43 父の狂気
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ジェットの森に行ったはずのオオタカは、なかなか帰ってこない。オパールはオブシディアンが今にも郊外にいるジャスパーたちに襲い掛かるのではないかという不安で胃を痛めながら、窓の外を見続けていた。
あの日以来、オンファスが姿を見せることはなかった。誰の姿になっていたとしても、あの指輪があるかどうかで確認できる。そうオンファスは教えてくれた。だが、この部屋にやってくる誰の手にも、あの指輪ははめられていなかった。
オンファスが来ないことで、薬を作ることもできなかった。オブシディアンは毎日やって来て、無理やりオパールの魔力を奪っていく。極限まで奪われるためにオパールはオブシディアンが出ていく時には立っていることも、考えることもできなくなる。
その日、オパールは魔力を奪われる前に、せめて薬だけでも作りたいとオブシディアンに言った。だが、お前の薬など不要だと鼻で笑われた。
「それなら、せめて、お父さんに合わせてもらえませんか?」
オパールの言葉に、オブシディアンは少しだけ考えて「よかろう」と言った。
「あの方が明日にはここに到着なさる。これだけ魔力を奪って奥底に眠るはずの場力を引き出せるようにしてやっても『紫のイリス』の力が目覚めないなら、違う方法を取るしかないだろう」
オパールは魔力を奪われなかった。その代わり、オブシディアンが呼んだ魔術師三人に付き添われて、父親がいる研究棟に入った。
「お父さん……」
薬師リューコ・ゴシェナイトは、目を血走らせて何かに見入っていた。
「お父さん?」
ひひひ、という気味の悪い笑い声がオパールの耳に入った。
「なんていうタイミング! 素晴らしい!」
父親はオパールの腕をつかむと、椅子に座らせた。玉座のように大きな椅子に座った瞬間、オパールは体を動かせなくなった。
「お、とう、さ……」
「これで魂を抜く」
父親の口から飛び出した言葉を、オパールはただ聞き取ることしかできない。
「この体の半分は、マリアの情報でできている。つまり、半分はマリアだ。体と魂の相性は、情報量の過多が影響すると実験結果から分かってきている。つまり、親か子が最もマリアの魂と相性がいい。定着しやすい。お前の魂を抜いてマリアの魂を定着させれば、またマリアと一緒に暮らせる」
父の顔が悪魔に見えた。
「マリアの魂は、ここに閉じ込めてあるんだ」
ガラスケースの中に、浮かぶ光の玉のようなものが見える。まさか本当に、母の魂を捕らえていたとでもいうのだろうか。
「ゴシェナイト。お前は死者の魂も召喚できるのか?」
「魂が一定以上の距離から離れないように、薬に魔法を仕込んでおいたからな」
魔術師の問いかけに、父は得意げな顔をしてそう答えた。
「稀に見るマッドサイエンティストだな」
「執着が過ぎる。さすがの自分でも、あれは嫌だな」
魔術師たちでも引くレベルなのかとオパールは動かない体をなんとか動かそうとしながら考えた。
「では、入れかえようか」
父が椅子の取り付けられたスイッチを押した。もうだめだと思った時、助手をしていた男が動いた。その手には、見慣れた指輪が光っていた。
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次回は月曜日です。
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