第23話《鑑定》
村の朝は、いつもと変わらぬ風景だった。
母が焼いたパンの香り、父が搾ってきたばかりのミルク。
それを囲んで、皆が「今日も無事に過ごせますように」と祈る。
けれど、ナユの心はふと引っかかっていた。
――パン! ミルク! 肉! 野菜!
この世界の食事は、ただ「食えばいい」ってだけで大雑把すぎる……。
確かに、赤ん坊としては十分だろう。
だが中身は社畜おっさん、しかもラノベ脳。
しかも神様に「美少女になる」と言われている以上、健康管理は必須だ。
「俺は美少女になるのが確定している……なら、その“質”を上げる努力が必要だ!」
小さな心臓がどくんと高鳴る。
その夜、ナユは静かに願った。
「《鑑定》のスキルをください」
瞬間、光がナユを包んだ。
翌朝。
母がパンをちぎって口に運んでくれる。
そのパンを見つめると――
《パン:小麦粉を焼いたもの。糖質多め。栄養バランス△》
文字が浮かび上がる。
思わずナユの目が輝いた。
次にミルクを口に含む。
《ヤギ乳:カルシウム◎鉄分不足》
「き、きたあああ!!!」
心の中で思わずガッツポーズ。
肉を見れば「タンパク質豊富だが塩分過多」。
野菜を見れば「ビタミン少なめ、美容効果中」。
――これは使える!
ナユは即座に《メモ》に新しいフォルダを作成した。
フォルダ名は「美少女化計画」。
食材ごとに「美容◎」「健康△」「注意事項」などを書き込む。
「よし……これで、より盤石な美少女ルートに突入だ」
赤ん坊の姿で満足げにうなずくナユを、母は「今日は機嫌がいいのね」と微笑んで見ていた。
「今日の記録:《鑑定》獲得。食事を数値化して把握。美少女になる為の食生活改善計画を開始……日報完了。」




