第302話《再会》
冒険者ギルドのシェルターは、夜でも明るかった。
簡易ベッドが並び、治療班が忙しく動いている。
薬草の匂いと、かすかな消毒の香りが混ざっていた。
ナユは入口で足を止める。
「……ここなのです」
ヴァイスが短く言う。
「全員この中だ」
ナユは小さく頷き、静かに中へ入った。
職員が気づく。
「あ、討伐の……!」
「静かにお願いなのです」
ナユが小声で言うと、職員はすぐに頷いた。
「奥の区画です。もう意識も戻っています」
その一言で、ナユの胸が少し軽くなる。
足を早める。
仕切りを一つ越え、
二つ越え。
そして。
見えた。
ベッドの並ぶ区画。
その中央に。
「……」
リカリーネが座っていた。
包帯は巻かれているが、ちゃんと起きている。
周囲にはガイ、ロゥリィ、ウルト、そしてバルドランもいた。
全員、生きている。
ナユは一歩、踏み出した。
「……リカちゃん」
リカリーネが振り向く。
一瞬。
ぽかん、とした顔になり。
次の瞬間。
「ナユ!!」
立ち上がる。
止める間もなく、駆け寄ってきた。
そして。
ぎゅっと抱きつく。
「……っ」
ナユは少し目を丸くしたが、すぐに優しく抱き返した。
「無事でよかったのです」
リカリーネの肩が震えていた。
「……来てくれて……本当に……」
「当然なのです」
ナユはいつもの調子で答える。
「リカちゃん達を置いて帰るわけないのです」
少し間。
リカリーネは顔を上げる。
目が少し赤い。
「……強くなったね、ナユ」
ナユは首を傾げる。
「リカちゃんもなのです」
そう言って、周囲を見る。
ガイが苦笑する。
「正直、助かった。あれは俺達じゃ止められなかった」
ロゥリィも頷く。
「最後、ほんとに終わりだと思った……」
ウルトが小さく笑う。
「お前が来た瞬間、空気変わったぞ」
バルドランがゆっくり口を開く。
「……よく来てくれた、ナユ」
その声には、はっきり安堵が混ざっていた。
ナユは少し照れたように笑う。
「皆が無事ならそれでいいのです」
◆
少しして。
リカリーネがぽつりと言う。
「ねえナユ」
「なんなのです?」
「最後……炎、見た?」
ナユは頷く。
「見てはないのです。でも、凄い魔力量だったのです!」
リカリーネは少し照れたように笑う。
「……あれ、初めて出たの、炎醒っていう名前みたいなの……でも何でその名前が分かったのかは分からないのよね」
ナユは嬉しそうに頷いた。
「すごいのです!リカちゃん努力してたの知ってるのです!」
リカリーネが少し驚く。
「……覚えててくれたんだ」
「当然なのです」
ナユは真顔で言う。
「リカちゃんは昔から頑張り屋なのです」
その一言で、リカリーネは少し黙った。
それから小さく笑う。
「……追いつけた?」
ナユは少し考え。
そして首を横に振る。
「違うのです」
「え?」
「追いつくとかじゃないのです」
ナユはにこっと笑う。
「一緒に強くなるのです」
リカリーネの目が少し潤んだ。
「……うん」
静かに頷く。
◆
その時。
ハクが仕切りの外からひょこっと顔を出す。
クロもその後ろで尻尾を揺らしている。
「あ、ハク!クロ!」
ロゥリィが嬉しそうに手を振る。
ナユが笑う。
「入口守ってくれてたのです。お礼なのです」
ハクが静かに鳴き、
クロが満足そうに胸を張る。
ガイが苦笑する。
「今回、ほんと色んな奴に助けられたな」
ヴァイスが後ろから一言。
「次は自分で立て」
「うっ……」
ウルトが肩をすくめる。
空気が少しだけ軽くなった。
◆
ナユは改めて皆を見渡す。
包帯だらけ。
疲れている。
でも、生きている。
その事実が何より大きかった。
ナユは小さく息を吐く。
「……ほんとによかったのです」
その声は、今までで一番素直だった。
リカリーネが笑う。
「うん。ほんとにね」
シェルターの灯りの下。
ようやく。
本当の意味で、戦いは終わった。
「今日の記録:シェルターでリカちゃん達と再会しました。皆無事で本当に安心したのです。リカちゃんは炎醒を覚醒していてすごかったのです。これからまた一緒に頑張るのです。日報完了!」




