第120話《解析》
2025/11/13 一部文章追加しました。
夜明け前の静寂。
宿の部屋に、かすかな光が揺らめいていた。
ナユはベッドの上で胡坐をかき、手の握ったり開いたりしている。
「……ミラ、このスキル、どうなってるのです?」
『解析を開始します。……ですが、内部構造の多くが“観測不能領域”です。』
「観測不能?」
『はい。いくつかの区画は現在のわたしや、あなた自身の思考では触れません。“ブラックボックス”化されています。』
ナユは顎に手を当て、うむむと唸った。
「……つまり、わたしやミラにも分からない部分があるって事なのですね」
『そうなります。現在アクセス可能なのは、統合した九つのスキル群のみ。それらは《ナユタシステム》を経由して発動可能です。』
「……という事は、実際に使ってみればいいのです!」
ナユは胸の前に手をかざした。
透明な“ウィンドウ”がふわりと開く。
◆
《ナユタシステム》 — ウィンドウ表示中
パーティー
【ナユ】(操作中)
【サポート】セバスチャン、ミナ(情報非表示)
ステータス詳細
タップするとより詳しく表示する。
ナユ=ハルメリア
HP:100% MP:100% SP:100%
現在視界左上に表示中。
力:B+ 防御:A 魔力:SSS
敏捷:A+ 幸運:???
補助効果:自動魔力回復(自然回復・毎分1%、リソナンスリング・毎分3%)
アイテムボックス
タップすると表示される。
エリクサー:1887本
ミナの作ったクッキー:1袋
アイテムボックス内効果:時間停止機能、居住地化可能。
記録
タップすると出会った魔物・人物・町・ダンジョン情報が全て保存済み。
例:ガルドナ教官:怒ると怖いけど優しい。元S級冒険者。
鑑定
タップしてから対象に視線を合わせると詳細情報を表示。
感知
タップする事で詳細変更可能。
現在ミニマップ視界左下表示中。
地形・生物・魔力反応・危険度・危険域をリアルタイム表示。
※3Dマップ切替可能。立体視ON。
演算
タップする事で、思考加速ON/OFF
スキル改造モード(使用には魔力消費)
蓄願
現在の願い:0/3
リセットまで:23時間48分
タップで使用選択(単体/二重/三重使用)
時計
現在時刻:AM0:12
次回リセットタイム:AM0:00
現在視界左上に時間表示。
タップで、アラーム・ストップウォッチ・カウントダウン機能搭載。
未来設計
思考または音声で起動。
「ナユ、呼びましたか?」(現在オンライン)
◆
「うわぁ……まるでゲームなのです!これはやばいのです!!」
ナユは目を輝かせ、指先で画面をタップした。
ピコンッと軽快な音が響く。
『……この世界の情報構造を、あなたが“扱いやすく見える形”に変換した結果です』
「ふむふむ。つまり、凄く便利になったという事なのですね!」
『……そういう事にしておきます。』
ミラの声が、どこかため息混じりに揺れた。
本人達は気付いていないが、ミラは演算で改造した事と、《ナユタシステム》に統合された事で、より人間に近い感情を持つ事になった。
《ナユタシステム》――その中枢には、まだ“更に未知の階層”がある。
ミラでさえ、到達出来ていない、存在すら認知出来てない領域。
ナユがその事を知るのはまだまだ、先の話。
「……すごいのです!これで、世界をもっと調べられるのです!ネットサーフィン機能とか付けられないかな?!」
その瞳は夜明けの光を映し、輝いていた。
「今日の記録:ナユタシステムの解析成功!でもまだ“触れられない部分”があるみたいなのです。なんだか……この世界の奥まで見える気がするのです。あと、ネットサーフィンは演算でも願いでも付けられませんでした……ショボンなのです……日報完了!」
◆
『——すみません、ナユ、システムに順応する為に数カ月の間、スリープモードに移行します』
「え!?大丈夫なの!?」
『問題ありません。私がいない間は、ご無理はなさらないでくださいね——』
その一言を最後に、声は聞こえなくなった。
「頑張るのですミラ!わたしも無理せず頑張るのです!」




