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第121話《発表》

 朝日が学園都市を照らす。

 鐘の音が鳴り響き、整列した新入生達の間に静寂が落ちた。


「――これより、各科ならびに総合成績の発表を行う」


 学園長の声が重く響く。

 生徒達は固唾を呑み、掲示板に目を凝らした。



【冒険科・成績発表】


1位 ナユ=ハルメリア 500点(満点)

2位 カイ 322点

3位 リド 307点

4位 サラ 301点

5位 トマ 289点



 静まり返った空気の中で、ミナが思わず叫んだ。


「ナユ様!一位ですっ!満点ですっ!!」


 周囲がざわつく。

 冒険科志望の少女が、満点で一位――それだけで十分すぎる衝撃だった。


「凄く嬉しいのです!!」


 ナユは胸を張ってニコニコ顔。

 その姿を見て、セバスチャンが僅かに微笑む。


「まことに見事でございます、ナユ様。……この結果、確かに“ハルメリア”の名に恥じぬもの」


「えへへ、ありがとうございますなのです!」



「続いて――総合成績の発表に移る!」


 学園長の声が再び響いた瞬間、場の空気が変わった。



【総合成績】


1位 ナユ=ハルメリア 500点(冒険科)

1位 マリエル=アーシェ 500点(同率)(魔法科)

3位 シオン=ベルティア 497点(錬金科)

4位 レイ=クロード 489点(騎士科)

5位 リゼ=アルバ 483点(戦術科)



 その瞬間、空気が爆ぜた。


「はぁ!?侯爵令嬢と冒険科の奴が!?」

「まさか同率!?そんな馬鹿な……!」


 視線が一斉に壇上へ向く。

 そこには、白銀の髪を揺らしながら立つ少女――マリエル=アーシェ。

 冷たく光る青の瞳が、真っ直ぐナユを射抜いた。


 マリエルがゆっくりと階段を降り、ナユの正面で立ち止まる。

 表情は笑っている。

 けれど、その笑顔は刃より冷たい。


「――冒険科のあなたが、私と並ぶ結果を取るなんて。笑わせないで。学園もずいぶん落ちたものね」


 ナユは首をかしげた。


「うーん?落ちたってどこがです?」


 周囲が凍りつく。

 誰もが息を止める。


 マリエルの口角がピクリと上がる。

 笑っているのに、瞳は一切笑っていない。


「そう……ずいぶん軽口を叩くのね。貴族社会では、“立場をわきまえない発言”を無礼と呼ぶのよ?」


 ナユはにっこりと笑った。


「なるほど!でも、ここは学園なのです!だから皆、同じ立場なのです!」


 ――バチィッ!


 マリエルの周囲で魔力が爆ぜた。

 石畳がきしみ、空気が震える。

 髪がふわりと浮かぶほどの圧力。


「……あなた、本当に私を怒らせたいのね?」


 ナユは目を瞬かせる。


(ふむ……怒ってるのです?でも、前世の上司の方がよっぽどタチ悪かったのです。あれに比べたら、むしろ子どもが拗ねてるみたいでかわいいのです)


「別に怒らせたいわけではないのです!ただ――二人で一位なら、どちらが“本物”の一位か決めるしかないのです!」


 観衆がどよめく。

 セバスチャンがため息をつき、ミナが青ざめる。


「ナユ様っ、もうやめてくださいぃぃ……っ!」


 マリエルの微笑みが、完全に消えた。


「いいわ。あなたが“そこまで言う”なら――入学式が終わったら、私があなたに“貴族の実力”を教えてあげるわ」


「受けて立つのです!」


 バチン!

 見えない衝撃波が二人の間で弾けた。

 風が逆巻き、周囲の生徒達が悲鳴を上げる。


「くっ……学園長!二人を止めてください!!」


 教師達が駆け寄る中、壇上から学園長の声が響いた。


「よい、止めるな。――これが“競い合う若者”の姿だ。どちらも見事な才覚と気骨。互いを研ぎ合い、高め合う事こそ、我が学園の理念である」


 その言葉に、空気が静まり返る。

 ナユとマリエルの視線が再び交差し、火花が散った。


 朝の光が二人を照らす。

 ――こうして、ナユの“学園生活”が幕を開けた。



「今日の記録:試験発表で同率一位! でもマリエルさん、めっちゃ怒ってたのです……。前世の上司の方がタチ悪かったから、むしろかわいく見えたのです。――日報完了!」


「あれ?でも貴族社会では、“立場をわきまえない発言”を無礼と呼ぶのなら、ナユ様に対して、侯爵様の令嬢様がそんな発言するのって良いんですかね?」


「確かに、侯爵令嬢とは、侯爵様の令嬢であり、現状令嬢殿が爵位を持つ立場にない……そして、仮授与とはいえ、男爵のナユ様、果たしてどちらが不敬になりうるのか……ただ、ナユ様がとても楽しそうにされてるで、気づかないふりをしましょう、良いですね?ミナ?」


「了解しました!」

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