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薬師一家の落ちこぼれ  作者: 香田紗季


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20 虹蛇の夢

読みに来てくださってありがとうございます。

よろしくお願いいたします。

 夢の中で、オパールは空に漂っていた。森の奥地の泉の傍で、同じような姿の娘たちが巨大な虹蛇の周りではしゃいでいる。姉妹たちは七人。虹蛇はそれを見て目を細めている。


「お父様」


 オパールが空から見ている前で、一人が虹蛇に声をかけた。


(お父様?)


 蛇が父親なんて、と思った次の瞬間、オパールは固まった。


(私に瓜二つだわ)


 オパールそっくりの娘は虹蛇に抱き着いた。


「なんだい、イリス。姉様たちに何か言われたのかい?」

「そうじゃないわ。お父様の背中に乗りたいの!」


 そう言ってイリスは虹蛇の背によじ登った。


「やっぱり、お父様の背中にいると安心ね」

「イリス?」

「私、ここから出ていきたくないわ」

「それはだめだよ」


 虹蛇が静かに言った。


「お前たちはこの世界を維持するために必要不可欠な存在なのだから」

「でも……」

「わたしは最初で最後の虹蛇だ。わたしはもうじき寿命が尽きる。寿命が尽きれば、この体から七つの龍が生まれるだろう。そして、お前たちと番って子どもたちにわたしが持っていた力を受け継がせることになる。赤龍は火の力を、黄龍は大地の力を、緑龍は風の力を、青龍は水の力を、黒龍は闇の力を、白龍は光の力を、それぞれの子孫に授けるだろう」

「お父様、紫は?」

「紫は……」







 虹蛇とイリスが話している途中で目が覚めた。オパールはまだ日が昇る前の室内で上半身だけ起こすと、頭を抱えた。


 虹蛇は世界を創造した神だ。雨を降らせる豊穣の神でもあり、死と再生と繰り返すとされている。


 だが、その虹蛇は「もうじき死ぬ」とイリスに言っていた。古い虹蛇の体から六体の龍が生まれ、それがこの世界に魔力を持つものが生まれた始まりだと、オパールは何度も聞かされたものだ。古い体は死んだが、新しい体に生まれ変わって虹蛇から龍が生まれたという神話だから、龍が生まれる前のことになるだろう。


 おおむね、オパールが知っている創世神話と一致している。だが、虹蛇の色の一つである「紫」については創世神話で語られないにもかかわらず、<オパール>と虹蛇は紫の話をしようとしていた。


 紫にどのような意味があるのだろう。

 紫とは何の力なのか。

 そして、「イリス」という人物と自分の関係は?


 オパールは朝になったらジャスパーかカンババに聞いてみるしかないと思ってもう一度眠ろうとしたが、その後は目が冴えて全く眠れなかった。


 そのせいで目の下に隈ができていたのだろう、朝食時ジャスパーに朝の挨拶をすると、怪訝な顔をされた。


「悪夢でも見た?」

「夢であることには間違いないのだけれど……」


 スープをスプーンに掬ったまま口に運ぶこともせず、ぼーっとしているオパールがよほど心配だったのだろう、ジェットの森に出発するまでの間だけでもしっかり休むようにと言われた。


 部屋に戻って夢の内容を忘れないように書きつけていると、ジャスパーが来た。そして軽く咎めるように言った。


「寝ていなかったんだ」

「ええ。メモするつもりはなかったのだけれど、寝たら全部忘れてしまいそうな気がして」

「夢の内容?」


 オパールは返事の代わりにメモをジャスパーに見せた。


「創世神話?」

「ええ。でも、創世神話と少し違うの。虹蛇の娘も私の記憶では六人だったはずなのに、七人いた。そして七人目の『イリス』は、私にそっくりだった」


 ジャスパーはメモを何度も読み込んでから、メモをオパールに返した。


「ジェットの森に行く前に間、カンババ先生にも聞いてみようか。国によって、創世神話の解釈が違ったり、欠落していたりすることもあるんだ」


 オパールはうなずいた。


★★


「え? 虹蛇の七人目の娘? 聞いたことないなあ」


 馬車の中でカンババは記憶を手繰りながらそう言った。


「紫の魔力については?」

「魔力についてはどこの国でも火、水、風、地、光、闇の六分類だからねぇ。紫、う~ん、どうだろう? バリシアでは紫っていうのは魔術じゃなくて、医療関係者が身に着ける色なんだよねぇ」

「医療関係者ですか?」

「うん。医師、看護師、薬師、心理士とかかなぁ」

「心理士?」

「メンタルに問題を抱えている人のサポートをする人だよ」

「もしかしたら、バリシアにはメンタル専門の医師もいるのかしら?」

「いるよ~。そのあたりは、ブロシャンの方が総合医療って感じだよね」

「「総合医療?」」

「子どもも大人も、怪我も病気も、ぜ~んぶ一人の医師が診察して治療もするだろう? バリシアだと細かく専門があってさ、病気っていって呼吸器系とか消化器系とか、細かく分かれているんだよ」

「〇〇系って判断できればいいが、そこにたどり着くまでに誤診もありそうだな」

「同じ症状でも原因が違うと対処法も違うからねぇ」

「それにしても、紫は医療系の色とは」


 ジャスパーのつぶやきに、ジャスパーの方を向いた、ジャスパーの顔の向こう側……馬車の窓のずっと向こうに、紫色の花が見えた。


 紫色の花……


 オパールの目に飛び込んできたのは、トリカブトの花だった。


「紫色の植物って、薬も毒もあるのね」

「オパール?」

「まだ、つかめない。でも点と点が近づいている感じがするの」

「白蛇たちが教えてくれるだろうか」

「できれば自分の力でたどり着きたいわ」


 母の日記は、何かを暗示しているようにも読めるが、そうでないとも読める内容で未だに解読できたと思えない。

 父の行方は杳として知れない。

 そして、オパールの中にある解毒の力と「竜の涙」の関係。

 もちろん、虹蛇とイリスの夢も。


 まだ、分からない。分からないことが多すぎる。それでも一つひとつ積み上げて、解明していくしかない。解明した先に、きっと、オパールがどうしてこんな不思議な力を持って生まれたのか、その意味が隠されているはずだから。


読んでくださってありがとうございました。

次回、白蛇さんたちと再会!

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