第12話《課題》
その日、村の空はどんよりと重かった。
数日前から降り続いた雨が大地を叩き、ついに川の堤が決壊しかけていた。
「こ、これは……!」
「畑が流されるぞ!」
村人達が必死に土嚢を積むが、濁流は容赦なく押し寄せてくる。
田畑も家も、このままでは一瞬で呑み込まれてしまうだろう。
父は泥まみれになりながら声を張り上げた。
「皆、下がれ!命を守るのが先だ!」
だが村人達は必死に踏ん張る。
家も畑も失えば、明日を生きられないからだ。
その頃、母の腕に抱かれたナユは、じっと川を見つめていた。
耳をつんざく濁流の音の中で、胸の奥がざわつく。
「……このままじゃ、みんなが死んじゃう」
ナユは小さな心で強く願った。
――水よ、収まれ。村を守れ。
瞬間、ナユから光が溢れ、その光はまばゆい光となり空を覆った。
溢れかけた濁流が嘘のように引き、川は静かに流れを戻していく。
「な、なんだこれは……!」
「水が……止まった……?」
村人達は信じられないとばかりに跪いた。
父と母は抱く我が子を見下ろし、ただ震えていた。
母は小さく囁いた。
「ナユ……あなたは一体……?」
赤子のナユは、ただ小さく笑った。
その笑みは、村人全てに奇跡を信じさせるのに十分だった。
「今日の記録:洪水を鎮めた。自然災害さえも願いで止められる……日報完了」




