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神様の手違いで死んだ社畜おっさん、まずは自由を願い、次に明日を願う!TS転生し美少女に!最強チート《願い》は一日一回だけど万能です!異世界スローライフで世界も人も未来も救ってみせます!  作者: 兎深みどり
第一章《TS転生しちゃいました!》

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第17話《回復》

 黒牙狼は絶命した。

 大地に巨体を横たえ、赤い双眸がようやく光を失う。


 戦いは終わった。

 だが歓声は上がらない。

 仲間達の視線は、一人の男へと注がれていた。


「バルドラン!」


 老魔法使いが地に伏していた。

 胸に深い裂傷を負い、杖を握る手も震えている。

 血は止まらず、呼吸は浅く、今にもその灯火は尽きそうだった。


「……儂は……ここまでか……」


 弱々しい声が夜風に消える。

 剣士も弓手も顔を歪め、盾役が拳を握りしめた。


「ふざけるな! あんたがいなきゃ俺達は――!」


 だが、どうする事も出来なかった。

 応急処置では到底間に合わない。

 冒険者達の心に、敗北より重い“別れ”の影が忍び寄る。


 


 その時。

 村人達が駆けつけてきた。

 父が汗にまみれた顔で冒険者に駆け寄り、母はナユを抱きしめて走ってくる。


 幼いナユの瞳が、血に濡れたバルドランを映した。

 体は赤ん坊でも、心は叫んでいた。


 ――ダメだろ。皆を救ってくれた人だろ……!死ぬな!!


 


 ナユは母の腕から小さな手を伸ばした。

 言葉にならない声が漏れる。


 ナユの小さな手から柔らかな光が放たれる。

 光はバルドランの体を包んだ。


「な、なんだ……!?」


 傷口が塞がり、血が止まり、苦しかった呼吸が楽になっていく。

 魔法でも薬でもない、純粋な奇跡だった。


 


「き、傷が……治っていく……!」


「いったい何が……」


 剣士と弓手が呆然と声を漏らす。

 盾役は震える拳を下ろし、ただその光景を見守った。


 


 やがて光が消えると、バルドランはゆっくりと目を開けた。

 先程まで苦しみに歪んでいた顔に、安堵の笑みが浮かぶ。


「……生きている……?」


「バルドラン!」


 仲間達が歓喜の声をあげた。

 老魔法使いは弱々しくもはっきりと頷き、視線をナユへと向けた。


 抱かれた赤子の小さな手。

 その奥に宿る光を見て、彼は確かに理解した。


「……小さな命に……救われたのか。恩は、決して忘れんぞ……」


 


 広場に深い沈黙が訪れる。

 それは畏怖と感謝が入り混じった、神聖な静けさだった。


 


「今日の記録:黒牙狼討伐。バルドランが重傷を負ったが……願いで回復。初めて直接“人を救った”奇跡……日報完了」

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