第15話《到来》
父が街へ向かった末に、ついに成果が現れた。
村の入口に四つの影が現れ、人々の息が止まる。
革鎧の剣士、背に弓を負う狩人、そして白髭の老魔法使い。
そして、先頭のリーダー格の大盾の男が一歩進み出て、声を張った。
「我々は冒険者ギルド所属、B級《極星の旅団》だ。依頼を受け、討伐に来た」
広場に安堵のざわめきが広がる。
父は汗と泥にまみれながら彼らを案内し、母は胸に手を当てて小さく震えた。
「無事で……良かった……」
「皆で資金を出し合ってくれたお陰だ。後は彼らに任せよう」
老魔法使いは杖で地を軽く叩き、周囲を見渡す。
「魔の気配が濃い。油断は禁物だ。だが手はある」
短い言葉に、旅団の面々は無言で頷いた。
剣士は刃を拭い、狩人は矢羽を整え、盾の男は壊れかけの柵を確かめる。
準備の一挙手一投足が無駄なく速い。
彼らは危機に慣れた者達の動きだった。
村長は被害の状況を地図代わりの板に描き、昨夜の足跡や家畜小屋の壊れた位置を示す。
老魔法使いは目を細め、結界の要を置く位置を指で示した。
「ここに焔よけの札、こちらに音の囮。獣はここを通る。誘い込んで叩く」
父は深く頭を下げる。
「どうか……我々を救ってください」
「やるべき事は一つだ。任せろ」
家の窓から覗くナユの瞳は、彼らの連携に釘付けだった。
体は赤ん坊でも、胸の奥は熱くなる。
――本物のプロだ……!
段取り、分担、連絡。
報連相が徹底されてる。
これが“外の世界の仕事”の流儀……!
剣、弓、魔法、盾。
役割が噛み合って一つの歯車みたいに回っていく。
それは恐怖に凍った村人達の心まで、少しずつ動かし始めていた。
やがて旅団は日没前の偵察に出る。
老魔法使いが残した簡易の護り札が風に鳴り、村は久しぶりに息をついた。
――いつか自分も、あの人達みたいになりたい。
小さな願いが、胸の奥で静かに灯る。
「今日の記録:極星の旅団到来。父の尽力が実を結び、B級が受注。俺は彼らの姿に憧れが芽生えた……日報完了」




