表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の手違いで死んだ社畜おっさん、まずは自由を願い、次に明日を願う!TS転生し美少女に!最強チート《願い》は一日一回だけど万能です!異世界スローライフで世界も人も未来も救ってみせます!  作者: 兎深みどり
第六章《迷宮都市ナユタ編》

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

315/321

第311話《俯瞰》

 城壁の上は、すでに安全圏ではなかった。


 空に開いた穴は広がり続け、白い結界の縁が黒く侵食されている。

 軋みが空気を震わせ、耳鳴りのような圧が肌を刺す。


 黒いクジラは、その外側で悠然と泳いでいた。

 まるで水面の向こうから、こちらを観察しているかのように。


 サバリネは腕を組み、静かに見上げている。

 隣でザヴェルが舌打ちした。


「……切りがねぇな」


 穴の縁から黒い塊が落ちる。

 落ちるたびに形を持ち、街へ散る。

 潰しても、潰しても、止まらない。


「元凶を始末しないと意味がありませんわね」


 サバリネの声は静かだ。


「だが上だ」


 ザヴェルが顎をしゃくる。


 黒いクジラは遥か上空。

 質量も、瘴気も、桁が違う。


「飛んで届く高さじゃねぇ」


「仮に届いても、あの表面を削れる保証もありませんわ」


 黒い膜が巨体を包んでいる。

 ただの打撃では届かない。

 ただの魔法では削れない。


 その時。


 黒いクジラが身を反らせた。


 空気が沈む。


 次の瞬間、巨体が落ちた。


 再度、体当たり。


 轟音。


 結界が悲鳴を上げる。


 亀裂が走る。

 穴がさらに広がる。

 白い破片が、空へ散る。


 黒い風が一気に吹き込む。


 そして。


 裂け目という裂け目から、黒い塊が投げ込まれる。


 屋根。

 路地。

 市場。

 広場。


 数を数える意味がない。


 迷宮都市ナユタは、魔物の巣窟へと変わりつつあった。


 下で悲鳴が上がる。


 兵が押される。


 冒険者が後退する。


 ザヴェルが低く笑う。


「ちっ……面白ぇじゃねぇか」


 指を鳴らす。


 周囲の空気が歪む。


「俺は行くぜ?」


 視線は地上。

 溢れる魔物の群れへ。


 サバリネが肩をすくめる。


「どうぞ。あなたは止まりませんものね」


 だが次の瞬間、彼女も一歩踏み出す。


「やれやれ。放っておくと街が消えますわ」


 二人は城壁から身を躍らせた。


 落下。


 重力が風を裂く。


 最初に地面へ叩きつけられたのは、ザヴェルの拳だった。


 衝撃が放射状に広がり、黒い魔物がまとめて吹き飛ぶ。


 着地と同時に、蹴り。


 熊型が真横へ飛ぶ。


 サバリネは音もなく降り立つ。


 足元から、黒い魔物の身体が腐り落ちる。

 触れてもいない。

 ただ“存在を許さない”かのように。


「数だけは立派ですこと」


 彼女が微笑む。


 地上の空気が変わる。


 魔物が一瞬、足を止めた。


 だが空では、黒いクジラが再び身を揺らしている。


 まだ終わらせる気はない。


 迷宮都市ナユタは、削られ続けている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ