第313話《包囲》
中央区画へ、魔物が追い込まれていく。
バルゴの戦斧が道を切り開き、依子の拳が黒い殻を砕き、銀翼の斬撃が群れを裂き、雷神の重撃が地面ごと抉る。
ザヴェルが前を焼き払い、サバリネの腐食が後続を崩し、セバスチャンの指示で隊列が再編され、ミナが負傷者を即座に引き抜く。
各所で散っていた戦力が、ひとつの流れになる。
「中央へ押せ!」
誰かが叫ぶ。
逃げ場を潰し、包囲を狭め、穴の真下へ追いやる。
黒い魔物達が密集する。
削る。
砕く。
焼く。
斬る。
激しい戦闘が続く。
石畳が消える。
瓦礫が舞う。
瘴気が渦巻く。
だが確実に数は減っている。
押している。
誰もが、そう感じた瞬間。
空が歪んだ。
上空。
黒いクジラが、わずかに口元を歪める。
――笑った。
その直後。
中央区画の周囲で、地面が黒く染まる。
「……何だ?」
瘴気が渦を巻く。
逃げ場を塞ぐように、円を描く。
外側から、闇が迫る。
壁のように。
波のように。
「罠か……!!」
ザヴェルが歯を剥く。
闇が一斉に跳ね上がる。
黒い触手のようなものが伸び、魔物も、人も、区別なく絡め取ろうとする。
押し込んだはずの中央区画が、今度は“檻”になる。
銀翼が斬る。
雷神が砕く。
依子が叩き潰す。
バルゴが押し返す。
だが闇は減らない。
吸い込む。
力を奪う。
瘴気が濃くなる。
サバリネの腐食すら、飲み込もうとする。
セバスチャンの声が飛ぶ。
「皆さん!気をつけてください!!」
だが遅い。
闇が迫る。
包囲が完成する。
空の黒いクジラが、ゆっくりと身を傾ける。
中央区画の真上へ。
喰らうつもりだ。
その瞬間。
空が震えた。
黒い穴のさらに上。
夜空に、光が走る。
巨大な召喚陣。
白銀の線が幾重にも重なり、回転し、空間を固定する。
ザヴェルが目を見開く。
「……これは」
銀翼が息を呑む。
依子が空を見る。
闇の中で、ただ一つの光。
そして。
召喚陣の中心が、開いた。




