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神様の手違いで死んだ社畜おっさん、まずは自由を願い、次に明日を願う!TS転生し美少女に!最強チート《願い》は一日一回だけど万能です!異世界スローライフで世界も人も未来も救ってみせます!  作者: 兎深みどり
第六章《迷宮都市ナユタ編》

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第308話《崩兆》

 黒いクジラが、空を裂いた。


 結界へ直撃。


 衝撃が、街を叩きつける。


 石畳が波打ち、

 窓ガラスが割れ、

 屋根瓦が崩れ落ちる。


「うわああああ!!」


 悲鳴が四方から上がる。


 子どもが泣き、大人が叫び、商人が荷を放り出して逃げる。


 結界が白く歪む。


 ぴし。


 細いヒビ。


 今度は誰の目にも見えた。


「街の結界が……白竜様の結界が、割れてる……!」


「嘘だろ!?」


 黒いクジラが旋回する。


 再び、口元が光る。


「来るぞ!!」


 暗黒のレーザー。


 白光と激突。


 押し込まれる。


 結界が沈む。


 ヒビが広がる。


 蜘蛛の巣のように、空へ亀裂が走る。


 街全体が揺れる。



 屋敷の扉が開く。


「全区画に通達!建物内退避!」


 セバスチャンの声が廊下に響く。


 伝令が駆ける。


「南通り、瓦礫崩落!」


「東区画、負傷者多数!」


「医療班を回せ!」


 ミナが階段を飛び降りる。


「担架を持ってきて!そっちは子ども優先です!」


 人波が押し合う。


 転ぶ者。

 踏まれそうになる者。


「押すな!!」


 怒号が飛ぶ。



 再び衝突。


 体当たり。


 轟音。


 今度は城壁の一部が崩れた。


 石が落ちる。


 粉塵が舞う。


「城壁が!」


 兵が吹き飛ばされる。


 サバリネが目を細める。


「……しつこいですわね」


 ザヴェルが歯ぎしりする。


「くっ!!」


 だが。


 結界が軋む。


 ぴき。


 大きなヒビ。


 空の半球に、明確な裂け目が走る。



 街の中央広場。


 人々が空を見上げていた。


 祈る者。

 泣き崩れる者。

 動けなくなる者。


「辺境伯様は……?」


「戻ってくるんだろ!?」


「結界があるんじゃないのか!!」


 誰も答えない。



 黒いクジラが高く浮上する。


 巨大な影が、太陽を隠す。


 そして。


 全身から黒い光が噴き出した。


 今までの比ではない。


 暗黒が収束する。


 空間が震える。


「総員退避!!」


 騎士団長の叫び。


 直後。


 極太の暗黒レーザーが、結界へ叩きつけられた。


 光と闇がぶつかる。


 空が割れるような音。


 ヒビが一斉に走る。


 一本ではない。


 無数。


 白い膜が砕け始める。


 ばき。


 ばきばき。


 破断音。


 人々が膝をつく。


「やめろ……」


「やめてくれ……」


 祈りは届かない。


 そして。


 ――ぱきん。


 結界の一部が、明確に砕けた。


 白い破片が、空へ散る。


 黒い風が、穴から流れ込む。


 冷たい。


 重い。


 負の気配。


 その日、迷宮都市ナユタは、初めて空に穴を開けられた。

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