。それって、認められたって感じがして、うれしかったんだよね。だから、この人のためなら何でも頑張りたいって、そう思えたって言うのもあるよ」

「父上の恩義に報いるために、僕に魔法を教えてくれているってことですか?」

「そういう理由もあるってこと。あ、オパールの場合は、オパールの魔法そのものに興味があるっていう理由もあるけどねっ!」

「だからそれは!」 


 王都の人々は、オパールを見る時、話題にする時、いつも冷たい視線だった。オパールのことを褒める者は家族だけだった。


 スヴァルトル辺境伯領に来て、毎日楽しく、役立つことを教えてもらえて、こんなに充実した日々を過ごせるのがうれしいし、この環境を用意してくれた辺境伯家には恩しかない。


「私も、カンババ先生と同じ気持ちです。辺境伯家の皆様に助けていただいた以上、ご恩返しをしたいと思っています」

「いい心がけだね!」


 カンババがオパールの頭をなでると、オパールは一瞬目を丸くし、次いで花が咲いたように笑った。


 カンババもジャスパーも、そのかわいらしい笑顔に一瞬見とれ、次いで、こんな笑顔を封印させた王都の人間を許さない、オパールの力をいつか見せつけてやる、と思った。互いの目を見て同じことを考えていることに気づいた二人は、悪巧みをしている時の笑顔を浮かべてうなずき合った。


 オパールには二人の心は分からない。ただ、二人は絶対的な味方なのだということだけは感じ取ったのだった。


読んでくださってありがとうございました。

体調が戻るまでは、2000字程度の投稿が続くかもしれませんが、それでもできる限り毎日一度は更新したいと思います。

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