第18話《勝利》
朝日が差し込む頃、村はまだ昨夜の戦いの余韻に包まれていた。
黒牙狼の死骸は既に片づけられ、広場には血の跡だけが残っている。
それを眺める人々の顔には疲労と安堵、そして言葉に出来ぬ驚きが浮かんでいた。
「……村は救われたんだな」
「本当に……助かった……」
肩を寄せ合い、互いの無事を確かめ合う声が広場に満ちる。
あの夜、確かに死を覚悟した。
だが今ここに皆が立っている。
その事実が何よりの勝利だった。
冒険者達もまた、準備を整えていた。
剣士は折れかけた剣を布で包み、弓手は矢筒の中を確かめ、盾役は傷だらけの盾を背負う。
彼らは任務を終え、一度街に戻って報告しなければならない。
「ここまで来れたのは……あんた達の村の支えがあったからだ」
リーダー格の剣士が、深く頭を下げた。
だが村人達は逆に首を振り、口々に言った。
「救ってくれたのは冒険者様達です」
「どうか、これからも御無事で」
その中で、老魔法使いバルドランがゆっくりと歩み出る。
まだ体は重そうだが、その瞳には確かな光が戻っていた。
「……儂は、あの子に救われた。命を繋がれた者として、この恩は忘れん……いつか、お主が力を借りたい時が来たら、儂の全ての力で助太刀するからの」
視線の先には、母の胸に抱かれたナユがいる。
赤子は何も知らぬようにあくびをして、小さな指を握りしめていた。
だがその姿は、村人達の目にはただの子供以上のものとして映っていた。
「神の御業か……」
「いや、あの子は……神子かもしれん」
囁きが広場に広がり、母は少し怯えながらも、誇らしげに我が子を抱きしめた。
やがて「極星の旅団」は出立の時を迎えた。
村人達が見送る中、冒険者達はそれぞれ手を振り、約束の言葉を残す。
「また必ず来る。――その時まで元気でな!」
旅団の背中が森の奥へ消えると、村には再び静けさが戻った。
「今日の記録:黒牙狼討伐、冒険者達帰還。村は救われた、冒険者まじでかっけぇ……日報完了」




