第19話《記録》
ナユが生まれておよそ十九日経った。
言葉はまだ話せない。
けれど頭の中で考えは育っていた。
――大事な事を忘れてしまう。
願いの内容や結果を覚えておくのが難しい。
報連相の為にも、記録が要る。
サラリーマン時代の癖がむくむくと顔を出す。
メモがあれば段取りが良くなる。
失敗も減らせる。
これが一番コスパが良い。
――今日の《願い》は「メモ」に使おう。
忘れない為の仕組みを、今すぐ手に入れる。
心で強くそう願った瞬間、ナユから光が溢れ、心の奥に白いページがひらめいた。
【新スキル獲得:《メモ》】
頭の中にノートを作成。
見たい時に開ける。
書いた内容は自動で日付入り。
箇条書きも出来る。
フォルダ分けも出来る。
検索も簡単に出来る。
――よし。
まずは「家庭」フォルダを作る。
次に「村」。
それから「自分」。
赤子の体で「うー」と言いながら、心の中では会議を進める。
最初のページに要点だけ書く。
《家庭》
・両親の体調。栄養と休息を確保する事。
・保存食の在庫を点検する事。
《村》
・食料事情の整理。分配ルールを決める事。
・見張り番の交代表を作る事。
《自分》
・《願い》は一日に一回。使い忘れを防ぐ為、夕方に確認。
・将来、時計が手に入ったらアラーム化する。
・次に欲しいスキル案を随時メモする。
ページの端にふせんも付けられる。
色分けも出来る。
思ったより高機能で、思わず心の中でガッツポーズ。
――これなら抜け漏れゼロ。
大事な事を積み重ねられる。
スローライフの下地は、記録から作る。
もっと早くに気付けば良かったと後悔。
「今日の記録:《メモ》スキル獲得。忘れない仕組みを作成。願いはやっぱり一日に一回。よし……日報完了。」




