第24話《食卓》
朝の食卓。
焼きたてのパン、搾りたてのミルク、塩漬けの肉。
いつもの献立だが、ナユの視線はじっと皿を見つめていた。
《パン:糖質多め、栄養バランス△》
《ミルク:カルシウム◎ 鉄分不足》
《肉:タンパク質豊富、塩分過多》
《鑑定》が示す数値が、頭の中に次々と浮かぶ。
――やっぱりだ。
美味しいけど、栄養が偏ってる。
これじゃ長生き出来ないし、美少女度も下がる。
ナユは《メモ》に「改善案」を書き込み始めた。
・パンだけでは糖質過多 → 野草スープを追加
・肉の塩分過多 → 水煮して塩抜き
・鉄分不足 → 黒豆や野草の根を煮込む
フォルダ名は「食卓改善計画」。
サラリーマン時代の資料作りそのままに、赤ん坊の頭の中で新たな企画書が作られていく。
その日の夕方。
母がナユを抱きながら、村の女性達と料理をしていた。
母は「この子が興味を示した野草を入れてみようかしら」と言い、鍋にひとつまみ加えた。
出来上がったスープは見た目こそ変わらない。
だが父が口にすると、目を丸くした。
「……なんだ、体が軽い……?」
普段から疲れ気味だった父の顔に血色が戻っていた。
その変化に周囲も驚き、母は不思議そうにナユを見つめる。
「この子……もしかして本当に神様の加護を持ってるんじゃ……」
村人達はざわめきながらも、どこか期待を込めた目でナユを見つめた。
ナユは心の中でガッツポーズ。
――よし、計画通り。
俺の美少女化計画が、村の健康改善にも繋がる!
赤ん坊の口からは、ただ「あー」と笑みが漏れるだけ。
だがその小さな声は、人々の胸に妙な安心を与えていた。
「今日の記録:鑑定で食材を分析。父の体調改善に成功。村の食卓改善計画を開始……日報完了。」




