第25話《使者》
昼下がりの村に、馬蹄の音が近づいてきた。
乾いた土を踏みしめる音は、村人達にとって滅多に聞かない響きだった。
「馬だ……! こんな辺境に?」
柵の向こうから現れたのは、立派な紋章旗を掲げた騎士と従者達。
銀の鎧が陽光を反射し、ただの旅人でない事を一目で示していた。
村長が慌てて駆け寄り、腰を深く折る。
父も母も驚いて口を覆い、ナユを抱きしめて列の隅に下がった。
騎士は馬上から鋭い視線を向け、低く告げる。
「我らは王都よりの使者。“奇跡を起こす子”が辺境にいると聞き、確かめに参った」
村人達は息を呑んだ。
夜に現れた魔物を退けた冒険者の戦い、その後に光を放って老魔法使いを救った赤子の噂。
それが遠く王都にまで伝わったのだ。
ナユは母の腕の中で、ぱちぱちと目を瞬かせる。
――ついに来た!
これ完全にストーリー進行イベントだろ!?
心の中でテンションが爆上がりするが、赤ん坊なので声に出るのは「あー」だけだった。
騎士は村長を見据え、更に言葉を重ねた。
「我が主君は、その子を直々にお呼びになりたいと仰せだ。陛下はその子と両親、そして、村長をご所望だ!すぐに準備を整えよ明日には出発する!」
その場の空気が一気に張り詰めた。
村人達は「神の加護を持つ子が選ばれた」と畏れと期待を込めた視線をナユへと向ける。
ナユは母にしがみつきながら、心の奥でガッツポーズを取った。
――王都イベント、発動……!
「今日の記録:王国から使者来訪。俺はついに、大きな流れに巻き込まれるらしい……テンション爆上げだ!……日報完了。」




