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神様の手違いで死んだ社畜おっさん、まずは自由を願い、次に明日を願う!TS転生し美少女に!最強チート《願い》は一日一回だけど万能です!異世界スローライフで世界も人も未来も救ってみせます!  作者: 兎深みどり
第六章《迷宮都市ナユタ編》

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第309話《侵入》

 空に開いた穴の縁から、黒い塊が溢れ出した。


 落下したそれは地面に触れる前に形を持つ。

 フォレストベアー。

 フォレストウルフ。

 黒く染まったスケルトン。

 腐臭を放つグール。

 そして翼を広げたレッサードラゴン。


 魔の森の魔物。

 だが森で見るそれとは違う。

 重く、濁り、眼に光がない。


 黒いクジラが喰らってきた存在を模した強化体。


 中央通りに、最初の衝突が起きた。


 フォレストベアー強化体が突進し、盾列が半歩沈む。

 その前に立っているのはバルゴだ。

 戦斧を振り上げ、真正面から叩きつける。


 衝撃が石畳を割る。


 だが熊型は倒れない。

 異様に硬い。


「数が多すぎる!」


 横からウルフが回り込む。

 後方ではグールが這う。


 線が崩れかけた、その瞬間。


 石畳が爆ぜた。


 熊型の頭部が、横から吹き飛ぶ。


 立っていたのは日村依子だった。


 全身の筋肉が異様に膨れ上がり、腕は丸太のように太い。

 衣服が軋み、呼吸が荒い。


「……また、これか」


 低く吐き捨てる。


 ユニークスキル《パワフル》。


 全身強化。

 純粋な物理の暴力。


 依子はこの姿が嫌いだった。

 醜いと思っている。

 勇者候補だった頃の面影はない。


 だが。


 バルゴが横目で見る。


「悪くない」


 短い一言。


 依子が睨む。


「うるさい」


 だがその直後、二人は同時に踏み込んだ。


 バルゴが正面から受け、

 依子が横から粉砕する。


 戦斧が熊型の胴を裂き、

 依子の拳がスケルトンを砕く。

 ウルフが飛ぶ。

 依子が掴み、地面へ叩きつける。


 黒い瘴気が散る。


 後衛が持ち直す。

 線が再び締まる。


「上!」


 レッサードラゴンが滑空する。


 依子が跳ぶ。


 通常の人間では届かない高さ。

 だが《パワフル》の跳躍は違う。


 拳が顎を打ち抜く。


 空中でドラゴンが反転し、石畳へ叩き落とされる。


 着地。


 地面が割れる。


 依子は息を荒げながら、空を睨む。


 黒いクジラ。


 あれが、根。


 あれが、源。


 仲間を奪った負の集合体の延長。


「今度は逃げない」


 低く呟く。


 穴の奥で、さらに大きな影が蠢いた。


 まだ吐き出す。


 まだ終わらない。


 迷宮都市ナユタの戦いは、これからが本番だった。

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