第11話《運命》
王都、王城の謁見の間。
磨き抜かれた大理石の床は光を反射し、玉座の上には王と王妃が並んでいた。
「……布告は本当なのか」
王は手にした羊皮紙を見つめる。
そこには、辺境の村で“神の子”が誕生し、病を癒やし飢餓を退けたと記されていた。
老練な枢機卿が一歩前に進み出る。
「はい、陛下。司祭からの報せは確かでございます。赤子が示した奇跡は、まさしく神の御業にございます」
大広間がざわめいた。
王妃は眉をひそめたが、その瞳には光が宿っていた。
「……ならば確かめなければなりませんね。本当に神に選ばれし子なら、この国に新たな未来をもたらすでしょう」
その横で、まだ二歳の少女が父母の会話をじっと聞いていた。
アニシア・ユラ・アンダルシアン――アニス。
公爵家の長女にして、王都でも名高い才女の家系の娘だ。
「お父様……もしその子が本当に神様に選ばれた子なら……会ってみたいです」
たどたどしい声だったが、広間にいた者達はその気品に思わず息を呑んだ。
わずか二歳にしてすでに高貴さを纏っているのは、アンダルシアンの血筋ゆえだろう。
王はその言葉に静かに頷き、宰相へと命じた。
「よい。使者を辺境の村へ送れ。その子と両親、そして村長を王都に召し出せ。これは国の未来を占う大事な務めとなろう」
重臣達は頭を下げ、早馬の手配が始まった。
誰もがまだ知らない――その赤子とアニスが再び出会う時、国の命運をも揺るがす物語が始まる事を。




