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神様の手違いで死んだ社畜おっさん、まずは自由を願い、次に明日を願う!TS転生し美少女に!最強チート《願い》は一日一回だけど万能です!異世界スローライフで世界も人も未来も救ってみせます!  作者: 兎深みどり
第六章《迷宮都市ナユタ編》

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第301話《余波》

 広場に、ようやく静けさが戻っていた。

 砕けた石畳。

 崩れた外壁。

 黒く焼けた地面。


 だが、あの圧倒的な気配はもう無い。


 ナユはゆっくりと息を吐いた。


「……本当に消えたのです」


『周辺一帯に高密度反応は存在しません』


 ミラが即座に補足する。


『地下残滓も収束傾向。危険度は急速に低下しています』


 ナユは小さく頷いた。


 その時。


 遠くから、足音が近づいてくる。


 冒険者達。

 ギルド職員。

 警備兵。


 最初は恐る恐る。

 だがやがて駆け寄ってくる。


「……終わったのか?」


「本当に消えたのか!?」


「さっきの光……何だったんだ……」


 口々に声が上がる。


 ナユは少しだけ困った顔をし、それから素直に答えた。


「終わったのです。もう大丈夫なのです」


 一瞬の沈黙。


 次の瞬間。


 広場の空気が一気に緩んだ。


「……助かった……」


「生きてる……」


「街が……残ってる……」


 誰かがその場に座り込む。

 別の誰かは空を見上げて泣いていた。


 その様子を見て、ナユは胸の奥が少し温かくなるのを感じた。


 そこへ。


 ギルドの責任者らしき男が走ってくる。


「君が……!」


 息を切らしながら立ち止まる。


「報告は受けている。地下からの救助も、今の討伐も……全部、君達が?」


 ナユは首を少し傾げる。


「皆で頑張ったのです」


 ヴァイスが横で小さく鼻を鳴らす。


「こいつがほとんどやった」


「ヴァイスも一緒だったのです」


 ナユはきっぱり言い直す。


 責任者は一瞬言葉を失い、それから深く頭を下げた。


「……街を救ってくれて、本当にありがとう」


 周囲の冒険者達も次々と頭を下げる。


 ナユは慌てて手を振った。


「そんな大げさじゃないのです。困ってたから助けただけなのです」


 その時。


 別の職員が駆け寄ってくる。


「報告します!シェルターに搬送された負傷者、全員命に別状なし!」


 ナユの目がぱっと明るくなる。


「本当なのです?」


「はい!重傷者も安定しています!」


 ナユは胸に手を当て、小さく息を吐いた。


「……よかったのです」


 ほんの少しだけ、肩の力が抜けた。



 夜は深まり、広場には応急の灯りが並んでいた。

 修復班が動き始め、瓦礫の撤去が進んでいる。


 ナユは少し離れた場所で空を見ていた。


 さっきまで星が見えた場所。

 今は普通の夜空に戻っている。


「……終わったのです」


 改めて呟く。


 ヴァイスが隣に立つ。


「今回のは雛だったんだろう」


「そうなのです」


『負の集合体は世界規模で発生する可能性があります』


 ミラの声は静かだ。


『今回の個体は初期段階でしたが、成長すれば国家規模の災害になり得ます』


 ナユは少しだけ黙る。


「……でも」


 小さく笑う。


「その時も、何とかするのです」


 ヴァイスが短く答える。


「だろうな」


 風が吹く。


 遠くから、街の人々の声が聞こえる。

 泣き声も、笑い声も混ざっていた。


 ナユはそれを聞きながら、そっと目を閉じた。


 生きている街の音だった。



 やがて。


 ギルド職員が近づいてくる。


「宿の手配が出来ています。今日は休んでください」


 ナユは少し考えてから頷いた。


「そうするのです」


 ヴァイスも肩をすくめる。


「休める時に休め」


「了解なのです」


 ナユは最後に広場を見渡した。


 壊れている。

 でも、残っている。


 守れた。


 その実感が、ようやく胸に落ちてきた。


 ナユは小さく拳を握る。


「……また明日から頑張るのです」


 そう言って歩き出した。


 街の灯りの中へ。


「今日の記録:街中央の本体を討伐し、負の集合体は完全に消滅しました。負傷していた皆も無事で、街も守れました。雛でも危険だったので、今後も警戒が必要なのです。でも今日は少し休むのです。日報完了!」

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